いんたーねっとうをじづくし今様魚字尽


往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ

○その1―往来物「魚字尽し」の一例

 

1―寛永21年(頃)『魚字づくし』(学芸大学蔵本)

 

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1-003-01

はへ  

ねん

なまず  

こい  

ぜん

 

 

かん

 

小鮹魚

ねん

あゆ
     

 

       
ざこ

こん

ふな
 

 

[即]

 

けん

ほう

はも

たん

うつ

熨斗

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     
れい

ざこ どぜう

       

 

             

1-003-02

  てんちう

田中螺

 

かふ

 
 

 

 ら

辛螺

 

萬木の名    

 

 

よろづ

 

けん

 

栄螺

 

 

 

 

       
ぶん

かふ

文蛤 いたらがい

 

           

はう

あわび

 

馬蛤

 

ばい かい      

 

 

         

〔注〕1-003-01-1(5):鯣の左ルビ音ヨミに「かい」とあるのはなにをさすのか不詳。「か」と「う」のくずし字の類似から、「うい」とよんで音の「ウぃ」(ヰ)をさすのか。

〔注〕1-003-01-1(6):熨斗の「斗」に左音ヨミに「か」とあるのは、「科」のツクリをさしてのことか。但し、科の音符の「禾」(カ)は穀物の意味をさし、「斗」は升(ます)の象形。 

〔注〕1-003-01-2(3):[軍]→[卑]ともよめるが、音の「かん」から本書においては[軍]でよいだろう。[魚+軍]は、コンあるいはクワン(カン)で、[完]に通じ、アメあるいはアメノウオを指すが、コイの邦名をあてた字義をもつ江戸初期以前の字書の用例はいまのところ見出せない。とすれば、本用例は、本書以前の文書用例の引用(何かは不詳。未調査。)であるか、あるいは、コイの字義を持つ[魚+卑]のくずし字を「軍」と読み、「カン」と当てたということも考えられるので注記しておきたい。

〔注〕1-003-01-2(6):崩し字は、[魚+覃]に似るが、1-001-02-1(2)に「ゑい/しん」として載せていること、本字の訓みを「うなぎ/たん」としていること、崩し字の覃の「早」を明らかに「旦」と読めることから[魚+亶]とした。但し、[魚+亶]の訓みは、音はテンあるいはセンあるいはタン。

〔注〕1-003-01-3(4):鯤とよむか[魚+毘]とよむかは要検討。ツクリの崩し字からは、ツクリの頭の部分は、「日」とも「田」とも読める。日に近いが、田を否定できない。後日、事例を増やせばおのずから判明するが、05−童学万用字尽(寛文年間)ごろまでの江戸初期には、「昆」が主体に使われ、元禄頃からは、一例として10−万用字尽教鏡(元禄5年頃)に見える如く、「毘」の字にはっきりと書いた[魚+毘]の字が現われ、以後、「昆」の使用例が減り、「毘」が主体の文字になっていくように思われる。新井白石の『同文通考』が著わされた宝永元年(1705)のころ、同書中の「国字」に「[魚+毘]ギヾ」が整理され載せられる頃を境に、[毘]の字体がギヾの字形として認知されていくように思われる。国字成立の一過程を知るうえで、キーワードとなる字形であろう。真名真魚字典―[鯤](8画)・[魚+毘](9画)で字形の用例を示したので参照されたい。

〔注〕1‐003-01‐4(2):左ルビの訓み「りよ」は、つくりの字のくずし字形を「慮」(おもんばかる)を想定して記したものか。あるいは、筆者が、「盧」(ろ)のくずし字形が「りよ」にも通じるとして記したものか。〔注〕1-003-1(6)の「斗」を、「か」と読ませて「科」の字のツクリにも応用ができるというような記し方もあり、単純に、「ロ」の訓みが正しく、「リョ」は誤りと断定するのは早計か。

〔注〕1-003-01-2(3):「蛎」の左ルビ。「ホ」に濁点の「ぼ」でよいのだろうか。意味不詳。

 

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