いんたーねっとうをじづくし今様魚字尽


往来物に含まれる「魚字尽し」研究メモ

○その 5―往来物「魚字尽」参考資料

魚字尽考関連年表

――本草学・博物学・古字書・往来物等文献資料

By MANA―中島満      基本稿:2005.10作成〜最終修正:2008.3.30

Sorry Under Construction

 

もくじ |(その1)魚字尽系|(その 2)古往来系|(その3)歌字尽及び付録字尽系|(その4)落書き(参考)|(その 5)魚字尽考関連年表

書名色区分け凡例=中国刊行書:玉篇本草|日本字書字書本草書など:「新撰字鏡」|日本往来物諸本:「魚字尽

西暦

和暦

 

事項(1)

文書表題名

刊行年次ベース(中)中国暦

事項(2)

文書成立年次ベース

中国発行文書

事項(3)

筆者・編撰者及び校訂注釈者

備考(1)

版本・編校訂者・内容

備考(2)

魚字等の数・その他

(字=「鯛」「鮟」「鱇」など文字1字単位。語=「鯛」「鮟鱇」「王餘魚」など名称の単語-熟語。)

前6C

(中)

詩経」この頃までに成立

不詳(孔子:伝承)。

中国最古の詩集。西周から東周(前9〜6C)にかけての歌謡305編からなる。

魴、鯉、鰥、[與]、鱒、[亶]、鮪など19字の魚の仲間について記されている。

前3C   (中)戦国時代 山海経」この頃以前成立。 不詳。 成立年代推定は、高馬三良「山海経」訳解説(1994年)187pによる。 郭璞(かくはく:276〜324)注を補注した郝懿行『山海経箋疏』(WLDB)により読む。
前2C   (中)

爾雅」成立。

不詳(周公)。

中国古代語彙を解説した字書。十三経のひとつ。3巻。周代から漢代の諸儒が諸経書伝注を採録したもの。現存する19篇(釈詁・釈言・釈訓・釈親・釈宮・釈器・釈楽・釈天・釈地・釈丘・釈山・釈水・釈草・釈木・釈虫・釈魚・釈鳥・釈獣・釈畜)は、「詩経」の語を解釈したものが多い。

「釈虫」「釈魚」
1C初   (中)

方言

揚雄。

中国最古の方言字書。全国の地域を14に分けて記述している点に注目。

 
100   (中)

説文解字」成立。

許慎。

9000余字を540部に別けて、親字を篆字によって記し、各部の文字は、意味の関連にしたがって配列。この配列の体裁を説解とよび、代表的な注釈・注解書としては、段玉裁『説文解字注』がある。

 

3C初

 

(中)後漢

釈名」成立

劉煕

爾雅にならい「釈天」……など27類に漢字を分類し字義(語源)を記述。

 

227

 

(中)

廣雅」成立

張[楫(木→手偏)]。

この年以後成立。爾雅を増補し、爾雅に倣って19類に漢字を分類、約1万8000字を載せ字義を記す。

 

280

 

(中)

字林」成立

呂忱

この頃成立。説文解字と同じ部首分類で約1万2800字載せる。散佚。

 

543

(欽明4)

(中)大同9

玉篇」成立。

顧野王撰述。

梁時代に成立した、漢字の部首分類による字形引き字書。新撰字鏡・類聚名義抄に影響与える。 中国には散逸し、全30巻(31巻ともいわれる)のうち原本系玉篇は日本に伝えられた6巻(巻8・9・18・22・24・27)のみが伝存する。

……1013を見よ。

601 (推古9)

(中)隋仁寿元

切韻」成立                                             

陸法言撰

最古の韻書。約1万2200字を、平声・上声・去声・入声に従い193韻に分類。反切と字義を付す。る。後に散逸。本書を範とし増補された廣韻で採られる206韻分類の韻書へとつながっていく。

 

659   (中)顕慶4 新修本草」成立 蘇敬ら撰 唐高宗の勅命で、7巻本「本草経集注」全文を核に、蘇敬らが850種に増補、加注し、中国本土に頒布された国定薬物書。  
739  

(中)

本草拾遺」成立

陳蔵器編著

唐の本草書、10巻。 陳蔵器(ちんぞうき)が、陶弘景「神農本草(経)」を補って編んだもので、739年ごろ成立とされる(上野益三「年表日本博物学史」 1989年)。亡佚して内容・成立は不詳。「陳蔵器本草」とも呼ばれる。

 

835 承和2 篆隷万象名義 このころ成立。 空海編撰。 わが国現存最古の漢字字書。30巻。和訓なし。玉篇の部首配列により抜粋隷書篆書で記し、反切、字義を載せる。  

