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○「海はだれのもの?」に関する報道 ダイジェスト……キーワード:漁業権/入会権/水利権/埋立/漁業補償/ダイビングスポット/水面利用料/潜水料/公共事業

日付

新聞の名前

記事(全文ないし概要) :「/」は改行。数字は漢数字もすべて洋数字に直した。

1996年10月29日

読売新聞(朝)

東京高裁/「潜水料徴収は不当」/漁協に返還命じる判決

 スキューバダイビングの人気スポットとなっている静岡県沼津市の大瀬崎沖で、ダイビングのたびに地元の漁業組合が潜水料を徴収するのは法的根拠がないとして、横浜市の潜水器具販売業の男性が沼津市の内浦漁協を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、東京高裁であった。

 塩崎勤裁判長は、男性の主張を一部認め、同漁協に男性が支払った287回分の潜水料9万7580円の返還を命じる判決を言い渡した。

 判決で塩崎裁判長は「漁協は、潜水料を徴収する法的根拠がないのに、それを支払わない場合には特定区域内でのダイビングを禁止し、支払いを余儀なくさせており、徴収は不当」と指摘した。

2000年12月11日

朝日新聞夕刊「窓」―論説委員室から

○タイトル「入会権」
 「入会(いりあい)権」という言葉が現代の暮らしに登場することはめったにない。せいぜい里山保存運動などで「昔の入会地だった雑木林が、たきぎに利用されなくなって荒れてしまった」という話を聞く程度だ。
 海の入会権ともいうべき漁業権も、埋め立てに際して「札束と引き換えに、漁民が海を売った」などとマイナスイメージで語られることが多い。
 そんな時代に一石を投じる本が出た。明治学院大教授の熊本一規さん(51)が書いた『公共事業はどこが間違っているのか? 早わかり 入会権・漁業権・水利権」(まな出版企画)だ。
 一言でいえば、これらは農民や漁民が江戸時代から海・山・川を集団で管理し利用してきた権利であり、現代でも住民が無駄な公共事業に対抗するうえで大きな力になる、という内容である。
 かぎになるのは「総有」という法律概念だという。近代法の共有や法人所有などと違って、入会集団が持つ権利で、かつ構成員一人一人が利用できる権利である。売買できないし、全体の合意がなければ権利を消滅させることもできない。
 熊本さんは1970年代に鹿児島県の志布志湾開発反対運動にかかわって以来、漁業権問題にのめり込み、漁業法の最高権威といわれた水産庁OBの浜本幸生さん(昨年11月死去)の教えを受けた。
 いまは、熊本県の川辺川ダムに反対する漁民たちの理論的支柱となっている。実践活動で突き当たった問題への解答が今度の本ともいえよう。
 「入会的権利は開発側や裁判所にないがしろにされ、住民もよくわからないまま押し切られてきた。権利の性質を正しく認識すれば、国土を守ることができる」と熊本さん。
 立場を異にする開発側にも一読をお勧めしたい。〈哲〉

[中島注 〈哲)さんは、朝日新聞の西部本社論説委員(当事)の池見哲司さんと思われます。]

2002年10月22日

朝日新聞・夕刊2面「窓」論説委員室から

〇タイトル【漁業補償】
 長良川河口堰の建設費1493億円のうち、漁業補償費は149億円を占める。
 事業に伴って影響を受ける人に補償するのは当然だが、算定の根拠などの詳しい中身は明らかにされていない。おかしな話だ。
 「根拠はある。だが、交渉ごとなので、相手の要求に応じて上乗せしていかざるを得ない。その分をつかみ金と言われればそうだ」補償当時、水資源開発公団幹部からそう聞いた。
 この話を思い出したのは中部国際空港建設に関連して愛知県が漁業補償費の中に本来は払う必要のない3億円を盛り込み、関係漁協に出した疑いが明るみに出たからだ。
 この金はもともと、空港建設地の常滑市が独自の埋め立て事業の際、漁協に補償金の上乗せとして、こっそり約束していたものだ。
 それが空港の補償交渉に持ち込まれ、県は話し合いを円滑に運ぶために市の「つけ」を肩代わりしたようだ。説明の難しいつかみ金である。
 県幹部がこの支出を決めたことについて、名古屋地検は県に損害を与えた背任容疑で調べを始める模様だ。
 「行政行為が犯罪に問われるのではたまらない」。関係者からは交渉当事者への同情が漏れている。
 しかし、犯罪かどうかはともあれ、そもそも交渉を密室でやっているから不明朗なことになる。他の公共事業も他山の石とすべきだ。
 公共事業の補償は個人のブライバシー、に配慮しつつ、もっと透明にする必要がある、と改めて思う。<渡辺斉>

2006年9月4日(月)

