真名真魚字典

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和名・一次名称・俗称別引用文献・参考文献引用文中の古書名注引用文中の人名注編者凡例

【箋注倭名類聚抄】抄訳魚字尽成立関連年表

 

7画 

[兌][君][豆][役][狄]經(糸→魚)[弟][免][鮹]蛸(虫→魚)|[局]|差(エ→魚)梭(木−魚)駸(馬→魚)日/女[岑][志][余][妥][辛][孚]輒(車→魚)|[折]|[系][邑][良][更]|[廷]|[酉]|[吾][呉][求][延][甫][鯆][完][攸/魚][魚+攸]|[歩]|[鯉]|[毎]|[卯’]|[餐(食→魚)][鯊][沙]|[狂]|[狂/魚]|[山/及]|[尨’][利/魚]|[孛]|[告’]|[梔(木→魚)][呑]|[梳’(木→魚)]|[梳”(木→魚)|[山/方]|[成][利][走][鯑][鯒][比/工][比/土][即][又/一/友]←[椶’(木→魚)] |[徹(育→魚)]イ:[頤−頁][豕]||[赤]

 

196 [魚+兌]  Ucode-9BB5

0701

――

[]

(46146) タツ・ダチ。 〔集韻〕徒活切。〖曷〗入聲。

魚の名。鱧の小さいもの。〔爾雅、釋魚〕鰹、大[同]、小者[]。〔注〕今州呼小[麗]為[]。〔 郝懿行義疏〕此申釋鱧大小之異名也、大者名鰹、小者名[]、然則中者名鱧、郭引時語者、以[麗] 即’鱧。 MANA註:「[郝懿行義疏」は、[郡(君→赤)]懿行(カクイコウ)が爾雅を注釈した『爾雅義疏』のこと。

○ピンイン:duó

同【学研新漢和大字典】

〔意味〕鱧(レイ)(タイワンドジョウ)の小さいもの。大きなものは鰹(ケン)という。

参考字体:

用例参考1 用例参考2 用例参考3 用例参考4 用例参考5

*1

*2

*2”

*3

*4

【和玉真草字引大成(文政三年増補版)】魚部166丁表(7画・4行)より。

画像A

【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七より。

【類聚名義抄(観智院本)】僧下四(4行-*2)、同七(5行-*2”)より。

【倭玉篇(篇目次第)】より。【倭玉篇(慶長15年版)】も同形。

【倭玉篇(夢梅本)】より。

*=*4

用例参考6 用例参考7   用例参考8  
   

寛永21年(頃)『魚字づくし』(学芸大学・望月文庫蔵本「古板文字づくし」)

画像C

【和玉真草字引大成(文政三年増補版)】魚部165丁裏(7行)

画像D

  【類聚名義抄(観智院本)】僧下四(4)より。*2の字の全文。画像B

○邦名 (1)タチウオ・タコ(集覧「水産名彙」)。(2)参考―ハモ、ハム、カツオ。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(518―7) *1{徒[蛞(虫→木)]反。小[魚+同]。}……to-katuの反切tatu。つまり、音はタツ。[同]をハモと読んで、小さなハモ。表題字の用例を多く集めたのは、なぜ、「兌」という楷書の字を書かずに、崩し字を、辞書としての各書に記載したのかという疑問があるからである。異体字という、異なる字形ということを示すのであれば、[魚+兌]と[*1]の2字を記載すればよい(たとえば[魚+分](4画)のように。)のだが、本字の場合類聚名義抄においても、崩し字と考えられる1字のみを載せている。他字のほとんどの場合が、字形が明白な楷書系の文字のみ、あるいは楷書の文字(正)と異体字を併記して載せているにもかかわらず、本字のみ崩し字の1字だけを載せる意味が、なにかあるのだろうか。崩し字と異体字と魚名とのかかわりを考える時のキーワードになりそうな字形としてマークしておきたい。

○(追記)……このメモを書いたあとに、往来物に現われる「魚字尽」の翻刻整理をしていて、「タチウオ」にあたる「魚+乞」(画像D)の類似形に読める崩し字の字形(画像C)に、本字との強いかかわりがありそうだ。詳細には、きちんと整理をしてまとめてみるつもりだが、タチウオ、ダツ、エツ、コツオ(コツウオ)、カツオ、ハモとの異種異名のサカナの呼称がサカナの形態状の類似(タチウオとエツ)、音の類似(タチとタツとダツ。カツオとコツオ)、漢字表記の草書体の類似形を誤読することによる混乱(タチウオとコツヲとカツオとハモ)がみられる。一般的に、これまでの魚名呼称の多様は、音や形体の類似と地方名称の発生のバリエーションによる整理・分類と考察がされてきただけだが、中世・近世の初等教科書たる往来物に含まれる「魚字尽くし」あるいは「食品に含まれる魚名漢字」の記載(には誤記・かって読み)と往来物読者の学習(誤読)を通しての混乱についての考察がほとんど(まったく?)なされていないことがわかってきた。往来物に含まれる魚名や食品名称の新たな視点からの整理・研究の必要性を強く感じて勉強を始め整理したのが「今様魚字尽」である。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下四(1204―4)*2{音[奪’=大/集]。兌。カツヲ。――歟。}……最後の「――[与+欠]」の字が読めない。疑問を呈する助字の「歟」(与)という字か、何等かの出典とのかかわりを示す「欠」という意味の「缺」でよいのか、よくわからない。要確認。【倭玉篇(篇目次第)】に記載されている「无」(玉篇に記載なしの意味)のような記号としての「欠」の字の可能性は低い。MANAとしては、「……であろうか」の疑問を意味する助字として使われていると見て、他の用例も読み進めることにする。

○(追記)……前追記に示したタチウオの字形とのかかわりにおいて、【類聚名義抄(観智院本)】僧下四(1204―4)の字の全文字を右に画像Bとして載せた。類似字形を整理していて、【類聚名義抄(観智院本)】には、*2の字と同字と思われる字体が、僧下七(1207-5)の5字目に載っていることがわかった。風間書房『類聚名義抄第弐巻』正宗敦夫編纂校訂の文字索引には、魚部の7角に、「○*2僧下ノ四・四」「◎*2”僧下ノ七・五」としてのる。この字形を崩し字としてみて7角の同字に分類整理したのは、魚偏に対する旁字を2字とも「兌」を想定してのものと推測したが、どうであろうか検討の要あり。

○【倭玉篇(篇目次第)】第二百八十一魚部(1086−3) *3{徒活切。タチ反。ナヨシ。}

○【倭玉篇(夢梅本)】魚第三十一(203-7) *4タツ{小[魚+同]也。コハム。}

○【倭玉篇(慶長15年版)】下 魚三百四十六(408-2) *3タツ{ナヨシ}

○【和玉真草字引大成(文政三年増補版)】魚部七画 ダツ{おほがつほ。〔四声〕曷(入声)}

○参考(1)ハモ・カツオ:鱧(13画)鰹(11画)

○参考(2)ボラ・ナヨシ:[鯔](8画)。

○参考(3)タチウオ:[魚+刀](2画)。[此/魚](5画)、[魚+末](5画)、[列/魚](6画)、[魚+曹](11画)、[魚+齊](14画)、[魚+蔑](15画)。……タチウオの用例は、[魚+齊](14画)にて記す。

○参考(4)コツオ(コツウオ):[魚+乞](3画)

○参考( 5)エツ・ダツ:[魚+刀](2画)。[此/魚](5画)。[魚+齊](14画)。[魚+蔑](15画)。また、タチウオの項も参照。

 

197 [魚+君]

魚+君

0702

――

-

(46147)  クン。 水は、虫の名。

○邦名 (1)メバル(集覧「水産宝典大日本水産会編」「水産俗字解」)。(2)メジカ・メジカマグロ(同「水産名彙」)

198 [魚+豆]

魚+豆

0703

――

-

(46148) (一)ト_ウ・ツ。(二)ト_ウ・ヅ。(三)ト_ウ・ツ。 (一)(二)(三)魚の名。或は[魚+主](46048)に作る。

○邦名 不詳。

 

199 [魚+役]

0704

――

-

(46149) エキ・ヤク。 さんせううを。或は魚+殳(45995)に作る。〔集韻〕、魚名、有四足、如龜―以下略。〔正字通〕、状如鮎、四足長尾、聲似小兒、善登竹。

○邦名 不詳。

○参考:同じサンショウウオの義を持つ漢字に、鯢(8画)がある。鯢の用例にも、子供の声(聲如小兒啼)の表現があり、題字の「聲似小兒」とともに、こどもの声というのは、高音で、キャッキャという遊ぶときの声をいうのであろうか。「鳴く魚」という分類項目を考慮するときには、音の表現にも注意をはらう必要があるだろう。キツキツもそうだし、「聲似小兒」もそうだ。

 

200 [魚+狄]

魚+狄

0705

――

-

(46150) テキ・チ_ヤク。 馬は、海魚の名。

○邦名 不詳。

201 [經(糸→魚)]

0706

――

*1

(46151) (一)ケイ・ギ_ヤ_ウ。(二)ケイ・ギ_ヤ_ウ。 (一)(二)おしきうを。〔[土+卑]雅、廣要〕魴、一名。 〔邦〕うごひ。うぐひ。淡水魚の一。

(0562)5画再掲 *2 *1と同じ。

○邦名 (1)ウグイ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)オシキウオ(同「水産名彙」)。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七 21{巨成反。又、下◆反。上。}……◆の字は、判読できないので留保。上とは、四声「上声」のこと。和訓は記載されていない。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一一 *’1*’’{同正。渠成反。魚名}……3字記載。魚名の和訓は記載されていない。*’、*’’は、*1*2の崩し字。画像は省略。

○【下学集(元和3年板)】巻上気形門第八(29オ) 1ウグイ

○参考(1)ウグイ:[魚+成](7画)。[鰔](9画)、[鰄](9画)。[魚+歳](13画)。石班魚。赤腹魚

○参考(2)アユ:[魚+疑]*1(アイキョウ)としてアユを意味する用例として使われる。[魚+疑](14画)に記した。

 

202 [魚+弟]

0707

――

-

(46152) (一)テイ・ダイ。(二)テイ・ダイ。 (一)(二)(1)おほなまづ。(2)或は[魚+夷](46122)・[魚+是](46290)・[魚+帝](46333)に作る。 

参考用例

(一)テイ・ダイ:【廣韻】(五巻・張氏重刊宋本廣韻TDB)上平聲巻第一:十二○齋{徂奚切}…○嗁{杜奚切。六十}啼涕……[帝]{魚四足者}…[弟]{大鱧}…[夷]{鮎也}[是]{上同}……○奚{古雞切}