892

寛平4

新撰字鏡

草稿成立。

昌住編著。

昌泰年中(898〜901)に玉篇・切韻を得て参照加筆して12巻の書として成立。画引き字書の体裁をとりながら四声に分かち音韻字書の体裁をも備える。

……1124(天治本)を見よ。

918

延喜18

本草和名

この頃成立。

深根輔仁編著。

本邦最古の本草書にして漢字と和名を対照させた字書。「證類本草」に従った編次で、項目は、玉石・草・木・獣禽・虫魚・菓・菜・米穀・有名無名に分け、薬物固体は1025種、和名711種、和産520種を載せる。和名ほか、表題字に対する異名字を多く載せる。1758(刊行)参照。

海草は、「昆布・乾苔」・海藻他。虫魚の主な魚は、鯉([后][果][虔])・蟸(鱧)・鮑・[夷](鮎)・[且](鰌)、[即](鮒)・[單]・烏’賊・蟹・鰻[麗]魚・鮫([昔]鯊)・鯛・鱸・鯖・鰺・[生]・鱒([必])・鯨(鯢、[昆])・鯔・鯰・[比][目](鰈)・王餘魚・[侯]・鰕([分])・韶陽魚([納][番])・針魚・海鼠・海月・海蛸など。

934

承平4

倭名類聚抄

この頃成立。

源順編撰。

1617をみよ。

984 永観2

医心方

この頃成立。

丹波康頼撰。

医書。30巻。

1008 寛弘5 (中)大中祥符元 廣韻」成立 陳彭年他増補。 「大宋重修廣韻」の略称。北宋の陳彭年らが勅命を受け編纂した韻書。切韻系韻書を増補し、2万6200字を206韻に分ける。「切韻以来400年間の増補の集大成」(【学研新漢和大字典】)。  

1013

長和2

(中)大中祥符6

大広益会玉篇」成立。

陳彭年他増補。

唐上元元年甲戌歳(674)孫強により増加字を経て、宋(北宋)時代に成立した玉篇の増補版。 宋本と呼ばれ、倭玉篇ほか日本で編まれる字書に大きな影響与える。

宋本:巻第24第397・魚部(字数321字)/同巻第398・[魚/魚]部(2字)―(元1366年版の記載がある慶長9年序の刊本)京大附図電子画像より

1058

康平元

明衡往来

この頃成立か?(明衡50歳前後から晩年頃の書簡含む)

藤原明衡(989〜1066)撰。

いわゆる古往来に位置付けられ 、「雲州消息」「雲州往来」とも呼ばれる。公卿間に返往された二百数十通の書簡文集で、往来物の嚆矢。成立時には「無題無名」(石川謙「古往来についての研究」)

消息文例中に「桜鯛、柳鯖」(返礼)、「求メ送ラレル可キ」品物として、鯉、生鮭(他に蠣・蚫が後刊本記載)、および「魚」を含む。

1064 同7

新猿楽記

この頃成立か?

藤原明衡撰。

平安京の一宵主人公一家あげての猿楽見物にことよせて、その時代の世態、人情を細かく写した記録文集であり、世情を批判しようとする風刺文学。芸能史の視点からの読み方のほか、記述中に含む品物の羅列は、字尽型往来の原型を示すものとして注目してよいだろう。 

四郎の君は、……諸国の土産を集めて、貯え甚だ豊かなり。所謂阿波絹……、伊予鰯、……、近江鮒……、越後鮭……、備前海糠、周防鯖、伊勢[制]、隠岐鮑、……丹後和布、……等、此くの如きの贄、果物、轆々として踵を継ぎ、済々として市を成すと云々。

1081 永保元 類聚名義抄(図書寮本) この頃(平安末)以降成立か? 編者未詳。 部首だて漢和字書。 ……1241をみよ。
1116   (中)政和6 政和新修経史證類備用本草 唐慎微撰

「政和本草」と呼ばれる。1108年刊の「経史證類大観本草」(「大観本草」)とあわせて「証類本草」と呼ばれる。

第20巻:蟲魚部上品総五十種。

第21巻:蟲魚部中品総五十六種

1124 天治元

新撰字鏡(天治本)

写本成立。

法隆寺の僧の経典書写に際し音義の参照とするために写す。

昌住序に記すように2万940余字のほかに、(女・金・木・草・鳥・虫・魚各部に)小学篇(和製文字)400余字を採録、和訓を記す。全12巻。

巻9魚部第87(267字加3字)+「次小学篇33字」→計算すると実際は、264字+小学篇34字。この差は数え間違いか?