沖縄タイムス

朝刊/オピニオン5面

投稿 写有

[論壇]/家中茂/海洋保全に協力しよう/漁業者を軸に現状打開を
 ここ数年、「農業・農村の多面的機能」とか「食育」ということが話題に上ることが多くなった。森林の水源涵養機能(緑のダム)とか、水田の生物多様性保全機能(田んぼの生き物たちのにぎわい)という言葉をお聞きになった方もいるだろう。食にしても、たんに栄養学的な観点からでなく、食文化として、さらには地域づくりの核として見直されるようになっている。このような大きな流れのなかで、水産基本法で「漁業・漁村の多面的機能」がうたわれることになった。
 日本全体で農業従事者が二百数十万人、漁業従事者に至っては二十数万人といわれる時代である。このままでは食料の確保はもちろん、生態系の保全や伝統文化の継承さえ危ういといえる。そこで、離島や沿岸部に人が住み、生活を営み続けることの意義を見つめ直そうというのが「漁業・漁村の多面的機能」という政策課題に込められた意図だととらえておきたい。
 このような観点から注目されるのは、慶良間海域で、漁協とダイビング事業者そして行政が連携して行っているさんご礁保全利用の取り組みである。オニヒトデ駆除はもちろんのこと、ダイビング回数を制限したり、アンカーの投げ入れをやめるなど、自主的に保全利用のルールを取り決めて実行している。
 これは、沖縄本島沿岸へのサンゴ幼生の供給源として最重要視される慶良間海域さんご礁をオーバーユースの弊害から守って、保全するための最も有効な手だてだといえる。それと同時に、これらの活動を通して「慶良間の世界」という地域ブランドの創出にまで発展していっているのである。漁業・漁村の多面的機能を生かした「ローカルルールにもとづいた産業創出」の典型例として挙げることができるだろう。
 また、恩納村においては、モズクや海ブドウの養殖の実績をもとに「美ら海育ち」ブランドを確立しており、さらに北部の水産物流センターとして機能し始めている。これも長年による赤土流出防止やオニヒトデ駆除など海洋生態系保全活動と相まったものであり、「責任ある漁業」の具体例といってよいだろう。
 一方、沖縄県全体に目を向けると、自然海浜の破壊、赤土流出による海域汚染、遊漁やダイビング等増大するレジャーと漁業者とのトラブルなど、困難な問題が依然と山積している。加えて、燃油の高騰、資源減少や魚価低迷による収益減により、漁業者の経営維持は一層困難となっている。
 このような現状を打開するには、漁業者が軸となってさまざまな層の海洋利用者が協働し、沖縄の海の保全と利用を担っていくことが望まれる。具体的には、漁業・漁村の多面的機能を生かした産業創出によって、地域社会の担い手として漁業者が元気になることが真剣に検討されねばならないだろう。
 沖縄の海の現状とそこで生活を営み続ける地域社会への理解が今後いっそう深まることが期待される。(鳥取市、鳥取大学地域学部助教授、52歳)

2006年9月 6日 (水)

琉球新報

【沖縄】「もっと漁業権主張を」 県漁連が産業創出シンポ
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-16942-storytopic-4.html

 県漁業協同組合連合会(下地敏彦会長)は5日、那覇市前島の水産会館で「地域の多面的機能を活(い)かした産業創出シンポジウム」を開催した。水産資源減少や魚価低迷などさまざま問題を抱える漁業者が新しい時代に対応した取り組みをしようと初めて開催した。
 パネリスト4人が参加したパネル討議では、沖縄大学教授の上田不二夫氏が軍施設や港湾などで十分な漁場を確保できないという県内漁業者の現状を示し「県内の漁業者は漁業権をもっと主張するべきだ」と指摘するなど、海面利用について活発な意見が交わされた。
 上田氏は「沖縄は昔から『海はみんなのもの』という意識が強く、海面利用に関する権利関係で、きちんとした法的清算がなされていない」と述べ「漁業権を一度消滅させる戦後の新漁業法が、沖縄には米軍の占領で適用できず、権利があいまいなまま今日まで来たことが要因だ」と指摘した。
 沖縄観光コンベンションビューローの洲鎌孝常務理事は「海は沖縄最大の観光資源で、開発などで汚染される現状に歯止めをかけるべきだ」と関係者の連携による環境保全を訴えた。
 シンポジウムは漁業関係者や行政関係者など約230人が参加した。質疑応答ではダイビング関係者から「ダイビング業は法的な位置づけがなく、漁業者との利害調整に苦労する。漁協内に観光事業部をつくり、業者が加入することで共生できないか」との提案や「やはり海はみんなのもので、漁業権は沖縄のライフスタイルに合わないのでは」といった意見が寄せられた。
 パネル討議に先駆けて、全国遊漁船業協会の佐竹五六会長が基調講演した。
(9/6 10:25)

2006年9月 6日 (水)

 

沖縄タイムス

朝刊9面

【沖縄】海面利用について漁業権主張の必要性などが指摘されたパネル討議=5日、那覇市前島の水産会館
http://www.okinawatimes.co.jp/eco/20060906_2.html
漁業資源活用でシンポ
 漁業・漁村が持つ多面的機能の活用法を探る「地域の多面的機能を活かした産業創出」シンポジウム(主催・県漁業協同組合連合会)が5日、那覇市の水産会館であり、専門家らがさまざまな視点で海岸や水産資源の活用法を議論した。漁業関係者を中心に約150人が参加した。
 パネルディスカッションで、泡瀬地域で23年間漁業を営む沖縄市漁協組合長の小嶺仁氏は「沿岸開発で漁業環境が悪化。操業できない漁師は、ダイビング船や埋め立て地区の監視船の操業で収入を得ている現状だ」と説明。「時代が変わり開発が進むのは仕方ないことだが、漁業と他産業が共存していける環境づくりが大切だ」と強調した。
 日本福祉大学教授の磯部作氏は「読谷村や恩納村では、修学旅行生を対象に漁船での釣り体験などの漁業体験を受け入れている。受け入れ数も全国上位であり、漁村と観光産業の連携モデルとして注目されている」と紹介した。
 沖縄大学教授の上田不二夫氏は「沖縄では戦前まで漁業は地域の農業に付随するものと考える慣行があった。また米軍統治下に置かれた歴史から、本土より漁業者の漁業権の確立が遅れた」と述べた。現在でも中城湾から金武湾にかけての10漁協が米軍、港湾、石油貯蔵施設などで水域の制限を受けながら、縫うように操業している状況を指摘。さまざまな障害がある漁業権漁場の確立が課題とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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