味探検69-味食クラブ3(東京新聞1998年5月28日12面掲載) 料理研究家・歯科医師・エッセイスト田沼敦子さん |
かむ子は育つ “かむかむ”クッキング |
ヤンキース伊良部選手が3勝目をあげ絶好調。前から疑問に思っていたことがある。マウンド上でなぜ彼はガムを噛むのか。ちゃんとした理由があった。緊張すると唾液が出にくくなる。ガムを噛むと大脳皮質を刺激し唾液が出やすくなりリラックスし、集中力が増すらしい。 「噛めない子供が最近増えているんですよ」と田沼敦子さん。千葉市でデンタルクリニックを開業しながら料理研究家にしてエッセイスト。ご主人は本紙火曜夕刊で「人間万歳」を連載中の写真家田沼武能氏。多忙中子供たちに作り続けた弁当のスナップ写真。母と子のふれあい記録が数十冊のアルバムに残る。 最近子供の傾向は「ヤワナガクリョク」現象に陥っているという。 ヤわらかいもの好き、ワ食ぎらい、ナがら食い、クわずに流し込み、リョク黄色野菜嫌い。 学校食事研究会の造語だが、うなずいてしまう。こんな噛まなくなった現象からの肥満、イライラ症候群に田沼さんは「かむかむクッキング」を提唱する。近著「ホーム・デンティスト」で、良い歯医者とは良く噛めるようにしてあげることだと、噛む料理を通し説いている。「乾物、根菜類、緑黄色野菜をたっぷりとりましょう」と3品料理してもらった。ヒジキと糸寒天と長ネギの炒りゴマ入り和風サラダ。豚肉と春雨、レンコン炒め。ゴボウのタラコまぶし。愛情の家庭料理が噛む極意と納得した。 (中島満) |
−レシピより− ☆豚肉と春雨、レンコン炒め 材料=豚肉薄切り、レンコン、春雨、赤唐辛子、ショウガ、キクラゲ、万能ネギ。だし醤油、サラダ油、ゴマ油、酒、顆粒スープ 作り方=キクラゲ、春雨は戻し適当な長さに切る。レンコンは薄切りし水にさらす。フライパンに油、きざみトウガラシ、薄切りショウガでさっと香りづけ、豚肉、レンコン順に炒める。春雨、キクラゲを加え、酒、スープの素、だし醤油を入れ炒める。万能ネギを散らす。 |
●取材メモ 田沼敦子著「ホーム・デンティスト―歯にも主治医を」ちくま新書1998。 |
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