1186 文治2

和泉往来

書写年。

西室撰。

消息文例中に語句集の要素が加わり、具体的な文字数が増加する。魚貝類及び加工品の名称記載が各条にわたり記載されるようになった。「単語集団の大幅な挿入」へと進む転換点の書といえよう(「日本教科書大系」第2巻)。 その2―(2)

 

1199 正治元

伊呂波字類抄(色葉字類抄)

鎌倉初期成立か。

編者未詳(橘忠兼)。

伊呂波分類の辞書。色葉字類抄(三巻本)を増補して編まれたのが10巻本とされる。魚貝類は、天象・地儀・植物につづく「動物・付動物体」に載る。

 

1241 仁治2

類聚名義抄

書写年。

編者未詳。

(11世紀末成立)僧慈念が書写、建長3(1251)年沙弥顕慶書写(観智院本)。仏法僧の3に分け120部に類別 、3657の漢字語彙を載せる。異体字豊富に載る。

「百十三」僧下一〜十五に魚偏字が載る。百十四に虫、百十六に龜。

1245 寛元3

字鏡集

この年以前成立。

菅原為長か。

7巻本。「十四魚部」に魚偏字載る。

1350 正平5

庭訓往来

この頃までに成立。

玄慧?

「五月九日 左京進平」の状に、「初献の料」「削物は…」「生物は…」「塩肴は…」として魚介名・水産加工品名が載る。字尽の原型の一つ。 その2―(3)

 

1444 文安元 下学集の原本 この頃成立。 東麓破衲(自序名)編 刊行1617年の項をみよ。  
1446 同3 壒嚢鈔(あいのうしょう) 跋記載年。この頃成立。 行誉撰 15巻刊本(正保3、三条通菱屋町ふ屋林甚右衛門)中、第1巻第59「魚ノ一コント云ハ何ノ字ソ。」 52名称の単語(計73字)が6行にわたり記される。鳥他項あり「字尽」(魚の場合「魚字尽」)の一類型にあたるとしてよいだろう。
1450頃 室町中期

倭玉篇(篇目次第)

この頃写本。

和学講談所旧蔵本。現内閣文庫蔵。影印・解説は「倭玉篇夢海本篇目次第研究並びに総合索引」参照。

魚字は下巻第2冊第二百八十一魚部に351字(うち「古文」5字含)が載る。

1474 文明6

節用集の原本

この頃までに成立。

1597をみよ。

成立は「下学集よりも後の著であって、文安元年(1444)から文明6年(1474)まで、凡三十年の間に成ったものといふことができる」(上田万年・橋本進吉「古本節用集の研究」1916年刊)

1480 文明12

尺素往来

この頃成立か。

一条兼良編著。

「魚類は」「貝類は」「此外」として魚貝甲殻類等を載せる。その2―(4)

 

1525 大永5

七十一番職人尽歌合

この年以前成立か。

 

 

 

1576 天正4

新撰類聚往来

写本成立。

丹峯和尚作。

古往来。室町中期の明応〜永正年代(1490〜1520)頃の作。武田逍遥軒手澤本にして、新宮城書蔵印及び黒川家蔵書印のある写本が、現在は東大国語研究室蔵。慶安元年・1648年刊本に本書の意義を示したが、倭玉篇、節用集の語彙を類別単語集団にして手紙文体とは独立して整理掲載する。字尽型のモデルとなった最初の往来物といえるだろう。→1648を見よ。

上巻のみ伝存し、一月状から八月状までに28分類の単語集団が載る。宮家武士の用語だけでなく“庶民”の生活具や食品・動植物語彙が採用されているのが最大の特徴。魚名は22分類で6月状に、139字・119語を載せる。魚字尽の原型として位置づけてよいだろう。

1578 天正6

《明/万暦6年》

本草綱目

李時珍編著

 

 

1597 慶長2

節用集(易林本)

成立室町中期ごろ。1474年をみよ。

「建仁寺の僧とする説のみは真にちかさう」(橋本進吉)。

「易林本節用集」は、節用集の中で、最早く印行せられたもののひとつ」で、表記年に「易林という者が改訂を施し跋を加えたもの」(橋本進吉)大正15年「日本古典全集」より。 参考:「易林」=1605「夢海」

 

1603 同 8

家康江戸幕府開く

 

 

1603 同 8

日葡辞書 本編刊

 

 

魚介動植物について、中世末から近世初めに一般庶民が使用していた語彙と音を確認検証する第1級資料。補遺慶長9に成る。

 