(二)テイ・ダイ:集韻(WDB):巻之七去聲上:十二○霽{子計切}…○弟第{大計切。五十}[弟][是]{魚名。鮎也。或从是。}

○邦名 用例不詳。

○参考(ナマズ):[鯰](8画) :[魚+夷](6画)・[魚+是](9画)・[魚+帝](9画)・

 

203 [魚+免]

0708

――

[]

(46153) (一)ベン・メン。(二)バン・マン。 (一)(二)にべ。いしもち。うきぶくろは膠となる。

○ツクリの「免」は7画。「魚」+「免」を「説文解字」の表記文字である小篆でしめしたものが、画像0708-02。「免」は8画だが、もともとの字形を残して作りは7画である。 このような、いわゆる書き順にぞくすることなど、なーんにもしらなかったものにとっては、免を画数で数えると8画なのに、どうして7角に分類されるのか、と不思議でならなかった。こんなことも、ひとつの魚偏漢字への興味を増殖させるひとつでもあるので、メモとして残しておくことにしようと、書き順を示しておいた。

○この字は、魚名と魚偏漢字のかかわりを考えるのに、とても重要な字の一つであり、、参考に示したイシモチあるいはニベを指す[椶(木→魚)]及びハラカ(腹赤)を指す[宣]の、3字については、ちょっと詳しく用例を引いて整理しておこう。

0708-02

小篆

0708-03

画数と書き順

参考用例(1)

【廣韻】(五巻・張氏重刊宋本廣韻TDB)[免]:第三巻上聲:二十七○銑{蘇典切}→二十八○獮{息淺切}…○免{亡辯切。八}[免]{魚名}

【説文】(「説文解字十五巻」TDB)(60-7597)鮸:鮸魚也。{隋煬責貢四方、海錯幾盡、首曰鮸魚。按今江浙人所食海中黄花魚、乾之爲白鯗、即此魚也。一名石首魚。首中有二石。許云、出薉邪頭國者、蓋、許據所見載籍言之、江賦[椶(木→魚)]鮆順時而往還、注云、字林曰[椶(木→魚)]魚出南海、頭中有石、一名石首。然則此魚、又名[椶(木→魚)]、南海亦有之。}出薉邪頭國{薉邪頭國穢貊也。}从魚免聲。{亡辨切。古音在十三部。}

【玉篇】(大廣益会玉篇三十巻・張氏重刊宋本玉篇)(TDB)(2-02)[免]{眉辯切。魚名。}

参考用例(2)

【證類本草】(政和本草:WDB)巻第二十一蟲魚部:蟲魚中品総五十六種:七種今附{皆医家嘗用有效注云今附}〔今附5〕(8-89)石首魚。味甘、無毒。頭中有石、如碁子。主下石淋、磨石服之。亦燒為灰末服、和蒪菜作羹、開胃益氣。候干食之、名為鯗{音想}。炙食之、上消瓜成水、亦主卒腹脹、食不消、暴下痢。初出水能鳴、夜視有光。又野鴨頭中有石、云是此魚所化。生東海{今囦〔?〕臣■■等謹按陳士良云。石首魚、平。日華子云。取腦中枕、燒為末、飲下、治淋也。}/【食療{作乾鯗。消宿食、主中惡、不堪鮮食。}

【本草綱目】(国会図書館蔵本KTDB)(第24冊)第44巻、鱗部ニ(鱗之三)魚類三十一種〔12〕(24-44-39)石首魚{宋海寳}/(釈名)石頭魚{嶺表録}[免]魚{音免○拾遺録}江魚{浙志}黄花魚{臨海志}乾物名鮝魚{音想亦作[養]○(時珍曰)鮝、能養人人恒想之、故字從養。羅願云、諸魚薨乾皆為鮝。其美不及石首、故獨得專稱以白者為佳、故呼白鮝、若露風則変紅色失味也。}/(集解){(志曰)石首魚、出水能鳴夜視有光、頭中有石、如碁子。一種野鴨頭中有石、云是此魚、所化。(時珍曰)生東南海中其形如白魚、扁身弱骨細鱗黄色、如金首、有白石二枚、瑩潔如玉、至秋化為冠鳧、即野鴨有冠者也。腹中白鰾可作膠。臨海異物志云。小者名*水、其次名春來、田九成遊覧志云、毎歳四月来自海洋、綿亘数里、其声如雷、海人以竹筒探水底聞其声、乃下網截流取之、溌以淡水、皆圉ヒ〔?繰り返し「々」記号〕無力初、水来者甚隹二水三水来者、魚漸小而味漸滅失。}/(付録)墨頭魚{(時珍曰)四川嘉州出之、状類[軍]子長者及尺其頭K如墨、頭上有白子二枚、又名北斗魚、常以二三月出漁人以火夜照乂〔?刈り取る〕之。}/肉(気味)甘、平、無毒。(主治)合蓴菜作羹開胃益気{海寳}/鮝(主治)炙食能消瓜成水、治暴下痢、及卒腹不消{海寳}。消宿食主中悪鮮者不及{張*〔孟詵の諱〕}/(発明)…以下略。:注:@「圉ヒ」のヒは?=何度か記事中に出てくる。いわゆる踊り字(繰り返し記号)で、「々」と同じだろう。A「乂」ガイ=刈と同じだろう。

参考用例(3)

【本草綱目】(国会図書館蔵本KTDB)(第24冊)第44巻、鱗部ニ(鱗之四)無鱗魚二十八種・附録九種:付録〔2〕[逐][夷]{拾遺}

(釈名)[票]{匹水切}作膠名[票]膠。{(蔵器曰)鱁[夷]音逐題乃魚白也。(時珍曰)鱁[夷]音逐夷、其音題者鮎魚也。按賈思勰齊民要術云。漢武逐夷至海上見漁人造魚腸於坑中取而食之遂命、此名言因逐夷而得是矣。沈括筆談云。鱁[夷]烏賊魚腸也。孫愐唐韻云。鹽藏魚腸也。南史云。齊明帝嗜鱁[夷]以蜜漬之一食數升觀此則鰾與腸皆得稱鱁[夷]矣。今人以鰾煮凍作膏切片以薑醋食之呼為魚膏者是也。故宋齊丘化書云。鱁[夷]與足垢無殊鰾即諸魚之白脬其中空如泡、故曰鰾可治為膠亦名[線(泉→旋)]膠。諸鰾皆可為膠、而海魚多以石首鰾作之、名江鰾謂江魚之鰾也。粘物甚固此乃工匠日用之物而記籍多略之。

鰾(氣味)甘平無毒。(主治)略/(附方){新一}略

鰾膠(氣味)甘鹹平無毒(主治)燒存性治婦人産難産後風搐破傷風痙止嘔血散瘀血消腫毒伏硇砂{時珍} /(附方){新十}産難{魚膠五寸燒存性為末温酒服。 皆效方。}産後搐搦{強直者不可便作風中乃風入子臟與破傷風同用鰾膠一兩以螺粉炒焦去粉為末分三服煎蝉蛻湯下 産寶}…以下略

○邦名 (1)イシモチ(集覧「日本動物図鑑」「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)ウグイ・グチ・モグチ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。(3)ニベ(同「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」「水産宝典大日本水産会編」)。(4)[]魚=イシモチ(同「水産宝典大日本水産会編」)、アラ(同「水産名彙」)。

 

【新撰字鏡(天治本)】

【類聚名義抄(観智院本)】

 

本草和名(寛政版)。鰺の次の字体。 【新撰字鏡(天治本)】上が本文字体:注文{子江反。尓戸。}。下○四は頭注。 【新撰字鏡(享和本)】 【清国水産弁解】(山本由方著。1886年、農商務省水産局刊)「黄花魚図」(上巻44丁裏)

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(518) []{靡巻反。 @}……@は[白/几]或[白/九]に作るが不詳。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下六(5) []{音免。ニベ。一云、クチ。}

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 龍魚類二百三十六 [] 唐韻云、[]{音免。弁色立成云。仁倍。一云、久智。}魚名也。  

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部(二十四丁) 〔51〕 [] 唐韻云、[]、{音免、弁色立成云、[]邇倍、一云久知 、}{○新撰字鏡、[椶(木→魚)]訓爾戸、} 魚名也、{○廣韻同、説文、[]、[]魚也、玉篇、[]、魚名、孫氏蓋依之、段玉裁曰、隋煬責貢四方、海錯幾盡、首曰[]魚、今江浙人所食、海中黄花魚、乾之為、即此魚也、一名石首魚、首中有二石、江賦注引字林、[椶(木→魚)]魚頭中有石、一名石首魚、然則此魚又名[椶(木→魚)]、依段説[]魚即[椶(木→魚)]魚、源君分為二條、非是、但久知有白黒二種、白者大不尺、謂之白久知、又呼以之毛知、黒者大至四五尺、謂之邇倍、至漢名分別也、又按開寳本草云、石首魚、頭中有石、如碁子、乾食之名為鮝、初出水能鳴、夜観有光、爾雅翼引臨海異物志云、小者名[鰌(魚→足)]水、其次名春來、李時珍曰、石首魚、拾遺録[]魚、臨海志黄花魚生東南海中、其形如白魚、扁身弱骨、細鱗黄色如金、首有白石二枚、瑩潔如玉、腹中白[票]可膠、小野氏曰、二三寸名以之毛知、是[鰌(魚→足)]水也、七八寸名久知、是春來也、大者名邇倍、長三尺許、}

○【比古婆衣】巻の二 腹赤 さて上に引たる書どもに、[魚+宣]、[魚+免]、*1、石首魚など別物のごとく、とり\゛/に記して混らはしきは、そのものざねをばよくも正さずして、たゞそのかみ既く〔MANA註:コトゴトク〕在来アリコし和名の書どもを取集めてものせるが故に、おのづから爾部、腹赤、久知、伊之毛知、みな別魚コトイヲのごとくきこゆるなり。(以下略)

○【物類称呼】(岩波文庫版)古書注参照:石首魚 いしもち○京江戸ともに○いしもちといふ。西国及四国にて○ぐちと云。駿河にて○しろぐちといふ。此魚かしらの中に石有。よつて名とす。又江戸にて にべいちもち と云有。別種なり。是にべといふ魚の小なるもの也。/[遂][夷] にべ○此魚の小なる物を土佐にて○しらぶと云。大なる物を四国にて○ぬべといふ。又○そぢ共いふ。備前にて○そこにべと云。 にべ とは魚の腹中に[票]膠にべあるゆえに名とす。

