往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ

○その1―往来物「魚字尽し」の一例

 

2 9―安政頃『いろは字引』(小泉蔵本)(いろはじびき)

 

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◆〈書状案文・手形証文集〉いろは字引(いろはじびき)[0141]   【作者】不明。【年代】安政(1854〜60)頃刊。[江戸?]積玉堂板。【分類】語彙科・消息科。【概要】中本一冊。「両点早引節用集」「四民要用熟字尽講釈」「消息往来」「用文章」「商売往来」「手形証文」を収録した往来。「両点早引節用集」は二字熟語をイロハ順にそれぞれ15語〜19語ずつ載せ、各語彙に音訓(両点)を付す。「四民要用熟字尽講釈」は、消息に多用する語句(「消息往来」中の語彙)を中心に集めたもので、それぞれ略注を施す。本書後半部に 23丁の日用語集を加えた増補版があり、これは魚・貝・虫蛇・禽鳥・獣・食火・衣服・道具・草木等13門別の語彙集(大字・6行・両点)で、頭書に「用文章」「諸国御関所御番」「手形証文」等を掲げたものである。〔小泉 記〕【所蔵】小泉ほか。

29-001

画像(c)Yoshinaga Koizumi

 

〔表紙〕

情状案文/手形証文集 いろは字引

29-002-01〜02

画像(c)Yoshinaga Koizumi

 

○体裁・特徴

刊本。13分類。語彙科。類別字尽。 魚介区分。 2段。本文約10字×6行。魚貝区別。訓有。両点。

 

29-001

頭書消息商売往来

情状案文/手形證文集 いろは字引

安政新板 積玉堂蔵  積/玉

 

29-002(01)

約8字9行・頭書略

                       
     

 

候共

 

方事

   
        いずかた りえん    

たれどの

   

よつて

ごとし

くだんの

えんづき

勝手

われら  
      かつて  
      然上 しかるうえ    
        さし      

かまへ こう
                           
                           
                           

〔注〕魚字尽のぺーじの見開き対向のぺーじに「離縁状」の文面の様式が載る。読みの勉強のために魚偏漢字とは関係ないが参考に翻刻してみた。寺子屋の授業で、書き取りをやりながら、離縁状の文面を筆で書いている子供たちの姿を想像してみるのも愉快だ。ちなみに、この文案は、もっともオーソドックスな「離縁状」=三行半(みくだりはん)だが、「われら勝手に付き離縁いたし候」がなんともいえず、江戸期とはいえ夫婦のドライな関係、とりわけ女性の立場をも配慮した表現になっているのがおもしろい。

 

29-002(02)

年始状(題字)以下約7字11行・頭書略

シク しやちほこ●

トウ

ふな●  ボク ユキ 雪魚

ネン

なまず●

 
マン うなき● トウ

鰊鯑

かず キウ しひ

トシ

年魚

ねん

ぎよ

 
セン

のこ● ショ かれい

棘鬣魚

なり たい

きょく

 

 

 

ぎよ

 

 
ハイ にしん● ロウ あをさば● ケン かつほ

あゆ ケイ くじら●
ウヲノ フン

とび 鰹節 かつほぶし●

スナハチ

即魚

そく

ぎょ

さめ●
アブラ べ● ヨウ セツ からすみ

●ふな ケイ めくじら●
ハン はまち●

ケン から

カイソ

海鼠

なまこ●
はゐ● シウ

どぜう● ケツ さげ● カライヨ 王餘魚

巽魚

そんぎょ
レイ はも● コノシロ ほう カク わに●

 

●ます セイ さば●
リン うるめ● イヲ

      い●

ケイ

さけ テウ たい●
                     

 

         

 

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本サイトは、往来物に含まれる「魚字尽」の主要なものを、小泉吉永氏のご協力により、小泉吉永氏所蔵及び往来物データベースに含まれる図書館・大学・個人蔵の原文複写画像からMANA(中島満)によりできるだけ忠実に翻刻しネット上で活字に写したものです。類似研究資料がなく、小泉吉永氏や関係者に翻刻内容や注釈内容についての意見交換をするためにネット上にのせたもので、すべて未定稿であり、メモとしてのせているもので、内容は毎日変更があります。このため、内容テキスト及び画像の一部利用、複写、リンクはすべて禁止といたします。

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