1605 同 10

倭玉篇(夢海本)

この年刊行。

夢海・書写編。

無窮会神習文庫蔵本。影印・解説は「倭玉篇夢海本篇目次第研究並びに総合索引」参照。参考:1597「易林」=「夢海」

魚字は上巻末冊(第2冊)魚第三十一附[魚/魚]に320字が載る。

1612 同 12

多識編

自筆草稿成立

林道春(羅山)著

多識編(寛永8年版)。本草綱目の分類に従い編んだ初邦書とされる。「鱗部」「介部」。見出し語に和訓を与え、その一部に異名(関連)字を小字で分類 。

 

             
             
1617 元和3

倭名類聚鈔(那波道圓本)

成立承平(931〜938)年中撰進。

源順。

20巻本(32部249門)。江戸期に一般的に流布した20巻本の1本。「日本古典全集」所載本より。

 

下学集

成立1444(文安元)年

東麓破衲(自序名)編

元和3年始めて刊行される(元和三年板)。

 

1644 寛永22頃

魚字づくし

 

おそらく江戸前期刊

作者・刊行者不明

本文冒頭記事の題名が「魚字づくし」。魚字尽としてもっとも早い時期のものと推定されるが、刊記なく成立・発行年次は不明。寛文頃成立(?)の「童学万用字尽」に似て、字体語彙配列に影響を与えたとみられる。特徴は、「鯛鱈……」(海産魚)と「鰊鯑海月……」(塩干加工)と「鯉鮒……」(湖沼河川産魚)と「辛螺栄螺……」(貝類)の順におおよその分類がなされている。次項は「万木の名」。

鯛鱈鱒鯖〜。頁大字4〜5字/4行。87語(海付4語。水付1語。魚付4語。)。魚偏90字。虫偏9字。

1648 慶安元

新撰類聚往来

京都蛸薬師・敦賀屋久兵衛開板(刊記)。

丹峰和尚撰写(著)

古往来。室町中期の明応〜永正年代(1490〜1520)頃の作。古写本は、天正4(1576)年の東大国語研究室蔵本。慶安刊本は、近衛流行書で大字・7行(本文1行14〜16字)付訓で記す。手紙文 例に続けて、文中に関連する類別単語集団が挿入。 近世の魚字尽の系譜をたどる上で中世古往来文中に魚字尽を独立させた類別単語集団に形ちづくる基点に位置する記述内容をもつ。仮分類では 「古往来系」に載せた。

その2―(5)

魚字は巻中冒頭よりの6状本文に続けて「其料理方之名付魚名」以下24行・2ブロックにわけ載る。「魚類者」のブロックは、1行の前段6字を魚貝水産動物類 等(合計51語)、後段2字に貝類・水産動物等(合計(9語)に分けた1行8字とし、1ブロック2段の珍しい構成。魚偏45字。虫偏9字。

1651 同4以前

万字尽

慶安4年以前刊行 作者不明・水野庄左衛門板[京都か] 大本一冊(全16丁)。年代が明らかなものでは最古本に属する『万字尽』。内容は「万うをづくし」「万鳥づくし」「万木名づくし」「万花名づくし」「獣づくし」「八百屋物づくし」「万虫づくし」の7編収録。従来から知られる『万字尽』では、元禄頃「〈新板〉万字尽」に酷似。同書のもとになったものとして万字頃「累用字尽」の存在が指摘されていたが、さらに古い版と見られる本書の発見で、逆に「累用字尽」が「万字尽」の影響下に成立した可能性も否定できなくなった。 小泉吉永氏「新発見の往来物」New097より元禄ごろ「万字尽」参照。
1655〜 明暦頃

累用字尽

おそらく明暦(1655〜58)頃成立

作者不明・京都-山本長兵衛板

「万魚之名并貝づくし」という分類。本文記載は「万うをづくし并貝尽」

その1―(2)

 

1659 万治2

童訓集

刊行年。

作者不明・江戸-西村又右衛門板

イロハ分類。3巻3冊で、魚貝は、下巻「鳥獣貝魚之事」として魚貝字を含む。付訓、所々に割注として中国原典出典由来、和俗を記す。

その1―(3)

 

1661〜 寛文頃

万字尽

おそらく寛文(1661〜72)頃成立(江戸前期)。

作者不明・刊行者不明

「魚尽并貝尽」イロハ順に記載。

その1―(4)

 