○【本草綱目啓蒙】(東洋文庫4冊)(3-211)(巻之四十、鱗之三、魚類)[椶−木]魚 詳ナラズ。/石首魚:ニベ ソコニベ{雲州、備前}〔一名〕元鎮{水族加恩簿} 新美舎人{同上} 黄魚{事物異名} 王魚{同上} 黄爪{閩書} 金鱗魚{同上} [皇]魚{典籍便覧} 菩薩魚{雨航雑録} 免魚{通雅} [免]{正字通} [敏/魚]{同上同字}/海産ナリ。形状ハ略(フナ)ニ類シテ、狭長シ。鰭ナガク、鱗細ク、頭短ク小ニシテ、尾ニ岐ナシ。肉脆ク脂少シ。小ニシテ二三寸ナルヲ、イシモチ{同名アリ}ト云、味美ナリ。又ウバグチ{筑前}、シログチ{駿河}ト云。コレ[鰌(魚→)]水ナリ。一名梅首{雨航雑録}梅童{同上}梅魚{大倉州志}黄梅魚{福州府志}大頭魚{同上}ソノ長サ七八寸ナルモノハ、味イシモチニ 次グ。コレヲ、クチト云、グチ{筑紫、予州}又オキアヂ{雲州}ト云。春中多ク貨(ウ)ル。是、春来ナリ。一名[某]魚{雨航雑録}鰌魚{同上}[毎]{通雅}黄花魚 黄霊魚 小石首魚{共ニ同上} ソノ大ナルモノヲ、ニべト云。一名ヌベ{四国}ソヂ{同上}ソコニベ{備前}長三尺バカリ。大和本草ニハ四五尺、六七尺ト云。カ夕チ方頭魚(アマダイ)ニ似テ、長シ。背ハ紅ト淡里トノ斑点アリテ、腹ハ黄色ナリ。イシモチ及クチノ淡黄白色ナルニ異ナリ。ニベハ六月ニ食フ。味佳ナリ。海底ニ居游シ、上浮セズ。故ニ、ソコニベト云。コノ魚歯ヲ愛ス。モシ歯網ニカヽルトキハ動カズ。死スルトキハ早ク爛レ、遠ニ致スべカラズ。大小ミナ首ニ二石アリ。潔白、堅硬ニシテ、瑪瑙ノゴトクニシテ、透明ナラズ。クチノ石ハ大サ三分バカリ、一面ニ葵葉ニノ形アリ。故ニ俗ニ、アフヒイシト云。マタ国ニヨリテ一面ニ疣多キモノアリ。ニベノ石ハ長サ一寸許、ヒロサ六七分、刀(ツカ)ノメヌキニ用ユ。一説ニ、イシモチトニベト別ナリ。ニベノ小ナルモノハ、ニベイシモチ{江戸}、シラフ{土州}ト云。クチトニベト形色異ニ、石モ形異ナルトキハ別種トスル説、是ナルベシ。ニベノ腹中ニ白鰾(ミヅブクロ)アリ。長サ七八寸、白色ニシテ厚サ二分バカリ、備前児島ニテ、フクト云。クチニモコレアレドモ小ナリ。白鰾ヲ製シテ膠トナスヲ、ニベト云。物ヲ粘スルニ甚カタシ。弓工(ユミヤ)コレヲ 用ユ。即、[逐][夷]ナリ。/〔附録〕墨頭魚 詳ナラズ。

【清国水産弁解】(山本由方著。1886年、農商務省水産局刊)黄花魚{清音「ホアンホアユイ」}広東新語に熱鱸の黄なるは黄花魚(くわふくわぎよ)、白(はく)なるは、白花魚なり。また、春に黄花といひ、秋に石首といふと、海魚考に、臨海志をひきて曰く。黄花魚と名づくるは是れ石首と水族志に曰く。通雅に石首魚の小なるを[毎](くわい)と云ひ、又小なるを黄花魚となづくと又本草啓蒙は[毎]と黄花魚と共に「ぐち」に充てたり。今之を実物に徴するに、亦石首魚属の小なるものにして即ち「ぐち」の類なりとす。本品はその尾上寸許の所より全身を腹割りとして鹹乾せるものにして、永く貯蔵に耐ゆべし。此物は広東省の産にして、その毎歳の出額は大約五万斤なり。江蘇浙江の両省および諛’省の中に文輸す。その価格は常に貴しといふ。(45丁裏〜45丁表。添付図は、参考上画像)

【清国水産弁解】(山本由方著。1886年、農商務省水産局刊)「白鮝ノ弁解」:白鯗:清音「パシャン」 和名「ほしうを」:本草綱目に曰く。諸魚の乾(かん)は皆鯗(しゃう)と為す。その美、石首にしかず。故に独り其称を得たり。白きものを以て佳しとす。故に白鯗と呼ぶと、又寧波府志に、石首魚は、塩を用い之を醃(ひた)し、曝乾して、白鯗というとあり。茲に示すは、浙江省寧波府の産なる鰌水(しうすい)を塩乾せしものとす。鰌水は、即ち、石首魚の一にして、樟州府志に、異物志に石首魚の小なるを鰌水と名づけ、次を春來と名づく。樟州には小なるもの多しとあり、揚州にては、これを鱸魚と称す。清国のこの魚族に乏しからざる。又、これを需要するものの少なからざる、実に、他魚に冠たり。黄魚鯗、魚鯗の如き皆この類なり。白鯗の寧波に産するもの毎歳約(おおむね)二千斤あり。概ね豚肉と煮て之を食す。各省一般の需要あり。荷づくりは笩*(かご)に入れ下等の麻縄を以て括る。……上巻36丁〜57丁に載る「魚鮝ノ弁解」「鹹黄魚鮝ノ弁解」「鹹米魚ノ弁解」「黄花魚の弁解」「白[固]子ノ弁解」「魚肝ノ弁解」「廣肝ノ弁解」には、「乾鮝」及び「白鰾」「魚膠」を含み、本草綱目、石首魚、及び[逐][夷]の項とあわせ読まれたい。

 

○参考(1)ニベ・イシモチ:[魚+免](7画):[椶(木→魚)](9画):[票]鰾(11画)。[逐][夷]=([逐](11画)、[夷](6画)):鮝[養(良→魚)](8画):(黄花魚)(石首魚)

○参考(2)ハラカ:[魚+宣](9画)。

○参考(3)(サメの加工品):鮫(6画)に記す。

 

204 [蛸(虫→魚)] [鮹]  JIS第2水準漢字code-8235/7243

0709

――

-

(46154) (一)サ_ウ・セ_ウ。(二)セ_ウ。 (一)(二)魚の名。 [邦]たこ。蛸。章魚。〔和漢三才図会、芸才、倭字〕、音梢、形似鞭鞘海魚、而倭以為章魚者非。

○邦名 (1)ヤガラ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)タコ。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(523) {所交反。平。太古。}……原本・頭注に、「所交―可支」とある。享和本、群書類従本は、この頭注の通りとしている。「可支反」なら「キ」と音を与えることになりそうだが、この注の意味がよくわからない。

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 龜貝類二百三十八 海蛸子 本草云、海蛸子{今案蛸正作。所交反。見唐韻。和名太古。俗用[虫+爪]字所出未詳。}貌似人裸而、圓頭也。長丈余者謂之海肌子。/小蛸魚 崔禹錫食經云、小蛸魚{和名知比佐木太古、一云、須留女。}/貝 日本紀私記云、貝{加比太古。}

○【下学集(元和3年板)】巻上 気形門第八 蛸タコ{一ニハ[虫+爪]

○【大和本草(宝永6年版・中村学園蔵書本)】海鰾ハイカノ甲也。薬ニ用ユ。……烏賊(その他10画)に掲載文を記載してあるので参照されたい。

○参考:蛸。章魚。[鱆](11画)。

 

205 [魚+局]

魚+局

0710

――

-

(46155) キヨク・ゴク。 魚の名。

○邦名 不詳。

 

206 [差(エ→魚)]

0711

――

*1

(46156) サ・シ_ヤ。 (一)つけうお。或は[魚+差](46391)・[美(大→魚)+昔](46575)・鮓(46076)に作る。 もと(46498)に作る。(二)大きい魚。

[参考][養(良→魚)](46211)は別字。

参考用例(1) (5画)(10画)(10画)(12画)(14画)
参考用例(2)  
参考用例(3)  

○邦名 スシ。邦魚名については不詳。

○差(サ)から作られるスシの文字のバリエーション(一例)

左図

画像0711-02

倭名類聚鈔巻第十六魚鳥類二百十二(十九裏)より *2

画像0711-03

類聚名義抄(観智院本)僧下九より。

上の字より、*1*3

画像0711-04

新撰字鏡(天治本)魚部第八十七より。

画像0711-05

新撰字鏡(天治本)魚部第八十七より。

*4

画像0711-06

新撰字鏡(天治本)魚部第八十七より。

*5

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(523) *4{庄’也反。魚米淹。}/鮓{巾差反。@志。}/*5{省略―同字項目に記載。}……*4[魚+差]。淹は、[月+奄]と同じで漬けること。魚と米とでつける「すし」については、鮨(6画)の項で記した。@(画像0711-04参照)の須’に似た判読不明字について、頭注★が付してあって、○七として、「巾[差(エ→ヒ)]―市羌’・@―須」(羌’は、ルの右側のハネに点「,」が入る字―画像省略)とある。この頭注に、異論をさしはさむわけではないが、「鮓」字の4行前に、類義文字の*4があるわけだから、「市差反」で「サ」と音を与えるのではいけないのだろうか。*5=[差/魚](*2と同じ。)

○【倭名類聚鈔】巻第十六 魚鳥類二百十二 *2{側下反。今案、即、鮓字也。}……同書「鮨(6画)」の項の解説文中からの抜粋。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下九 *1*3{今或正。側下切。スシ。魚スシ。}……画像0711-03図を参照。*1は表題字[差(エ→魚)]、*3は、[差(エ→魚)の本字]。

○参考:[魚+今](4画)。鮓(5画)鮨(6画)[魚+岑](7画)。[魚+差][差/魚](10画)。[差(エ→魚)]の本字(12画)

○参考:『日本語と辞書』第3輯(古辞書研究会編)中の「成簣堂文庫蔵『用心集』箚記其一」(高橋忠彦)59〜60p、及び「御伽草子と古辞書」(高橋久子)84〜85pの「鮓」字の検証と大きなかかわりを持つ。

 

207 [魚+〔竣−立〕] [駿(馬→魚)]

0712

――

(46157) サ。 [魚+少](45985)に同じ。

[魚+比]サヒ 魚の名。石首魚(8-24024:403)の異名。〔事物異名録、水族、石首〕博物志、[魚+比]、即石首魚。

【康煕字典】〔五音集韻〕蘇禾ノ切。音蓑。與[魚+少]同。魚ノ名。〔山海経〕姑射山ニ有。人ノ面。人ノ手。魚ノ身。見ハルレバ則風涛起ル。……この記述要確認??おそらく「[綾(糸→魚)]魚」、あるいは「陵魚」のことだろう。原典の誤りか、邦書版の誤りか? 

