いんたーねっとうをじづくし今様魚字尽
往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ
○その1―往来物「魚字尽し」の一例
3―万治2年初版・寛文12年再刊『童訓集 下』(小泉吉永氏所蔵本)
3-003-01
鳶
鴟
虎
文
魚 |
とび
同
とら
と
び
う を
|
老海鼠
帆立貝 |
ぼ ら
ほ
や
ほ
たて
がい |
郭公
時鳥
子規
杜 鵑 |
ほと ゝぎす
同
同
同 |
鶏
鳰
辛螺 |
に わ と り
にほ
に
し
|
蛤
海
蜷 |
は まぐ り
ば
い
にな |
八 々 鳥
鱧
鮠
|
は ゝ
て う
は も
同
はへ
は ら ゝ ご |
|||||
3-003-02
鰈
王 餘 魚
比目魚 |
か れい
同
かます
か
れ
い
|
雁
鴨
烏
鵲
鷗 |
がん
かも
からす
かささぎ
かもめ |
鷲
黄 鷹 |
わし
わか
たか
|
雄
魚
|
を んどり
を
こ
じ
同
|
鴛鴦
尾長鳥
狼 |
を
し
お
なが
どり
おほかみ |
飛魚
鰌
鯲
|
と び
うを
どじやう
同 |
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〔注〕3-003-02-1(3) 読み下し=泥デイ中ニ沈シツム
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童訓集下より |
〔注〕3-003-02-3(2・3) 割注の「 順の和名」は「源順 和名抄」。真名真魚字典[騰(馬→魚)](10画)参照。
〔注〕3-003-02-3(2・3・4) オコジ(同)を訓みとする魚偏の文字つくり字の崩し字(図像―右)が読めない。[天/鬼]のように読めるが、該当する文字が見つからない。『日本魚名集覧』漢字魚名表中25画(魚偏11画+ツクリ14画)に、「実験活用水産宝典」「水産俗字解」「水産名彙」を引いて、[天/鬼]をあげているので、原典を確認すべし。オコゼの一般的な字形である[滕(月→魚)]あるいは[騰(馬→魚)]の草書体の字形から書き写す際に、月偏を魚偏に、騰(馬→魚)の魚を鬼に読み間違えたか、趣向でおきかえて作った字形という想像は成り立つが、用例をもう少し増やして検討してみたい。参考として、あげておくと、「国字の字典」158ページに[魚+(天/鬼)]がのり、用例引用文献として「五本対照改編節用集・饅頭」とある。手元に、饅頭屋本節用集の影印コピーがないので、魚偏項目をあとで確認してみる必要がある。ただし、このような字形を、一や二の字形用例のみを見て、「国字」として無批判に“活字化”することには、MANAは反対である。不明字として、草書体のバリエーションとしてみるか、元字の文献からの書き写しによって筆記したものであるかの、検証をしてかかることが必要であるように思う。オニオコゼという和名があるが、近世にこの和名が一般化していたかどうか、あるいは、オコゼの姿態から、「鬼」を字形に書き入れる趣向をしたにしても、1字の用例をもって造字として扱うことはさけるべきであり、[騰(馬→魚)]の変化形として、参考字に止めるべきであろうと考える。 真名真魚字典[騰(馬→魚)](10画)及び[魚+天/鬼](14画)参照。参考:「難字往来」6-002-02-3(10)にも見える。