1661〜 寛文頃

童学万用字尽

おそらく寛文(1661〜72)頃成立(江戸前期)。

作者不明。江戸-銭形屋孫兵衛板

〈新版改正〉童学万用字尽。「○魚字づくし」。次項は「○万鳥尽」。

その1―(5)

 

1662 寛文2 小野篁歌字尽 刊行年。 作者不明。大阪-近江屋次良右衛門板

語彙科。歌字尽・寛文二年板系統本の原型板。なんらかの意味で類似している1行にならべ(1単元と呼ぶ)、これに和歌を添え、漢字の記憶読解の弁を図った「歌字尽」系の往来。江戸中期より明治にかけて普及したが、その原型となったのが「寛文2年正月」刊記本。

その3−(1)

1行すべて魚字の単元は7(34種字―総36字)。そのほかに、魚字が1字ふくむ単元が4(字)載る。他に虫偏など水棲動物、海藻類の文字がのる。鱸
1666 寛文5

訓蒙図彙

 

中村タ斎著

 

 

1680 延宝8

合類節用集

刊行年。

「若耶ノ三胤子遜序ス」の年記は延宝4年8月15日とある。

目録内題「字林拾葉」。8巻中、5巻が「魚鱗部」「介魚部」「龍蛇部」「蟲豸部」「禽獣部」「諸獣部」。

 

節用集大全 刊行年 恵空編    

難字往来

刊行年。

早川正斎作・書。刊行者不明。

語彙科往来。大本二巻二冊、後二巻合一冊。上巻は六月五日付芸州山人宛ての手紙、下巻はその返状という二通の手紙文中に「文言雑字」「鳥獣」「草木」「魚虫」(以上上巻)、「絹布」「器物」「鍛冶・番匠具」の7門を主とする難字を盛り込んだ往来。本文を大字・四行・付訓で記し、任意の難字を上欄余白に楷書で抄出する。―(6)

 

1684 貞享元

庖厨備用倭名本草

刊行年。

向井元升著

序記載年は寛文11(1671)年。肥前国に生まれ長崎で独学で医学を修める。京都→金沢→京都(延宝5年・1677年歿)。倭名類聚鈔の和名に基づき分類、多識編を対照させながら本草の知識、処方についての自らの見解を記している。魚貝についての博物学的評釈を加えた記載としては、和爾雅や本朝食鑑、大和本草以前に刊行された書のうち最高水準の評価をしたい。

 

1688 元禄元

1689 同 2

節用字纂往来

刊行年。

不明。江戸・万屋清兵衛板。

語彙科・消息科。異称『字纂往来』。大本二巻二冊(上下巻)。往復26通の消息文中に種々の単語集団を含む。古往来の『新撰類聚往来』と同様の編集形式を取る。上巻は1月から6月の11通を載せ、ほぼ全状に文面から導かれる特定の単語集団を包含させ、草花・獣類、食物・青物類、魚類等の語彙集を盛り込む。―(7)

1691 同 5

増続大広益会玉篇大全

初板刊行年。

毛利貞斎著。

中国・顧野王撰「玉篇」を原典にした「大公益会玉篇」に和字で注釈をあたえた漢和辞書。天保5年再刻本を手元に置く。 以後明治にいたるまで再刻を重ねた。

魚部(巻10)=677字

1692 同 5

世話字節用集

奥付記載年。

苗村丈伯作・序。京都・佐野彦三郎板。

世話字を多用した『世話用文章』(上・中巻)と、『世話字節用集』(下巻)から成る往来物・節用集。下巻が「世話字節用集」で、通常の節用集に未掲載の世話字を集録したもので、乾坤・人倫・支体・気形・生植・衣食・器財・言語等9門に分類、頭書に語句の注釈と絵抄を施す。気形門に虫魚類を載せる。―(8)

 

1692 同 5

千字類合

跋文記載年

貝原篤信(益軒)作・跋。京都・堺屋仁兵衛板。

大本一冊。朝鮮国正本『類合』をもとに、貝原益軒が編んだ語彙・語句関係の手本。『千字文』にならって四字一句、三九〇句の手本としたものが本書である。24項中「鱗虫」40字を載せる。―(9)

 

1692〜 同5年頃

万用字尽教鑑

刊行年不明。

作者不明。京都・菱屋治兵衛板。

魚類・貝類・諸鳥・獣・虫・木・草花・青物・諸道具・着類・五穀など17部を立てて5000語以上の語彙を集めた往来。上段に絵入り。「魚類之部」「貝類之部」 。―(10)

 

1694 同 7

和爾雅

刊行年。

貝原好古著

自著凡例記載年元禄戊辰(元・1688)。竹洞野宜卿序記載年元禄己巳(2・1689)。貝原篤信(損軒)序記載元禄甲戌(8・1694)。魚以下は巻6の第16龍魚門。

 

1695 同 8

本朝食鑑

刊行年同。

人見必大著

別名・野必大。東洋文庫296『本朝食鑑 1〜5』島田勇雄訳注。(平凡社)

 

1698 同 11

書言字考節用集

成立。

槇島昭武著

初刊行は享保2年(1717)以前。題簽「増補合類大節用集」見返し「和漢音釈書言字考/合類大節用集」。

 

1688〜 元禄年代?