【和玉真草字引大成(文政三年増補版)】(第2巻166丁ウ)サ{かます。はぜ。}○左画像=0712-2(草書字*S

○邦名 (1)イワシ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)(2)オムラ(同「水産俗字解」)。(3)魚=ナガサリ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。/(4)カマス。(5)ハゼ。

○【和爾雅】(貝原益軒著。元禄7年。茨城大学図書館蔵本)巻六・龍魚門第十六 (12丁ウ)梭魚カマス{梭子魚。梭仔魚並同。}/(13丁オ)ナガサリ{河間府志ニ云 如梭ノ身長シテ而青シ。}……邦名(3)の出典。「ナガサリ」の訓みの用例を他に見ない。意味不詳、要検討。

 

208 [駸(馬→魚)]

0713

――

-

(461158) シン。 魚の名。

○邦名 イルカ。

○【下学集(元和3年板)】巻上 気形門第八  イルカ。シン。{玉篇ニ七尋ノ切シ}。

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】第二百八十一 魚部  {七尋切。シム}……siti-jinの反切は、sin。

○【倭玉篇(慶長15年版)】下 魚三百四十六  シン。イルカ。

○参考:ツクリの上の字形は、コに対し一が右に突き出た題字の字形が正字。JIS漢字では、侵のように、一の右端が突き出ないヨで表される。だが、(シン・すぐれてよい馬)に字形が残っているため、[駸(馬→魚)]として表わす。

○参考(イルカ):[魚+孚](7画)に用例記す.:鯆(7画)[魚+布](5画)。[魚+市](5画) 。[鮪](6画)。[魚+孚](7画)。[駸(馬→魚)](7画)。[魚+孚](7画) 。[鯆](7画)。[菊−クサカンムリ](8画)。[甫/寸](10画)。[既’/魚](11画)[普’](13画)

○参考(2):[鯨](8画)。

 

209 [魚+日/女]

0714

――

-

(46159) エン・オン。  なまづ。或は[魚+匽](46326)に作る。

○邦名 不詳。……[魚+晏](10画)と同義として、ナマヅ・トビウオだが、本字としての和訓の用例不詳。

○参考:[魚+夷](6画)。鯰(8画)[魚+匽](9画)。[魚+晏](10画)。

210 [魚+岑]

0715

――

-

(46160) シン。[魚+今](46012)に同じ。

○邦名 (1)ゴリ・ブリ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)カジカ(同「水産名彙」)(3)スシ(同「水産名彙」)。

○参考:鮓(5画)鮨(6画)

211 [魚+志]

魚+志

0716

――

-

(46161) シ。 魚の名。 

○邦名 不詳。

212 [魚+余]

魚+余

0717

――

-

(46162) ヨ。 魚の名。

○邦名 セイゴ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)

○参考:[魚+夸]との字形を検討すること。

213 [魚+妥]

0718

――

-

(46163) ダイ。 [魚+委](46214)に同じ。

○邦名 ウオガクサル。邦魚名不詳。

○以下、[魚+委]=[委]、[魚+星]=[星]に略す。

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(519) [委]{奴磊反。餘字。魚爛敗。}……do-raiの反切。頭注に、「餘―・爛敗―乃曽己祢太々礼留」。

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 龍魚體第二百三十七 [星]  野王案、{音乃。和語云、阿佐留。}魚肉爛也。[星]{音星。字亦作腥。和語云奈萬久佐之。}魚肉臭也。……顧野王。アサル=アザル([委]る)。魚肉が腐る。「広辞苑」の「あざる」の項の典拠文献に和名抄とあるのは、この部分と思われる。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 龍魚體(三十三丁) 、[星]  野王案、[委]{音乃。和語云、阿佐流。}{○仁徳紀に同じ「アサル」の訓読みの言葉あり。新撰字鏡には、[委]は、「魚乃曽己[禰(ネ→示)]太々禮留」と訓む、とある。}魚肉爛也。{○下総本は、[委]をに作る。那波道圓本も同じ。玉篇と合っていて是に似る。伊勢廣本は、[委]に作る。エキ齊按う。集韻亦は[委]に作る。その[委+魚]に作る(字が載る用例)は、いまだその書をしらない。しかし、旧本毛群部の麒麟の項では、[其+鹿][〈米/舛〉+鹿]に作り、偏と傍(旁)とを互いに入れ替え(互易)ており、この([委+魚])場合にも同じ方法がとられたのだろう。現在では、こうした偏と旁とを入れ替えて文字を作る手法は使われなくなった。新しく編まれた現在伝わる玉篇は、[委]に作り、魚敗(魚が腐る)也と書く。説文に魚敗はといい、爾雅に、肉が腐ることを敗といい、魚が腐ることをといい、その字はに作る。すなわち、魚を偏とする場合にはに作るのであって、[委]に作るは皆俗字であることがわかろう。―}[星]{音星。字亦作腥。和語云奈萬久佐之。}魚肉臭也。新編の爾雅に引く説文の「餒」を「」に作るのは誤りであって、爾雅釋文は説文を引き「餒」に作り、字書を引いて「」に作る。即ち、陸キによるところの説文は「」に作らずは明らかなことである。} [星]、{音星、亦作腥、奈万久佐之。}{○エキ齊按う。説文が云う[星]は、魚の臭い(なまぐさい)義である。(「説文繋伝」を撰じた徐[金+皆]ジョカイの兄で「説文繋伝」の補遺をなし、「徐鉉本」と一般的によばれる、その)徐鉉は、「今では俗に[星]に作り、桑經の反切」という。説文は、又、[月+生]は、犬肉の膏(アブラ)臭のことであるともいっている。一に曰く「不熟也」(生肉のことか?)。」といっている。徐は音を桑經の反切としていることから、同じ音に近いということだろう。ゆえに、あるいは[月+生]をもって[生]となすとするのだろう。慧琳音義(エリンオンギ)に「[月+生]は、また、[生]に作るとあるのが、このことであろうか。[生]或は[星]に作る。ゆえに、[月+生]の字は、亦、経典では皆「腥」に作るようだ。然るに、説文には、また、「腥」の字をのせていて、〈云星見食豕、令肉中生小息肉也、〉(幼豚の肉中の斑点のようになった脂肪分が星のように見えることを言っているのだろうか。)、徐が示した音は「蘇佞(so-nei)切」とある。周禮(シュライ)の内[雍/食](ナイヨウ)に云う。「豕の盲[低(イ→目)](ぼうし)にして交睫(こうしょう)なるは腥なり」(豚の目つきが遠くを見るような細目で、睫(まつげ)がくしゃくしゃに交じり合っているようなものは、その肉は腥であって臭味があって“食うべからざるもの”である)。周禮内則も同じようにいっている。正義(「五経正義」でよいのだろうか)に「腥、謂肉結如一レ星」(肉のなかに星のような斑点が結んでいるようなもの、というような意味か、よくわからない。鄭玄の注に「腥は当に星に為るべし。聲の誤りなり。肉に米の如きものの星に似たる有り」とある。要検討。肉のシモフリ状の脂肪のことをいうのか。いずれにしても、王等に献ずるおいしい料理にするための材料からはのぞかなければならない食材ということなのだろう。)といっているのがこれであろう。則ち、[月+生]と腥の二字の音義は同じではなく、「腥」という字をもって「魚臭」の字と為すのは適切ではない。又、エキ齊按う。急就章に、「肌、[月+弱]、脯、[月+昔]、魚臭、腥」とある。顔師古の注に、「腥は魚の臭」をいう。玄応音義は、通俗文を引いて、「魚の臭は腥をいい、[狗(句→假−イ)]臭は[繰(糸→月)]をいう」とある。慧琳音義は、「腥は、魚の腥、穢(けがれ)であることは、集訓に見ゆ」と云う。以上の用例に見るように、源君は、[星]と腥を同字としたのだろう。}{下総本に「和名」二字あり、廣本に「和語云」三字を作る。勝に似る。}魚肉臭也、{○今本の玉篇は、[生]に作り、「魚臭也」という。顧氏(玉篇撰者・顧野王)は、之によって、「肉」の字は、恐らく衍字(誤って挿入された無用な文字)であろう。}

  ……「周禮(周礼)内[雍/食]」=王および后、世子の膳羞の割亨(烹)煎和のことを掌り、體名肉物を辧([辧(刀→リ)]・弁)じ、百品味の物を辧ず。「急就章」=中国の古い(元代か)初等教科書のような手習い本。「似勝」=意味がわからない。

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】第二百八十一魚部(1091) {奴罪切。タイ反。アサル。}

○【倭玉篇(慶長15年版)】下 魚三百四十六(409) ダイ{アザル(ヽ)。魚敗也。}

○参考:[魚+生](5画)。[魚+委](8画)。[魚+星](9画)。[繰(糸→魚)](13画)。

 

214 [魚+辛]

魚+辛

0719

――

-

(46164) シン。 [魚+草(早→辛)](46438)〔11画〕に同じ(魚の尾が長い)。

○邦名 不詳。

 

215 [魚+孚] [孚]

0720

――

[]

(46165) (一)フ。 〔集韻〕芳無切。〖虞〗平聲。(二)ホ_ウ・フ。〔集韻〕普溝切。〖尤〗平聲。(三)フ_ウ・ブ。〔集韻〕房尤切。〖尤〗平聲。  (一)蘆[]は、魚の名。(二)(三)いるか。 

【[][市]】フハイ。いるか。海豚の異名。  〔太平御覧(九百三十八巻)、鱗介部十一、[][市]魚〕魏武四時食制云、[孚][市]魚黒色、大如百斤豬、黄肥不可食、数枚相随、一浮一沈、一名数常見首、出淮及五湖。

参考字形

:[(篆)][][(本)]

[][][犭屯]

[]=豨’

:[普’][甫/寸][][] (ケイ・ゲイ)

 

参考用例(1)

【説文解字】(徐鉉校訂「大徐本」汲古閣本)(WLDB):@〔65〕[(篆)]:魚也。出 樂浪潘國。从魚[(本)−魚]聲。博蓋切 。/A〔66〕[(篆)]:魚名。出楽浪潘国。从魚匊聲。一曰[]魚出江東。有両乳。居六切。

【説文】(「説文解字注十五巻」TDB):@〔65〕[(篆)]:[市(本)]魚也。出樂浪潘國。从魚[(本)−魚]聲。{博蓋切。十五部}/〔66〕A[]篆[]魚也。出 樂浪潘國。从魚匊聲。{居六切、三部}一曰[]魚出九江。{九江鉉本作江東、爾雅音義引無東、皆非也、}有両乳。一曰溥浮。{上一曰別其義[]、即今之江豬、亦曰江豚 。樂浪潘國與九江同、産此物、云一曰者、載異説、殊其地也。下一曰、猶今言一名也。溥浮俗字作[甫/寸]、[]、普姑 、覆浮ニ反。[甫/寸]一作[普’]。呉東門謂[普’][]門、即今蘇州門也 。釈魚[既’/魚]是[逐]亦江豚之類也。謂之海豚}……釈魚[既’/魚]是[逐]:[既’/魚](11画)。

