真名真魚字典 まな・まな・じてん MANA◆MANA◆JITEN
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往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ
○魚偏漢字のわが国への移入と変遷をみながら、定着していった魚偏漢字の字体と音と訓との多様な変容によって邦魚名に与えた影響を整理し、魚名成立との相関を探ってみようというのが、このサイトのねらいである。真名真魚字典によって、魚偏漢字の全貌を整理しながら、江戸期の初等教科書として刊行された往来物のなかから、まずは、「魚字尽くし」や「貝尽くし」としてまとめられた記事を抜き出し、翻刻文を載せていこうとおもう。その作業の過程で、思いついた点、不明な点(ばかりだが……)についてのメモを書き入れながら、ネットで公開しながら、魚名漢字の変容と邦魚名成立についての考えをまとめていきたいと思う。以後、順次勉強の過程で、名物往来や商売往来など語彙科系以外にも多く含まれる魚貝名を記載した往来物へと幅を広げ、近世の“庶民”が一般に使用してきた魚貝名称と漢字かな表記の多用な世界の広がりにせまって見ることにしたい。
○翻刻するにあたっての往来物原文については、往来物研究者の小泉吉永さんが主宰されているネットサイト『往来物倶楽部』で公開されている「往来物データベース」および小泉さんが所蔵されている往来物 を中心として、魚字尽し、あるいは魚字尽しの含まれる刊本を活用させていただいた。小泉さんには、往来物や近世文書についてはまったくの素人であるMANAの勝手な取材や、データベースからの該当文書の複写依頼や、魚字尽についての 事項整理のために往来物データベースからの記事転載協力要請を、こころよくうけていただき、一からのご教示をいただきながら、このメモを書き進めているのだということを、記しておきたい 。
○編著者のMANAが小泉吉永さんにインタビューして、往来物と魚字尽とのかかわり、今後の往来物研究における魚字尽研究の課題などをまとめた「“魚字尽”は江戸時代の初等教科書」をMANAしんぶんのサイト内に載せておいたので、関心のある方はチェックしていただきたい。
○下記もくじ中の番号に欠番があるのは、編者の画像整理番号との対照のためであって、他意はない。
○いずれ内容の特徴を整理したうえで魚字尽の分類をするつもりだが、まずは、往来物に現れる魚字尽の形体から仮分類として次のように区分けした。
○往来物に含まれる語彙科往来や消息往来・教訓科往来の魚字尽しのジャンルに属する記事が載るもので刊本の本文で記されているものは(その1) 「魚字尽系」とした。江戸期以前に記され近世以降も流布してきた庭訓往来や尺素往来などの「古往来」については(その2)「古往来系」とした。また、(その1 ・2)には属しない小野篁歌字尽や往来物で魚貝水産動物名を記した記事のうち、本文とは関係のない内容として頭書(付録)に記載されている魚字尽については(その3) 「歌字尽及び付録字尽系」とした。またこれらは、膨大な往来物のなかで相互に重なったり、時代を経て名前を変えて再刊行されたものを含むなど数項目で分類不可能であるが、翻刻・注釈作業の手順から仮に分類したものであって、最終的には、さらに成立年代、記述内容などを考慮しながらわかりやすい分類方法を検討し整理したい。
○なお、往来物の読解を進めながら、気付いた、蔵書(所有 ・利用)者による“書き込み”や、“落書き”で、ユニークなもの、魚名漢字の変異を検討するにあたって今後注意を要することになりそうなものについては、備忘録がわりに(その4) 「落書き」(参考)として掲載しておいた。
○また、(その5)魚字尽考関連年表として、取り上げた魚字尽し、あるいは魚貝名称が含まれる往来物の刊行年と、中世〜近世〜近代にいたる、関連する本草書、動植物誌 及び魚介類専書等の博物学書、古字書、節用集、随筆、文学書の成立年、関連人物事項とを対照させた参考年表を記した。
時代 |
魚字尽くしを含む往来物・字尽等の書名(刊行年)/項目名称 |
ページ・リンク |
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江 戸 時 代 初 期 |
01 |
魚字づくし(寛永21年頃)/同 |
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02 |
累用字尽(明暦頃)/万魚之名并貝づくし |
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03 |
童訓集 下(万治2年初版・寛文12年再刊)/鳥獣貝魚之事(イロハびき) |
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04 |
萬字盡(寛文頃)/魚尽并貝尽 |
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05 |
新版改正 童学万用字盡(寛文頃)/魚字づくし |
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06 |
難字往来(延宝8年)/鳥獣之事 |
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07 |
節用字纂往来(元禄2年)/其料理品累魚之名者 |
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08 |
世話字節用集(元禄5年)/(四)気形門 |
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09 |
千字類合(元禄5年)/鱗蟲 |
|001〜004| |
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10 |
万用字尽教鏡(元禄5年頃)/魚類之部・貝類之部 |
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11 |
万字尽(元禄頃)/万うをつくし并貝尽 |
江 戸 時 代 中 期
○ 19 は 欠 番
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12 |
童子字尽安見(正徳6年)/(五)龍魚門・(六)蟲介門 |
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13 |