万字尽

成立年代不明。

作者不明。

新板/万字尽/ひらかなてん付。半紙本一冊。「万うをつくし并貝尽」「万鳥つくし」「万木名つくし」など8分類で語彙を列挙。各語を大字4行(1行6字)付訓で綴る。万治年代刊「累用字尽」の流れをくむ分類字尽型往来。東京学芸大所蔵。―(11)

 

1709 宝永6

大和本草

自序記載年次は宝永5年。

貝原益軒著

宝永6年版・中村学園蔵書本。活字本は、明治43・1910年貝原益軒全集に納められ刊行。

 

1710 同 7

和俗童子訓

自序記載年次。

貝原益軒著

石川謙校訂岩波文庫版「養生訓・和俗童子訓」。益軒81歳の時の著述で児童・女子教育の方法・哲学を述べた書。実践的教育の教授法と教材について具体的に記し、文字学習の重要性を説く中で「世間通用の文字を知るべし。書跡よくしても、文字をしらざれば用をなさず。天地、人物、人事、制度、器材、本朝の故実、鳥獣、虫魚、草木等の名、凡そ世間通用の文字を知るべし。」として、具体的には校訂者が整理したように往来物に含まれる「魚名尽くし」や「草木字尽くし」の活用を示している。

 

1712 正徳2

倭漢三才図会

正徳二年は自序記載年次。

寺島良安編著

1713年刊本。参考:「和漢三才図会」東洋文庫471、島田勇雄他訳注。

 

1716 正徳6

童子字尽安見

刊行年。

松井庄左衛門(兎睡・自更軒)作・序。菊需准堂跋。

「古語註解/四民/童子字尽安見」。日常生活に必要な豊富な語彙(約6200語)を64門に分類・集録した語彙集。往来物としては語彙数が最も多い教材の一つ(解題辞典)。(五)龍魚門・(六)蟲介門。ほぼ同文・語彙が弘化4(1847)年「早引文字通」に載る。また、配列を変えて一部語彙(相当数)が「俗字指南車」に載る。 (12)

 

1717 享保2

書言字考節用集

初刊行(この年以前)

槇島昭武著

元禄11(1698)をみよ。

 

東雅

成立

新井白石

二十巻。巻十七(禽鳥)、巻十八(畜獸)、巻十九(鱗介)、巻二十(蟲豸)

 

康煕55

康煕字典

成立

 

 

1732 同17

俗字指南車

刊行年。享保16年序。

中村三近子著(序)

「筆海俗字指南車」。「魚類」「貝類」。「魚類」の項に文字数にして320数字載せ、200数十語の充実した内容をもつ。4箇所に割り注を付す。貝類に亀含む。正徳6年「童子字尽安見」の配列を変えて多くの語彙が重なる。 (13) 

 

- 安永以前

七以呂波万字宝

安永2(1773)年以前。?

不明。

「魚類之部」「貝類之部」。(14)

 

1775 安永4

物類称呼

刊行年。

越谷吾山著

「諸国方言物類称呼」。岩波文庫版・東條操校訂。

 

1777 同6

倭訓栞

刊行年。以後明治に至るまで刊行が続く。

谷川士清著

全93巻のうち13巻がこのとし刊行。

 

1776 同5

増補童字節用集

刊行年。

浅田恒隆著

「日用重宝字尽大成/増補童字節用集」。「魚類之部」「虫獣之部」。 (15)

 

1779 同8

寺子往来

刊行年。

不明。

「新撰通用/幼学字尽/寺子往来」。(16)

1789 寛政元

本草和名

刊行年。

深根輔仁編著。

918をみよ。多紀元簡校本刊行。

1798 同10

字尽童子教

初版刊行年

川合元(河井元・申甫・忠蔵)作。川合正校。文鳴画。

1870を見よ。〈民家日用〉字尽童子教。語彙科・社会科往来。異称『〈頭書日用重宝・伊呂波字引附〉増補字尽童子教』。半紙本一冊。享和二年再版・元治二年増補再版ののち明治三年全面改刻。(17)