【廣雅】(釋魚)[甫/寸][]、[匊]也。

【広雅疏証】(王念孫)(光緒五年淮南書局重刊本)(釋魚)[甫/寸][]、[匊]也。{説文、[]魚也。出樂浪潘國、一曰、[]出九江、有両乳、一曰溥浮、與[甫/寸][孚]同。玉篇、[甫/寸][孚]魚、一名江豚、欲風則踊。[甫/寸]、一作鯆、晉書夏統傳、初作鯔[烏’]躍、後作鯆[孚]引、何超音義引埤蒼云、鯆[孚]、[匊]魚也、一名江豚、多膏少肉。[甫/寸][孚]之転語為[孚][市]。説文、[市]、魚也、出樂浪潘國。御覧引魏武四時食’制云、[孚][市]魚黒色、大如百斤豬、黄肥不可食’、数枚相随、一浮一沈、一名敷常見首、出淮及五湖。郭璞、江賦云、魚則江豚海豨。李善注引南越志云、江豚似豬。本草拾遺云、江[豬(者→屯)]状如[豬(者→屯)]、鼻中為声、出没水上、舟人候’之、知大風雨。案即今之江豬是也。海豬以江豬而大、一名奔[孚]。江賦注引臨海水土記云、海豨豕頭、身長九尺。本草拾遺云、海[豬(者→屯)]生大海水中、候’風潮出没、形如[豬(者→屯)]、鼻中為声、脳上有穴、噴水直上、百数為羣。酉陽雑俎云、奔[孚]一名[]、大如船、長二三丈、色如鮎、有両乳在腹下、頂上有孔通頭、気出嚇々、作声必大風、行者以為候’。案説文、[]有両乳、奔[孚]有両乳在腹下、則即[匊]魚也。奔[孚][甫/寸][孚]、語之転耳。郭璞注、爾雅、[既’/魚]是[逐]云、尾如[匊]魚、鼻在額上、能作声、少肉多膏。情状與江豚相近。蓋亦[匊]之類也。[匊]、各本譌作[菊]、惟影宋本不譌。}

【玉篇】(大廣益会玉篇三十巻・張氏重刊宋本玉篇)(TDB)@(2-3)[]{居六切。魚也。}[竹冠菊’]{同上}/A(3-6){夫禹切。大魚也。}/B(3-9)[甫/寸]{普乎切。[甫/寸][孚]魚。一名江豚、欲風則踊。}[]{覆浮切。[甫/寸][孚]也。}/C{七尋切。魚名。}

【廣韻】(五巻・張氏重刊宋本廣韻TDB)@上平聲巻一:{遇倶}虞第十{模同用}:十○虞{遇倶切。}○敷{芳無切。三十六}[孚]{魚名}/十一○模{莫胡切。十二}…○逋{博孤切。十三}鯆{鯆[孚]魚名、亦作[布]。}…○[禾専]{普胡切。十二}鯆{魚名、又江豚、別名天欲風則見。}鱄{上同}A上聲巻三 :九○麌{虞矩切。三}…○甫{方矩切。十九}脯…鯆{大魚}

参考用例(2)

○【證類本草】(政和本草:WDB)巻第二十:蟲魚部:二十三種陳蔵器餘:20-8-56b1:海豚魚:味鹹、無毒。肉主飛尸、蠱毒、瘴瘧、作脯食之。一如水牛肉、味小腥耳。皮中肪、摩惡瘡、疥癬、痔疾、犬馬[症〈正→咼〉]疥、殺蟲。生大海中。候風潮出。形如[犭屯]鼻中聲、脳上有孔、噴水直上、百數為羣。人先取得其子、繋著水中、母自來就而取之。其子如蠡魚子、數萬為群、常隨母而行。亦有江[犭屯]、状如[犭屯]、鼻中為聲、出没水上、海中舟人候之、知大風雨。又中有曲脂、堪摩病、及樗博即明、照読書及作即闇、俗言嬾婦化為此也。

○【文選】(嘉靖金臺汪諒校刊本:TLDB)魚則江豚{徒昆}海豨{喜}、叔鮪{于軌}王{音。南越志曰。江豚似豬。臨海水土記曰。海豨、豕頭、身長九尺。郭璞山海經注曰。今海中有海豨、體如魚、頭似豬。爾雅曰。[各]、[叔]鮪。郭璞曰。鮪屬、大者王鮪、小者叔鮪。王鱣之大者、猶曰王鮪。[各]音洛。}[骨]{骨}鰊{練} [滕(月→魚)]{特登}鮋{直流}、鯪{陵}鰩{遙}[侖]鰱{音連。山海經曰。[骨]魚、其状如魚而鳥翼、出入有光、其音如鴛鴦。郭璞曰。音滑。舊説曰。鰊似[黽]。山海經曰。[滕(月→魚)]、其状如[厥]。居逵切、蒼文赤尾。郭璞曰。舊説曰、[由]似[單]。楚辭曰。鯪魚何所出。王逸曰。鯪魚、鯪鯉也。山海經曰。鰩魚、状如鯉。又曰。[侖]魚K文、状如鮒、食之不腫。郭璞曰。音倫。廣雅曰、[連]、[與]也。}……鮪(6画)にも記す。

○邦名 イルカ。(1)ウルメ(集覧「水産俗字 集」)。(2)ウルメイワシ(同「実験活用水産宝典」)。

○参照 (1)イルカ:[魚+布]フ(5画)。[魚+市](5画)。[鮪](6画)。鯆(0732-46177)(7画)。[駸(馬→魚)](7画)。[菊−クサカンムリ](8画)。[甫/寸](10画)。[既’/魚](11画)[普’](13画)。

○参照(2)クジラ:[鯨](8画)。

○参照(3)ウルメ(イワシ):[鰮](10画)。

○参照(4)マグロ・シビ:[鮪](6画)。

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 [布]  臨海異物志云、[布]、{浮布二音、和名伊流可}、大魚色黒一浮一没也。兼名苑云、一名鯆[畢]{甫畢音}、一名[ 敷][常]{敷常二音}、野王案一名江豚。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部  [孚][布 ] 臨海異物志云、[孚][布]、{浮布二音、伊流賀。}{○下総本有和名二字、新撰字鏡鮪伊留加 、古事記出雲風土記作入鹿、}大魚色黒一浮一没也、{○臨海異物志無伝本、按太平御覧引魏武四時食制云、[孚][布]魚黒色、大如百斤猪、黄肥不可食、数枚相随、一浮一沈、與此所引同、按廣韻鯆字注云、鯆[孚]魚名、亦作[布]、晋書廣雅云、[甫/寸][孚][菊]也、而[甫/寸]亦鯆字異文見廣韻、則[孚][布]似倒、然四時食制作[孚][市]、則與此略同、説文[市]魚也、出楽浪番国、}兼名苑云、[孚][布]一名鯆[畢]、{甫畢二音}、一名[敷][常]{敷常二音}、{○下総本 無[孚][布]二字、廣本同、按[甫][畢]、[敷][常]二名諸書無見、太平御覧引四時食制 云、「[孚][市]一名敷常、則[敷][常]、敷常俗字、}野王案一名江豚、{○今本玉篇魚部 云[甫/寸][孚]魚、一名江豚、欲風則踊、此所引即是、晋書夏統傳作鯆[孚]、何超音義引埤蒼云、鯆[孚][]魚也、一名江豚、多膏少肉 、説文[]魚也、出楽浪番国、一曰[菊’]、出九江、有両乳、一曰溥浮、則[甫/寸][孚][鯆][孚][孚][布][孚][市]皆溥浮之俗字、酉陽雑俎奔[孚]亦語之転耳、證類本草引陳蔵器云、江[猪(者→屯)]状如[猪(者→屯)]、鼻中為声、出没水上、海中舟人候之、知大風雨、按江[猪(者→屯)] 即江豚、出没水上即異物志之一浮一没也、又有海、一名海[豕+屯]、一名奔[孚]、江賦」云、江豚海、注引臨海水土記云、海豕頭、身長九尺 、陳蔵器云、海[豕+屯]生大海水中、候風潮出没、形如[豕+屯]、鼻中為声脳上有孔噴水直上、百数為羣、酉陽雑俎云、奔[孚]一名、 大如船、長二三丈、色如鮎有両乳在腹下、頂上有孔通頭気出、嚇々作声必大風、行者以為候、} 

○【古事記】(岩波日本古典文学大系『古事記祝詞』古事記:倉野憲司校注)  中巻・仲哀天皇・忍熊王の反逆(233頁〜)「入鹿」テキスト:故、建内宿禰命、率其太子、爲將禊而、經歴淡海及若狹國之時、於高志前之角鹿、造假宮而坐。爾坐其地伊奢沙和氣大神之命、見於夜夢云、以吾名欲易御子之御名。爾言祷白之、恐、隨命易奉、亦其神詔、明日之旦、應幸於濱。獻易名之幣。故、其旦幸行于濱之時、毀鼻入鹿魚、既依一浦、於是御子、令白于神云、於我給御食之魚。故、亦稱其御名、號御食津大神。故、於今謂氣比大神也。亦其入鹿魚之鼻血。故、號其浦謂血浦。今謂都奴賀也。

○同・訓み下し文(235〜237p):故、建内の宿禰の命、其の太子を率(ゐ)て、將禊せむと爲(し)て、、淡海及若狹國を經歴(へ)し時、高志(こし)の前(みちのくち)の角鹿(つぬが)に、假宮(かりみや)を造りて坐さしめき。爾に其地(そこ)に坐す伊奢沙和氣(いざさわけの)大神の命(みこと)、夜の夢(いめ)に見えて云(の)りたまひしく、「吾が名を御子の御名に易(か)へまく欲し。」とのりたまひき。爾に言祷(ことほ)きて白ししく、「恐(かしこ)し、命の隨(まにま)に易へ奉らむ。」とまほせば、亦其の神詔りたまひしく、「明日の旦(あした)、濱に幸(い)でますべし。名を易へし幣(まひ)獻らむ。」とのりたまひき。其の旦(あした)濱に幸行(い)でまし時、鼻毀(やぶ)りし入鹿魚(いるか)、既に一浦(ひとうら)に依れり。是に御子、神に白さしめて云りたまひしく、「我に給御食(みけ)の魚(な)給へり。」とのりたまひき。故、亦其の御名を稱(たた)へて、御食津(みけつ)大神と號(なづ)けき。故、今に氣比(けひの)大神と謂ふ也。亦其の入鹿魚(いるか)の鼻の血(くさ)かりき。故、其の浦を號けて血浦と謂ひき。今は都奴賀(つぬが)と謂ふ。

