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 味探検Notes 矢倉沢往還 八丁ヤマメ養殖センター

こだわり養殖ヤマメづくりに一生をかけた男

 淡水の魚の養殖というと、餌をたっぷりとやって、丸々と太らせてという余りいいイメージを持っていなかったのだが、ぼくが昔から関心をもって調べていた相模川のアユカケというカジカの仲間の話を調べていて知り合った、神奈川県水産総合研究所内水面試験場のS技官から「このかたは優れた養殖法を実践されています」と紹介されて、この淡水魚養殖場を訪ねて驚いてしまった。

 JR御殿場線山北駅まで迎えに車で来ていただき、国道246号を越えて、皆瀬川という丹沢山系の沢筋を15分ほど登っていったところに、八丁ヤマメ養殖センターはあった。渓流釣り好きだった石井誠一さんが、釣りあげた美しいパーマークの入ったヤマメを、山の中で飼えないかと思ったことがきっかけで、ヤマメの産卵、孵化、育種の養殖をはじめたのが昭和52年のこと。

 それいらい、天然ものに限りなく近づけるために、交配雑種化し、色も味も悪くなっていた養殖ヤマメの選別育種という、天然のいい部分だけを次の子孫に受け継がせていく方法で、地道な研究を続け、色も顔つきも味もよい八丁ヤマメに到達したという。この養殖場では、イワナ(ニッコウ系)、ニジマス、ブラウントラウト、アルビノマスのほかイトウ、オショロコマなどサケマスならなんでも養殖法を確立しようと挑戦し、チョウザメの養殖も行っている。

 事務所兼用となっているご自宅の居間には、山で木から落ちてしまった小鳥のヒナを何羽も奥さんの由美子さんが育て、狩猟も好きという石井さんが自ら剥製にした鹿やクマなどが所狭しと飾られている。鬚ぼうぼうのため、山でであったら仙人とでも間違われそうな風貌である。

 まずヤマメをご馳走しましょうといって、池に案内をされ、これがイワナ、ニジマス、こっちがチョウザメと説明を受ける。

 池から網で掬い上げた10数匹のヤマメは、パーマークもきれいで、顔つきも野生種どうようのサケの顔つきをしている。釣り人は、ヤマメを見るとき、サケのようにふっくらと背高の高い幅広な姿を好むが、確かに、実にきれいな姿をしている。

 

 奥さんが焼いてくれているうち、何種類かの資料コピーを見せていただいた。選抜育種とは何か、八丁ヤマメは他とどこが違うのか、へたなぼくの説明より、その資料を見ていただいた方がはやそうだ。

 ひとつは、石井誠一さんが「養殖」という雑誌に書いた「八丁ヤマメ養殖センターの想い」。もうひとつが、同じ雑誌の岸川さんという記者(現在はアクアネット編集部)が書いた、八丁ヤマメを訪ねたルポである。

 そして、石井さんの話を聞いているうちに、客が訪ねてきた。その人が、石井さんの友人でもあり、山でキノコや山菜、川魚とりにかけては地元でも名人といわれる「たかみ」のおやじさん、山口啓一さんだった。丹沢や富士山ろくや各地に山菜やキノコをとりあるいて、週末だけ営業する「たかみ」で、お客さんに四季の山の幸をご馳走して、うまいといってくれることに、無上の喜びを感じるという、またすごい名人であった。あとで、山口さんを取材して、マダケの筍の話を記事にしたとき、今度何日にきなさい、カジカをご馳走しましょうといってくれたのには、驚いてしまった。玄倉川(くろくらがわ)の源流にいる山口さんの丸秘の漁場があるという。

 カジカの話はまた別の機会に書くことにしよう。(MANA)

追記:ありがたいことに、ある日この記事を読んで、八丁ヤマメを訪ねに行きたいというメールが入った。SONOKUMIさんという妙齢の女性からのメールに、ドギマギしながら、久しぶりに石井さんのところに電話し、対応方を依頼した。1週間ほどして、また、Sさんからメールが入り、「行ってきました」という。その上「たかみ」にも寄ってきたということであり、MANAのささやかな記事が縁となって、以下のサイトで、八丁ヤマメ訪問記ができたと知らせてくれた。ぼくが取った写真は、すべて新聞社にフィルムで送ってしまって手元にはないため、写真入の説明ができなかったのだが、このSさんの訪問記には写真も入り、主婦感覚のとてもわかりやすい記述で記されています。

http://homepage2.nifty.com/bikkuri/

読んでみてください。

@「八丁やまめ養殖センターの想い」石井誠一、「養殖」1998年2月号掲載

Aルポ・選抜育種を軸にこだわりのヤマメ作り!―神奈川県山北町・石井誠一さん(アクアネット誌掲載)

B木幡勤著『漁業崩壊』(まな出版企画。2001年12月刊)「事例16−青春の夢を託した特産種〈八丁ヤマメ〉(神奈川県山北町)」

 

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