 

1799 同 11

字尽節用解

here

 

魚字尽「魚貝之部」。〈当用文章〉字尽節用解。(18)

 

? 江戸時代中期

衣食住天地見計字尽

刊行年不明。

不明。

鳥類に続いて「魚類貝類は」として12行にわたり載せる。―(20)

 

? 江戸時代中期

改正字尽

刊行年不明。

不明。

「七ッいろは」「大日本国尽」「字尽」の三編を合綴した往来。。『七以呂波万字宝』の改訂版で、末尾の「字尽」は着類・魚類・貝類・鳥・獣・諸道具・木・草花の8部ごとに語彙を集め載せる。―(21)

 

1802 享和2

本草綱目啓蒙

成立(序記載年)

小野蘭山著

重修本・天保15(1844)年。重訂本・弘化4(1847)年。

 

1806 文化3

分類早見字尽

刊行年。

不明。歌川国直画。

異称『〈文化新刊〉日用重宝万文字尽』『文字尽』『〈再版改正〉子供節用集』。中本二巻二冊。二二部(二冊本)ないし二三部(一冊本)の分類で世俗通用の語彙を集録した往来。上下2冊本の上巻は冒頭から「魚之部」「貝之部」「鳥之部」……の8部約440語を載せる。(22)

 

1810 同 7

品物名数抄

刊行年。

不明。

諸物の数量呼称を分類して示した往来。文具・楽器・玩器・佩用・武具・射具・刀飾・鷹具・馬具などのほか菜果・艸木・飲食・魚介・鳥獣など24類に分け語彙を約10行に付訓で記し、数量呼称等の割注を付す。(23)

 

1820 文政3

倭玉真草字引大成 増補再刊本

初版1707(宝永4)年

 

平安書肆・中川文林堂蔵

 

1827 同 10

水族志

同年1月自序。

畔田翠山(源伴存・十兵衛)著

明治17(1884)年(刊行年次)の項をみよ。

箋注倭名類聚抄

同年5月成稿。

狩谷エキ齊著。

明治16(1883)年(刊行年次)の項をみよ。

1835 天保6

世話萬字文

同年成立。

和田耕斎作。

天保7年刊。〈諸家学要〉世話萬字文。「魚介卅六」。奥付に「嘉永四年補刻」(1851)とある。―(24)

 

1840 同 11

家財諸道具字尽

同年奥付記載。

不明。写本。

「魚鳥料理之類」として料理に使用される魚貝加工品を列挙している。―(25)

 

1847 弘化4

早引文字通

同年発行(奥付記載)

松亭金水作・書。森屋治兵衛(錦森堂)序。

正徳6年(1716)刊『童子字尽安見』の改題・改訂本。―(26)

 

1848〜 嘉永頃

子供節用集

刊行年不明。

不明。江戸・山口屋藤兵衛板。

〈嘉永改正〉子供節用集 。異称『日用重宝万文字尽』『文字尽』。語彙科往来。中本一冊。文化三年(1806)刊『分類早見字尽』の改編・改題本。文化板と同内容だが異板。本文を大字・五行・付訓で記す。「魚之部」「貝之部」 「鳥之部」。―(28)

 

1854〜 安政頃

いろは字引

刊行年不明。

不明。江戸?・積玉堂板。

〈書状案文・手形証文集〉いろは字引。語彙科・消息科。中本一冊。本書後半部には、23丁の日用語集を加えた増補版があり、「魚之部」「貝之部」「虫蛇之部」他、禽鳥・獣・食火・衣服・道具・草木など13門別語彙集(大字・六行・両点)で、頭書に「年始状」等を掲げる。―(29)

 

1864 元治元

商売往来絵字引 (初編)

刊行年。

柳河春三作・序。長谷川実信画。江戸・大和屋喜兵衛板。

堀流水軒作・元禄七年(1694)刊『商売往来』本文のほとんどの語句に図解と割注を施した庶民の生活図鑑とも言うべき往来。各丁とも大字・四行・付訓の本文に、語句に続けて図解等を挿入し、挿絵は多色刷り。大半に平易な略注を付す。―(30a)

 

1864 同 元

商売往来絵字引 弐編

刊行年。

柳河春三作・序。歌川広重二世画。江戸・大和屋喜兵衛板。

中本一冊。『商売往来絵字引』(初編)の続編として編まれた図鑑風往来物。初編に漏れた語彙を集めたもので、見返の序言によれば「和漢の産物、其出る処を糺し、先、呉服・織物類を始め、青物・野菜・果物・乾物・餅菓子・酒肴・魚類より鳥獣・草花・虫・石・紙・書画・竹木等迄図解して悉く記す」とある。―(30b)