○【古事記伝】(筑摩書房本居宣長全集第十一巻)三十一之巻:○毀鼻入鹿魚毀鼻は、波那夜夫禮多流(はなやぶれたる)と訓べし。【また加氣多流(かけたる)とも訓べし、】此事は次に云む、入鹿魚(イルカウヲ)は和名抄に、[孚][布]臨海異物志ニ云ク、[孚][布]ハ}大魚ナリ色黒シ一ハ浮一ハ没也、兼名苑ニ云ク、[孚][布]一名ハ鯆[卑]、一名ハ[敷][常]、野王案ニ一名江豚ト、和名伊流可(イルカ)、出雲風土記嶋根ノ郡南ノ入海所在雑物ノ中ニ入鹿(イルカ)あり、字鏡には鮪ハ伊留加と記るせり、貝原氏、海豚(イルカ)を此ノ魚に当テ、長さ六尺許(バカリ)色黒く形海鰌(クヂラ)の如く又豚に似たり、ひれありて足に似たり尾に岐(マタ)あり鱗なし、觜は[箴]魚(サヨリ)の如く上下共に長くして尖(トガ)れり、皮厚く油多き魚なりと云り、【今漁人に問ヒこころみけるにも、此ノ説の如く云り、さて漢籍を考るに、[孚][布]も江豚も海豚も一ツ物と聞えたり、】

○【古事記伝】(その続き)○既依一浦(スデニヨレリヒトウラニ)【真福寺本以下略】既(スデニ)は、太子の至リ座るより先(サキ)に早既(ハヤスデ)になり、一浦(ヒトウラ)とは浦に満(ミチ)たるを云、【俗に浦一杯(ウライツハイ)と云意なり、】……中略……さて、かく此ノ魚の依れるは、大神の太子に、御饌(ミケ)の料に獻り給へるにて、即チ是レかの易名(ナカヘ)の幣(ヰヤジリ)の物なり、さて今此魚の悉く鼻の毀(ヤブ)れたる所以(ユエ)は、へアトには見えず、】 さるは古に此魚を捕るには、大神の既に捕(ト)らしめて獻り給ふ由なり、【 その令レ捕(トラシメ)給ふは、幽事(カミゴト)なれば、人の目には見えず、】さるは古(へ)に此ノ魚を捕(ト)るには、鼻を衝(ツキ)てぞ捕(トリ)つらむ、故レ鼻の毀(ヤブ)れてはありしなり、【甕栗ノ宮ノ段ノ御歌に、志毘都久(シビツク)とあり、万葉の歌にも然よめり、鮪(シビ)は今ノ世にも口(クチ)を衝(ツキ)て捕(トル)と云り、入鹿はいかにしで捕ルにかしらねども、此ノ段を以て思ふに古必(ヘヅ)鼻を衝(ツキ)て捕しなるべし、紀ノ国の熊野浦の漁人の語りけらくは、此ノ魚多くは長サ八九尺ばかりあり、中に最大なるは一丈二三尺ばかりなるもあるなり、入鹿の千−本づれと云て、頭をもたげておびたゝしく群来(ムレク)る物なり、逃(ニグル)こといと早くして、船をいかに早くこぎても追及(オイシキ)がたし、故レこれを捕るには、毛理(モリ)と云物に、夜那波(ヨナハ)とて四十尋の縄をつけ、其ノ端に泛(ウケ)を付て、その毛理を投る、此ノ毛理を負ながらなほにぐるを、又二の毛理を投て捕ルなり、さて一ツ捕れば必二ツ捕らるゝなり、其ノ故は、一ツが毛理を負て逃るに後れぬれば、友をあはれむにやあらむ、群(ムレ)の内の今一ツ必後(オク)れて遠くは去らざる故に、それをも捕ルなりと語りき、抑毛理は虚空(ソラ)へ高く投上げたるが、魚の上(ヘ)に至りてそらより、まくだりに、落降りて其魚を衝(ツク)物なり、かくて入鹿は、鼻の、上に向ひだればその鼻を衝(ツク)べきなり、然らざれば、毀鼻と云こと由なし、谷川氏が、蓋シ此ノ魚鼻向テレ上ニ而有レ声故ニ云毀鼻トと云るは心得ず、こはから書に海豚ハ、鼻在脳上ニ作ス声ヲ吹クニ水ヲ直ニ登ルと云るに依て云るなれど、其(ソ)は凡て此ノ魚の常なれば分て殊に、毀鼻と云べきに非るをや、さて鼻毀と書ずして、毀レ鼻と書るは、鼻を毀りて捕たる由なり、然れども、今太子の見賜ふところは、既に鼻の毀れたるなれば、ヤブリ夕ルとは訓マず、ヤブレ夕ルと訓べきなり、】中略。

【古事記伝】(その続き)○御食之魚は、美氣能那(ミケノナ)と訓べし、【又魚を、麻那(マナ)とも訓べし、上巻に、真魚(マナ)とあると同じければなり、】大神の御饌(ミケ)の料の魚なり、【 又御食(ケ)を、太子へ係(カケ)て、太子の御饌の料の魚と見ても通(キコ)ゆ、天皇は凡て己レ命の御うへにも御某(ミナニ)と詔ふこと常なれば、太子も准へて御自(ミミヅカラ)も御気(ミケ)と詔ふべし、されど於レ我(アレニ)とあるよりのつゞきを思ふに、なほ大神の御食の魚と見る方まさるべし、】魚は、食ノ料にするをば、凡て那(ナ)と云例なり、【 此事上に既に出ヅ、】さて如此我(カクアレ)に御食の魚(ナ)給へりとある、一言に、大神の御恵(ミメグミ)を深く辱(カタジケナ)み喜(ヨロコ)び謝(マヲ)し賜ふ意おのづから備(ソナ)はりて聞ゆ、【 古語は簡(コトズクナ)にして、かく美(メデタ)がりき、かの書紀の漢(カエア)ざまの潤色(カザリ)の語の多くうるさきと思ひ比(クラ)ぶべし、】

出雲国風土記(岩波『日本古典大系』第2巻)嶋根郡:山川河海:(140p) 凡南入海所在雜物、入鹿、和爾、鯔、須受枳、近志呂〔{[制]也}〕、鎭仁〔{海鯽也}〕、白魚、海鼠、縞鰕、海松等之類、至多、不可盡名、

○【新撰字鏡(天治本)】(521-6-1)鮪{榮美’反。上(聲)。伊留’加。}→[鮪](6画)を見よ。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下七(7〜8行)[孚][布]{浮布二音}鯆[畢]{甫畢 二音 [孚][布]}[敷][常]{敷常二音 [孚][布]一名??}/僧下一一(5行) [市]{音沛。魚名食之 @人。イルカ。}/[鹿’]{イルカ。イハシ。}/[支]{イルカ}……[市]:音はハイ。「食之殺人」は、山海経・北山経(下記用例参照)が出典だろう。「之ヲ食ラワバ人ヲ殺ス」と訓む。@ =[当’+攵]は、「殺」の俗字。

○【伊呂波字類抄】伊(動物) 江豚{イルカ。} 鯆[魚+孚] [魚+孚][魚+布]{臨海異物志云。伊流可。大魚也。黒一浮一没也。} 鯆[魚+畢] [魚+敷][魚+常]{巳上同}。 

○【山海経】北山経 :敦水流れて東流し、鴈門に注ぐ。水中に[市][市](カク註:音沛、未詳。或作鯆。)の魚が多く、これを食らうと人を殺す。

○【下学集(元和三年板)】巻上、気形門第八(28オ―7行)(イルカ/シン){玉篇ニ七尋ノ切シ}

○【書言字考節用集】(享保2年版:増補合類大節用集) 気形門[イ][伊](二十ウ2行〜8行)魚(イヲ){出宇}/[孚][布](イルカ){[異物志]大魚色黒者}海豚魚(同){並見タリ[本草]} 江豚(同){[玉篇]} 鯆[畢](同){[順和名]} (同)//[ウ][宇] 〔33丁オ・7〜8行〕 鰮(ウルメ) [孚](同) [老](同){未詳}……邦名中、「水産俗字集」を引用して[孚]を「ウルメ」と訓みを与える一例である。「イルカ」と「ウルメ」とは[孚]をいう字形の訓みを共有するには、中国起源の字義からは説明しずらい。イヲ⇔ウヲ、イロコ⇔ウロコのイウの共有 あるいは、「大魚」の字義の共有に影響されて、イルカ⇔ウルカ、ウルメ(⇔)ウルカの混乱がイロハ別整理書写の過程で生じたという推測はできそうだ。 あるいは、「大魚」の字義の共有によって、イの音のつながりによって、鮪(イ、シビ、大魚)⇔鮪(イルカ)という変異も生れるのかもしれない。

○【改正増補 早引節用集 全】(文化十二年刊記) [い]〔三丁オ4行〕 煎海鼠(いりこ)。[少](いさゞ)。江豚(いるか)。鰯(いわし)。鱗(いろこ)。[虔](いせうを)。[う]〔五十六丁オ6行〜同ウ1行〕 鱗(うろこ)。鰭(うるめ)。鰻(うなぎ)。江豚(うるか)。鰔(うぐひ)。 

 

○参照 (1)イルカ:[魚+布]フ(5画)。[魚+市](5画)。[鮪](6画)。鯆(0732-46177)(7画)。[駸(馬→魚)](7画)。[菊−クサカンムリ](8画)。[甫/寸](10画)。[既’/魚](11画)[普’](13画)。

○参照(2)クジラ:[鯨](8画)。

○参照(3)ウルメ(イワシ):[鰮](10画)。

○参照(4)マグロ・シビ:[鮪](6画)。

 

216 [輒(車→魚)]

0721

――

-

(46166) テ_フ。 (1)婢魚は、たなご。〔廣韻〕、婢魚、即’衣魚。(2)ほしうを。塩に漬けないで乾した魚。鮑。〔集韻〕、膊魚、不鹽也、漢書、鮑千鈞、顔師古読。

鮑】て_ふは_ふ。ほしうを。ひらいたうを。史記、[魚+取]鮑に作る。

○邦名  魚名不詳。……タナゴ。ホシウオ。シラウオ。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一一 {土垢反。自〔目?〕魚。カラカコ。/[魚+取]。{今正。音輒。[魚+専’]魚}}……土はto、do。垢はkou。輒の音はチョウ(テフ)。参考:[車+取]は輒の俗字(【漢語林】)。「自魚」或は「目魚」とは何か? 倭玉篇に白魚とあるものとの関連があるのか?