筆海俗字指南車(享保17年)/魚類・貝類 |
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14 |
七以呂波萬字寶(安永以前)/魚類之部・貝類之部 |
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15 |
増補童字節用集(安永5年)/魚鳥之部 |
|001-004| |
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16 |
幼学字尽寺子往来(安永8年) |
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17 |
増補字尽童子経(寛政10年原板)(明治3年改正)/魚類 |
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18 |
字尽節用解(寛政11年)/魚貝之部 |
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20 |
衣食住天地計見字尽(江戸中期)/次ニ魚類貝類ハ |
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21 |
改正字づくし(江戸中期)/魚類之部 |
江 戸 時 代 後 期 |
22 |
分類早見字尽(「日用重寶万文字盡」)(文化3年)/魚之部 |
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23 |
品物名數抄(文化7年)/魚介類 |
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24 |
世話萬字文(天保6年)/魚介卅六(「魚者……」) |
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25 |
家財諸道具字尽(天保11年)/魚鳥料理之類 |
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26 |
早引文字通(弘化4年)/龍魚門・蟲介門 |
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27 |
(欠番) |
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28 |
子供節用集(嘉永頃)/(日用重宝万文字尽)魚之部・貝之部 |
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29 |
いろは字引(安政頃)/魚之部・貝之部 |
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30a |
商売往来絵字引(初篇・絵入り)鯛…… |
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30b |
商売往来絵字引(二篇・絵入り)魚類・黒鯛…… |
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01 |
明衡往来 |
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02 |
新猿楽記 |
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03 |
和泉往来 |
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04 |
天文6年写・山田俊雄蔵本 |
岩波書店・新日本古典文学大系52「庭訓往来 句双紙」山田俊雄・入矢義高・早苗憲生校注より。 |
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05 |
尺素往来 |
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06 |
新撰類聚往来 |
01 |
壒嚢鈔 アイ嚢鈔 |
1446年(文安3)跋文。15巻刊本(正保3、三条通菱屋町ふ屋林甚右衛門)。 | 仏教を主とした和漢の故事、国字・漢字の意義・起源などを解説した書(広辞苑)。百科事典的な類書(日本辞書辞典)。観勝寺の僧・行誉の撰。を、京都大学電子図書館貴重資料画像(KLDB)で全文読むことができる。 |
02 | |||
03 | |||
04 | |||
05 | |||
06 |
(その 3)付録字尽系 (掲載準備中)
01 |
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○記載順はアトランダム | |||
01 |
学芸大学「望月文庫往来物目録」―(内容)諸国名物往来/大坂独案内/江戸諸職往来より |
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02 |
文化14年 |
小泉吉永氏蔵本。「一休蜷川/勧善懲悪/狂歌問答/児女教訓」。表紙に記されたカヂカ、ガバチの落書きは、あてた漢字表記と共に、重要な資料となる。裏表紙に「天保六乙未歳/正月???/東藤泉村住人/木村藤兵衛主」とある。 |
○〈その6〉凡例
(1)「同じ」「反復」記号の使い方は以下のとおり。
「ゝ」(くりかえし:ひらがな)。「ゞ」(くりかえし:ひらがな濁点)。「ヽ」(くりかえし:かたかな)。「ヾ」(くりかえし:かたかな濁点)。々、〃、仝など本文の記載とおなじ。複数語の反復については、「〈」(複数語清音)。「《」(複数語濁音つき)。
以下準備中。
file:///C:/My Documents/teikinourai.pdf
お願い 本サイトは、魚偏漢字と魚名変容を考えるにあたって小泉吉永氏のご好意で使用させていただいた往来物中の魚尽くし記事の複写及び写真版影印の画像を下に作成したものであり、いまだ勉強途上のため今後多くの修正のうえ、将来正式にネット上で公開しますが、現在は未定稿状態にあります。したがって当座リンクにあたりましてはご一報ください。また、当サイトで使用されているすべてのテキストと画像のコピー使用は、禁止します。
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