 

明治時代

 

1870 明治3

増補字尽童子教

改正版刊行。

享和版の作者名を載せず。

1798の全面改刻板。社会生活に必要な語彙を分野別に集録した字尽型往来。漢字四〜七字一句の形式で、諸国名物他29分類のうち鳥類・畜類・魚類・虫類・草木・五穀・飲食を収録する。享和版の削除追加の項がある。―(17)

 

1881 同 14

水産彙考

明治14年10月4日板権免許。

織田完之著述人・出版人。

巻末書肆目録の扱い書籍紹介に同書「一冊金二十銭/水産ノ重要ナル各地ノ慣行ヨリ名産ヲ挙ゲ魚介ノ名称等ヲ羣書ニ徴シテ要用ヲ示ス。小学校ノ教科書ニ適ス」とあり。

 

1883 同 16

箋注倭名類聚抄

文政10(1827)年5月成稿。

狩谷エキ齊著。

刊行は明治16(1883)年。倭名類聚鈔の原型を伝えるとされる10巻本に、20巻本との比較のうえ詳細な注釈を加えている。 エキ齊の弟子・森立之により制作が企画、編・校正され大蔵技監・得能良介らの協力により印刷局から出版された。別冊として森立之編「箋注和名鈔訓纂」が付された。

 

1884 同 17

水族志

当年刊行。文政10(1827)年1月自序。

畔田翠山(源伴存)著。

 

 

1887 同 20

水産俗字集

明治19年12月序記。

農商務省農務局編。大日本水産会発行。

中世古字書・節用集・本草書・随筆とともに訓蒙図彙、往来物を10余から魚貝水産動物の漢字表記をイロハ順にカナ和名称に対応させて抜き出し整理している。誤読による誤記も目立つが近世の魚貝漢字表記を 出典を明記してまとめた書としては初めてで、かつ基本文献として重要な位置付けを与えられる。

 

1901 同 34

水産名彙

同年4月緒言記。

田中芳男編・藤野富之助補輯。大日本水産会発行。

ガリ版印刷物。巻頭の緒言によれば、「今ヤ本邦水産業旺盛ノ日ニ方リ水産物ノ称呼彼我相同シカラス。随テ各地ノ方言ニ同物異名異物同名等アリ。而シテ漢名を用フルモノアリ又慣用ノ漢字或ハ俗字を用ユルモノアリ。茲ヲ以テ其名称ノ用字ヲ索捜スルノ便ニ供スル為メ」として、すでに「水産俗字集」があるが、同書は、「物名僅少ニシテ用ヲ為スニ足ラス」として本書を編纂したとある。しかし、本書は、冒頭示す如くガリ版印刷による文字の不鮮明に加えて、不統一の文字の略字化や、水産俗字集からの転載に際しての誤記に加え、引用原典の数を増やしたのみで、さらに誤読と誤記を増やし、「魚名漢字集」としての混乱を現代に伝えた結果となった。本書の内容の評価と利用にあたっての注意については機会を見つけて別に頁を設けて指摘したい。

 

1916 大 5

古本節用集の研究

同年発行。

上田万年・橋本進吉著

参考

1959 昭34

大漢和辞典

初版

諸橋轍次著。大修館書店発行。

全15巻・補巻わが国漢和辞典の集大成であり、「親文字5万余字、熟語53万余語を収録した世界最大」(発行所HP「大漢和辞典」記念室より)。

魚部(巻12)=679字

(他に、サンズイの部に、漁・[漁(魚→魚/魚)]、行の部に衡、草の部に蘇、禾の部に穌の5字載る。)

同(補巻)=23字

HOMEもくじ

本サイトは、往来物に含まれる「魚字尽」の主要なものを、小泉吉永氏のご協力により、小泉吉永氏所蔵及び往来物データベースに含まれる図書館・大学・個人蔵の原文複写画像からMANA(中島満)によりできるだけ忠実に翻刻しネット上で活字に写したものです。類似研究資料がなく、小泉吉永氏や関係者に翻刻内容や注釈内容についての意見交換をするためにネット上にのせたもので、引用文献等の記載が不十分であったり、誤植が多かったりで、すべて未定稿であり、メモとしてのせているもので、内容は毎日変更があります。このため、内容テキスト及び画像の一部利用、複写、リンクはすべて禁止といたします。

copyright 2002〜2008,manabook-Mitsuru.Nakajima 


 真名真魚字典