○【倭玉篇(篇目次第)】第二百八十一魚部(1087) {竹渉切。テフ反。白魚。}

○【倭玉篇(夢梅本)】魚第三十一(205-6) 膊魚也。塩漬魚也シホツケノウヲ

○参考:[魚+取](8画)。 

 

217

魚+折

0722

――

-

(46167) セツ・ゼチ。[魚+公]は、魚の名。

○邦名

 

218 [魚+系][鯀]

0723

――

JIS

(46168) コン。 (1)魚の名。(2)大きい魚。(3)人名。

○邦名 (1)シイラ(下記用例参照)。

○この魚名としてわが国ではほとんど登場しない字が、なぜJIS第二水準文字に含まれているのか謎である。「人名」としての中国古代史上で、夏の国の禹王の父の名前(「漢語林」)というが、この処刑された「四凶の一人」とする人物のために、JIS漢字に残した字ともおもわれない。とはいえ、古辞書にも「コン」の音を持つ字と して載る。「大魚」=コンの関連字として整理の必要あるだろう。要検討。

○【新撰字鏡(天治本)】[魚+糸]{古夲反}……系のツクリの字形のアタマの「ノ」がなく、明らかに「糸」を書く。[魚+糸]は、大字典に含まれず、反切の音から、「系」をツクリとする 「コン」を音とする鯀と同字のバリエーションの一つとしてみなした。

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】第二百八十一 魚部 鯀{古本切。コン。シイラ}。(587ページ)

○参考:[魚+玄](5画)。

 

 

219 [魚+邑]

0724

――

-

(46169) エ_フ。 [魚+奄](12-46244)に同じ。[邦]すずき。〔字鏡集〕*、同鱸。

○邦名 (1)しおうお(『本朝食鑑』島田訳)。(2)スズキ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。   

○【新撰字鏡(群書類従本)】  於業反。埋蔵便腐臭。須々支。……オウ(反)。蓄えておいたサカナが腐臭を発するということか。とても臭そうだ。「ススキ」の義は、諸橋大漢和に引く「字鏡集」に示す魚名のスズキなのか。腐臭とは全く関係なく魚名か、これだけではよくわからない。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一三  於[車+取]反。腐臭。

○諸橋大漢和用例中、〔王先謙補注〕玉篇、、塩漬魚也。とある。

○【本朝食鑑】(島田勇雄訳。東洋文庫5冊中の4) 鱗部之一 鮎。しおうお。これは昔の塩漬・塩塗・煮塩の類である。―中略―今遠方より淹しおづけにしてくるものの大半は、鮓すしにすると佳い。―以下略。

○【同上】(同上) 鱗部之三 塩魚 ―前略―[酉+奄]えん・鹹かんよう・[魚+建]けんは、いずれも塩魚のことである。[酉+奄]は、淹とも書く。*は、[淹−奄+邑]にも作る。音は葉よう。[魚+建]、音は蹇けん。(356ページ)

 

220 [魚+良]

0725

――

-

(46170) ラ_ウ。 [魚+豈]は、蟹の雄。

《邦》あぢ。竹筴魚。鰺。 

○邦名 (1)アジ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)マアジ(同「日本動物図鑑」)。

【新撰字鏡(天治本)】

○【新撰字鏡(天治本)】魚部第八十七(521) {魚當反。魚[月+二/日]。世比。}……《頭注》○二 魚當―魯當。[月+二/日]=脂。「セヒ」は何か?セイゴとの関係はいかに。

○【新撰字鏡(享和本・群書類従本)】魚部第七十一 {魯當反。魚脂。世比。}……脂(ヒ→上)。

○【下学集(元和3年板)】巻上 気形門第八(29オ) 鯵アヂ。/アヂ

○参考 (1)(アジ):[鰺](11画)。[魚+郎](9画)。

○参考(2)(セイゴ):[夸](6画)。

 

221 [魚+更]

0726

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(46171) (一)カ_ウ・キ_ヤ_ウ。(二)カ_ウ・キ_ヤ_ウ。 (一)(二)(1)魚のほね。もと[魚+〔丙ウエ/攴シタ〕](12-46348)に作る。(2)ほねがのどにささる。(3)わざはひ。わずらひ。(4)かたい。なほい。ただしい。

参考

画像:logo-mana0960kou-2.gif/

[魚+〔丙ウエ/攴シタ〕](12-46348)

画像:logo-0960kou-setsumon.jpg

『説文解字注』(第1-15篇/段玉裁注)(王念孫序。嘉慶20年、経韵樓版本)(WLDB):第11冊:11篇下文二重四:魚:133コマ

○邦名 ノキ。ノギ。魚の骨。

【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部第十八:龍魚体百九: 唐韵云、鯁 、{音耿、乃岐、}{○按廣韻、鯁、古杏切、在三十八梗、耿即三十九耿字、之以耿音鯁誤、下総本在和名二字、按今俗譌呼登計、}魚刺在喉、又骨鯁也、{○廣韻無魚字、按説文云、[丙/攴]、魚骨也、又云、[骨+(丙/攴)]食骨留咽中也、二字本不同、後世多借[丙/攴]為[骨+(丙/攴)]、廣韻骨鯁下、謇諤之臣四字、此節引、按又骨鯁也転注之義、非此義、是四字宜刪去、}

○【古事記】(岩波書店「日本古典文学大系1」「古事記 祝詞」)爾に其大神に、備つぶさに其の兄の失せにし鉤を罸はたりし状さまの如く語りたまひき。是を以ちて海わたの神、悉に海の大小魚とほしろくちひさきうをどもを召び集めて、問ひて曰ひしく、「若し此の鉤を取れる魚有りや。」といひき。故、諸ども白ししく、「頃者このごろ、赤海[魚+即]魚たひ、喉のみどのぎありて、物得はずと愁ひ言へり。故、必ず是れ取りつらむ。」とまほしき。是に赤海[魚+即]魚たひの喉のみどを探れば、鉤有りき。即ち取り出でて、洗ひ清まして、火遠理命ほをりのみことに奉りし時に、其の綿津見大神誨へて曰ひしく、「此の鉤を、其の兄に給はむ時に、言りたまはむ状さまは、『此の鉤は、オボチ、ススヂ、マヂチ、ウルヂ。』と云ひて、後手しりへでに賜ヘ。―以下略。」(140〜141頁)

○【古事記伝(岩波文庫版)】「神代十五之巻・綿津見宮の段」若有取此鉤魚乎モシコノツリバリヲトレルウヲアリヤトトヒタマフ。故諸魚白之カレモロ\/ノウヲドモマヲサク。頃者赤海[魚+即]魚コノゴロタヒナモ。於喉ノミトニノギアリテ。物不得食愁言モノエクハズトウレフナレバ。―中略―○は、能義阿理ノギアリと訓べし。和名抄に、唐韻云、魚刺在。和名乃木ノギとあり。【又字書に、骨不也とも注せり。】……[鯛]の項参照。

○【倭名類聚鈔】  唐韻云{音耿和名乃木}魚剌在喉又骨也。「唐韻にいう。音はコウ、和名はノキ。魚の骨が喉に刺さるさま、または刺さった骨のこと」。

○【伊呂波字類抄(日本古典全集版)】一伊(7-3) {イヲノホネ}。/[肪(方→更)]{同}。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下六 {音耿。アキ。イヲ?。魚ノヽキ。魚剌在喉。或[月+更]。魚骨。アラシ。ムスフ。}……「アラシ」は、「アヲシ」か。「ムスフ」は「ムセフ」とも読める。要検討。

○【倭玉篇(篇目次第)】第二百八十一魚部(1088-4) {キヤウ音。イヲノホネ。魚骨。アラシ。ナヤム。カクス(?「ク」のヨミ要検討)。クルシ(?「ク」のヨミ要検討)。}

○【倭玉篇(夢海本)】慶長10(1605)年刊(203-1) カウ{魚骨也。ウヲノホネ。}

○【倭玉篇(慶長十五年版)】魚三百四十六(406-5) キャウ{アラシ。イヲノホネ。ナヤム。カクス。クルシ。}

○【易林本節用集】 イ・気形 イヲノカシラ。

 

222 [魚+廷]

魚+廷

0727

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-

(46172) (一)テイ・ヂ_ヤ_ウ。(二)テイ・チ_ヤ_ウ。 (一)ぎぎ。魚の名。[魚+亭](46320)に同じ。(二)まるざかなのしほから。

○邦名 不詳。

223 [魚+酉]

魚+酉

0728

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(46173) ソ。 よみがへる。[魚+禾](8-25236)に通ず。 

○邦名 不詳。

224 [魚+吾]

魚+吾

0729

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-

(46174) ゴ。[魚+呉](46129)に同じ。 

○邦名 (1)コチ(集覧「日本動物図鑑」「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)コイチ(同「水産名彙」)。

 

224-02 [魚+呉]

0638

――

再掲

(46129) [魚+呉](6画)に載せる。

 

 

225 [魚+求]

0730

――

-

(46175)キ_ウ・グ。魚の名。

○邦名 (1)メバル(集覧「水産宝典・大日本水産会編」)。(2)カナガシラ・ヤナギウオ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。(3)メジカ・メジカマグロ(同「水産名彙」)。

○参考 [魚+九](45962)

 

226 [魚+延]

0731

――

-

(46176) (一)セン。(二)テン。(三)シン  (一)(二)(三)魚のひしほ。しほから。 魚醤 

○邦名  用例不詳。

○【倭玉篇(篇目次第)】第二百八十一魚部(1084-2) {式廷切。セム反。イヲヒシホ。}

○【倭玉篇(夢梅本)】魚第三十一(205-3) セン{魚醤。ウヲノヒシホ。}

 

227 [魚+甫][鯆]  JIS第2水準:Code:8236

0732

――

JIS

(46177) (一)ホ・フ。(二)フ。(三)ホ・フ。 (一)(1)いるか。[専](46361)に同じ。(2)魚の名。尾に毒がある。或は[ 逋](46461)に同じ。(3)[布](46062)に同じ。(二)大きい魚。(三)魚の名。《邦》さば。〔和玉篇〕 

参考用例(1)

【玉篇】(大廣益会玉篇三十巻・張氏重刊宋本玉篇)(TDB)(3-6)鯆{夫禹切。大魚也。}

【廣韻】(五巻・張氏重刊宋本廣韻TDB)@上平聲巻一:{遇倶}虞第十{模同用}:十○虞{遇倶切。}○敷{芳無切。三十六}[]{魚名}/十一○模{莫胡切。十二}…○逋{博孤切。十三}{鯆[孚]魚名、亦作[布]。}…○[専]{普胡切。十二}{魚名、又江豚、別名天欲風則見。}{上同}A上聲巻三 :九○麌{虞矩切。三}…○甫{方矩切。十九}脯…{大魚}

