いんたーねっとうをじづくし今様魚字尽
往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ
○その1―往来物「魚字尽し」の一例
7―元禄2年『節用字纂往来』(神宮文庫蔵本)
●節用字纂往来(せつようじさんおうらい)
【作者】不明。【年代】元禄2年(1689)刊。[江戸]万屋清兵衛板。【分類】語彙科・消息科。【概要】異称『字纂往来』。大本二巻二冊。閏一二月を含め全一三カ月往復二六通の消息文中に種々の単語集団を含んだ往来。古往来の『異制庭訓往来』や『新撰類聚往来』と同様の編集形式を取る。上巻は一月往状から六月往状の一一通を載せるが、その冒頭は「年華始換之後、千祥万悦更不可有際限也。抑東武之御規式厳重而、従元正之日被任御嘉例、御一門之歴々・諸侯・太夫、御旗本之面々、近国遠地之僧侶至迄…」という新年儀式の書状で洛陽百官・百士・在国諸大名等の名称を列挙する。以下、ほぼ全状に文面から導かれる特定の単語集団を包含させ、武陽諸芸名人等(一種の『名頭字尽』)、屏風・襖等の画題および絵の具、珍宝・画賛類、屋具・屋躰(家屋各部の名称)・堂塔(寺社建築)・番匠および鍛冶用具、草花・獣類、食物・果実・山菜類、家具・穀類・食品・青物類、楽器、薬種、魚類等の語彙集を盛り込む。他方、下巻は六月返状(日付に「季秋」とあるが、書状配列から「季夏」の誤り)から一二月返状までの一五通を載せ、例えば六月返状の場合は馬の借用と珍禽異鳥を贈るという文面で、鳥類約八〇語を掲げ、以下、神具、俗服、物具(武具・馬具)、五穀、虫類、樹木、草、硯・筆・墨、家具・器財、人倫、仏具、旅行用具、天地等の語彙を収録する。このほか、文面中に酒類や酒の故事、書筆・芸能の故事・知識等を織り込んで綴った例文もある。例文はそれぞれ書止・月日・上所・宛名・脇付などを含む正格の消息文で、いずれも大字・五行・付訓で記す。〔(C)小泉吉永〕【所蔵】神宮・謙堂・日大ほか。【影印・翻刻】「往来物大系」一六巻(下巻)/「日本教科書大系・往来編」七巻(同)。
もくじ|6/03-04←|7/001〜003/004(01-02)|→7/005(01-02)
7-001
01 空白〔「上総国」云々の落書きあり〕
02 〔「神宮文庫角印」あり。以下本文抜粋〕
節用字纂往来せつようじさんわうらい
年華始換之後千祥ねんくははしめてかはりののちせんしやう
万悦更不可有際限也はんえつさらにさいげんあるへからざるなり
抑東武之御儀式厳重而そも\/とうぶのをんぎしきげんじゆうにして
従元正之日被任御嘉例げんしやうのひまかせられごかれいにより
7-002-01
皐月の状(略)
7-002-02
謁一ゑつに僅々
皐月さつき日 清科きよしな某
啓上雅楽助殿御返事
一昨日従レ京都飛脚到来候いつ・さくしつ・より・きやうと・ひきゃく・てうらいそろ
御屋形様御暇御拝領おんやかたさま・おんいとま・こはいりやう
7-003-01
来十四五日夜比祇園之祭礼きたる・しうしこにちころ・きをんのさいれい
過レ可有御發賀由候すきへき・あるこはつか・よしにそろ・さいしやうの
侍中間被官人急為御迎
可有上洛候無余日候間定而
於路次可参向歟若黨中原
7-003-02
出立馬鞍并思々旅之衣装’
雖レ不レ有二御沙汰一候為レ傍-見呈二
衿荏彌可為御褒美乎
尤以参可申談處御雑掌
以下種々用意共被申付間
潮 煮 |
う しほ
に |
品 | しな | 荒 | 以 | 更 | ||||||||
累 | るいに | 増 | 御 | 不 | ||||||||||
大薯 蕷 |
おほ
とろゝ |
魚 | うを | 書 | 祝 | 得 | ||||||||
之 | の | 付 | 之 | 寸 | ||||||||||
名 | な | 進 | 儀 | 暇 | ||||||||||
海 鼠 湛 味 |
こ
だゝ
み |
者 | は | 之 | 式 | 候 | ||||||||
候 | 献 | 故 | ||||||||||||
其 | その | 々 | 課 | |||||||||||
料 | りやう | 肴 | 菅 | |||||||||||
理 | りの | 模 | 城 | |||||||||||
様 | 公 |
醢 |
な し も の |
注 |
掻 鯛 |
かき
たい |
膾 |
なます |
桜 熬 |
さくら
いり |
注 |
鎌 桙 |
かま
ほこ |
|||
注 |
|
うるか |
曳 亘 |
ひき
わたし |
||||||||||
海鼠腸 |
こ
の
わた |
煮 校 |
に
あへ |
卯 花 熬 |
うの
はな
いり |
酒 熬 |
さか
いり |
|||||||
注 |
削 物 |
けつり
もの |
||||||||||||
辛螺汁 |
にし
しる |
腸 熬 |
わた
いり |
|||||||||||
青*汁 |
あを
がち
しる |
撞 盛 |
つかみ
もり |
差 身 |
さし
み
|
|||||||||
注 |
脹 熬 |
ふくら
いり |
||||||||||||
鮓 |
すし |
壷 焼 |
つぼ
やき |
青 饅 |
あお
ぬた
|
|||||||||
煎盤 |
せん
ばん |
扣 |
たゝき |
|||||||||||
〔注〕7-004-02-1(1) 鎌桙かまほこ。蒲鉾(かまぼこ)のこと。
〔注〕7-004-02-4(1) 掻鯛かきたい。【料理物語】かきだい 鯛を三枚におろし、こそげてかさねもり候、いりざけよし、からしをく、けんはよりがつを くねんぼ みかん きんかん。/小川だゝき 生がつををおろしよくたゝき、杉いたにつけにえ湯をかけ、志らめてつくりたゝみ候、右のかきだいにもりあはせよし、鯉にてもつかまつり候也、同いり酒。(【古事類苑】飲食部三、料理中。212ページ)
〔注〕7-004-02-4(2) 煮校。校は[校(木→テヘン)]とも読める。煮合(にあえ)のこと。
〔注〕7-004-02-5(2) [魚+豕](7画)は、[魚+逐’](11画)と同じ。
〔注〕7-004-02-5(4) *が読めない。[テヘン+鳥]のようだが、 「あをがち(ら?)しる」と訓む字が見つからない。
もくじ|6/003-004←|7/001〜003/004(01-02)|→7/005(01-02)
本サイトは、往来物に含まれる「魚字尽」の主要なものを、小泉吉永氏のご協力により、小泉吉永氏所蔵及び往来物データベースに含まれる図書館・大学・個人蔵の原文複写画像からMANA(中島満)によりできるだけ忠実に翻刻しネット上で活字に写したものです。類似研究資料がなく、小泉吉永氏や関係者に翻刻内容や注釈内容についての意見交換をするためにネット上にのせたもので、すべて未定稿であり、メモとしてのせているもので、内容は毎日変更があります。このため、内容テキスト及び画像の一部利用、複写、リンクはすべて禁止といたします。 |
copyright 2002〜2008,manabook-Mitsuru.Nakajima |