○邦名 (1)サバ(集覧「水産俗字解」)。(2)ウナギ・ムナギ(同「水産名彙」)。(3)鯆魚=コメ(同「水産俗字解」「水産名彙」)、ナマサバ・エイ・エギレ・ナベブタウオ(同「水産名彙」)。(4)鯆[魚+比]=エイ(同「水産俗字解」)。(5)鯆[魚+比]魚=オオトビウオ・エイ・コメ(同「水産名彙」)。(6)イルカ(下記用例参照)。

○【新撰字鏡(天治本)】鯆{夫禹反。[魚+與]。}

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 (1)[孚][布] 臨海異物志云 [孚][魚]{浮布二音、和名伊流可}、大魚色黒一浮一没也。兼名苑云、一名鯆[畢]{甫畢音}、一名[敷][常]{敷常二音}、野王案一名江豚。……参照(イルカ):[魚+孚](7画)に記す。

○同(2)鯆魚 唐韻云。鯆{音甫。弁色立成云。奈’波佐波。}大魚名也。……ナハサバ≒ナワサバ→ノウサバ⇔ノウソウ。サバとフカとサメとハゼの漢字表現の同一性(共有) と異質性(混乱)について考えてみるのは面白そうである。MANA事典「ノウサバ」参照。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部 鯆魚 唐韵云、鯆、{音甫。弁色立成云。奈波佐波。}{○本草和名韶陽魚條 引崔禹、載鯆魚、別無和名、小野蘭山曰、鮠魚俗呼毛太万、播磨備前謂之乃宇曾宇、[少]魚乃属、海産、形似[夷]魚而大、皮有細沙灰色、長三四尺、大者至丈餘、乾者呼乃宇佐波 、嶧山君曰、乃宇曾宇、一名曰白夫加、愚按乃宇曾宇、乃宇佐波、疑奈波佐波之転、} 大魚名也、{○廣韻 無名也ニ字、玉篇、鯆、大魚也、孫氏蓋依之、按廣韻鯆訓大魚、音甫、在上声九虞、又鯆、鯆[孚]魚名、亦作[布]、音[迹(亦→甫)]、在平声 十一模、雖有二音、然其義無異、鯆[孚]一名江豚、然則此所挙鯆魚即上所載[孚][布]、源君分[孚][布]鯆魚、為ニ條、非是、弁色立成訓鯆為奈波佐波、不允、源君従之亦非、

○【伊呂波字類抄】伊(動物) 江豚{イルカ。} 鯆[孚] [孚][布]{臨海異物志云。伊流可。大魚也。黒一浮一没也。} 鯆[畢] [敷][常]{巳上同}。 

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下三 鯆{音甫。ナハサハ。}/僧下七 鯆[比]{甫、[田+比]ニ音。ムナキ。}

○【倭玉篇(夢梅本・篇目次第)】鯆{夫禹反。フ。}(590ページ)

○【倭玉篇(慶長15年版)】下 魚三百四十六 鯆フ{イルカ。サバ。}(213ページ)

参考(1)イルカ系:[魚+孚](7画):[鯆](7画):[魚+布]フ(5画)。[魚+市](5画)。[鮪](6画)。鯆(0732-46177)(7画)。[駸(馬→魚)](7画)。[菊−クサカンムリ](8画)。[甫/寸](10画)。[既’/魚](11画)[普’](13画)。

参考(2)エイ系:[魚+覃](46488)(12画)。韶陽魚(その他14画) :[魚+納](10画)。[番](12画)。

参考(3)サメ・フカ系(ナハサバ⇔ノウサバ):[鮠](7画)

参考(4)サバ系

参考(5)ウナギ(ムナキ)系

 

228 [魚+完] [完]

0733

――

[完]

――

(46178) (一)ク_ワン・ゲン。 〔集韻〕戸版切。〖潸〗上聲。(二)コン・ゴン。〔集韻〕戸袞切。〖阮〗上聲。(三)ク_ワン・グ_ワン。〔集韻〕戸管切。〖旱〗上聲。(四)ク_ワン・グ_ワン。 〔集韻〕胡阮切。〖翰〗去聲。 (一)(二)(三)(四)(1)あめ。あめのうを。(2)[爰](46307)に同じ。(3)或は[軍](46289)に作る。【魚】ク_ワンギ_ヨ。 魚の名。あめのうを。〔本草〕 

用例参考(その1)

【説文】(「説文解字十五巻」TDB):[篆]/[完]魚也{段注釈魚鱧[完]也。毛伝同、許、於鱧下云、[]也。不云[完]也。故[完]篆割文異處、蓋其所傳不同、[完][軍]古今字、今人云[軍]子、読如混、多食之。}从魚完聲{戸版切、旧音也。十四部。又、胡本切、今音也。音転而形改為[軍]矣。}

【玉篇】(大廣益会玉篇三十巻・張氏重刊宋本玉篇)(TDB):[完]{戸本切。魚似鱒而大。}

【廣韻】(五巻・張氏重刊宋本廣韻TDB)@上聲巻第三:二十五○{數板切。又音柵。一}○v{戸板切。七}[]{魚名。又胡本切}A上聲巻第三:阮第二十{混很同用}:二十○阮{虞遠切。三}…二十一○混{古本切。十六}[]{魚名}…○{説文曰。赤目魚也。。才本切。一}○[骸〈亥→系〉]{古本切。十二}袞…{説文曰魚也。亦作[]}〔阮韻に[完]は載らない〕B上聲巻第三:旱題二十三{緩同用}二十三○旱{胡笴切}…二十四○緩{胡管切。十四}[]…○管{古滿切。一}〔旱韻に[完]は載らない〕C去聲巻第四:翰韻に[完]は載らない。

  参考:胡:廣韻:上平聲巻第一:{遇倶}虞第十{模同用}:十○虞{遇倶切。二十}…十一○模{莫胡切。十二}…○胡{戸呉切。三十}

【集韻】(WDB棟亭本の重刻本)巻之五上聲上:阮第二十{五遠切。與混很通。}/混第二十一{戸袞切}/很第二十二{下懇切}/旱第二十三{下罕切。與緩通}/緩第二十四{戸管切}/潸第二十五{數版切。與産通。}/産第二十六{所簡切}:二十○阮{五遠切。}…/二十一○混渾{戸袞切。四十}…[完][軍]{魚名。似鱒而大、或作[軍]}…○袞卷{舌本切。三十六}…[系]{説文魚也}[系][玄]鰥’…[軍]{魚名、似蹲}…○鱒{於〔ママ:粗であろう〕本切。説文赤目魚。文十}/二十二○很〔なし〕/二十三○旱〔なし〕二十四○緩[爰]{戸管切。文三十一}…[爰][完][軍]{魚名。或作[完][軍]}/二十五○潸{數版切。}○睅v{戸版切。}[完]{説文、魚名}…[反]{魚名}

用例参考(その2)

【本草綱目】(国会図書館蔵本KTDB)(第24冊)第44巻、鱗部ニ(鱗之三)魚類三十一種〔5〕[完]魚{音患○拾遺}
釈名[爰]魚{音緩}草魚。{時珍曰鯇又音混。郭璞作[軍]、其性舒緩、故曰鯇、曰F、俗名草魚、因其食草也。江閩畜魚者以草飼之焉。}
集解藏器曰鯇生江湖中似鯉。時珍曰郭璞云、[軍]子似鱒而大、是矣、其形長身圓、肉厚而鬆状類青魚、有青鯇、白鯇、二色。白者味勝、商人多[邑]之。}
氣味甘、温、無毒。{時珍曰李廷飛云、能發諸瘡。}主治暖胃和中{時珍}。
膽{臘月收取陰乾。}氣味苦寒無毒。主治喉痺飛尸水和攪服{藏器}。一切骨鯁竹木刺在喉中、以酒化二枚、温呷取吐{時珍}。

○邦名 (1)アメ(集覧「水産俗字解」)。(2)イシモチ(同「日本動物図鑑」)。(3)エソ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。(4)ニゴイ・ミゴイ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。(5)ヒラメ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。(6)子=アメゴ(同「日本動物図鑑」)。(7)魚=アメ・アメノウオ・ミヅサケ(同「実験活用水産宝典」「水産名彙」)。(8)*[魚+單]=ボラ(同「水産名彙」)。

 

 

a

 

 

b

 

c

e

 

 

 

 

 

 

d

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     
     
     
【新撰字鏡(天治本)】

【類聚名義抄(観智院本)】

     

○【新撰字鏡(天治本)】(518-2)[a][b]{同。胡本反。[單]。}……MANA〔注〕[單]は、説文、類聚名義抄の割注文に示されているように[軍]をさしていると思われる。

○【類聚名義抄(観智院本)】(僧下六-4〜5)[c]{胡本反。アメ。}[d]{胡板反。[軍]魚。}[軍]{亦}

○【倭名類聚鈔】(那波道圓本)〕[完] 爾雅集注云[完]{胡本反、上声之重字、亦作[軍]、和名阿米、}似鱒者也、楊氏漢語抄云、水[生]、{一云江[生]、今案本文未詳、}

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚類 〔49〕[完] 尓’雅集注云、[完]、{胡本反、上聲之重、亦作[軍]、阿米。}{○下総本有和名二字阿米魚見主計寮、内膳司、宮内省式、谷川氏曰、是魚雨日多獲之、故名、曰、[軍][完]聲同、一読聲転、蓋古今字也、}鱒者也、{○釈魚[完]、郭注云、今[軍]魚、似鱒而大、説文、[完]魚名、按證類本草引陳蔵器云、[完]魚似鯉、生江湖間、時珍曰、其形長身圓、肉厚而鬆、状類青魚、俗名草魚、因其食草也、江畜魚者以草飼之焉、舎人云、鱧一名[完]、孫炎鱧[完]一魚、鱧見魚麗詩、傳云[同]也、説文作[蠡]、下文有本條、郭氏為各一魚、以鱧為[同]、[完]為似鱒者、則此所引郭説也、}楊氏漢語抄云、水鮭、{一云江鮭、今案本文未詳、}{○下総本二[生]竝作鮭、伊勢廣本同、」按近江俗謂[完]為衣左介、即江鮭、}

○参考(1):[軍](9画)。[爰](9画)。

○参考(2):[鱒](12画)。

○参考(声音:〖潸〗上聲):[反](4画)

三一二一二レレレ一二三一二一二レレレ一二三一二一二レレレ一二三一二一二レレ

 

 

229  [條(木→魚)]

0734

――

*1

(46179) (一)イ_ウ・ユ。(二)チ_ウ・ヂ_ユ。(三)テ_ウ・デ_ウ。 (一)(1)はえ。はや。(2)はらご。(3)地名。(二)(1)はや。(2)はらご。(3)怪魚の名。(4)或は*2(46180)に通ず。(三)(1)はや。[魚+條](46432)に同じ。(2)或は[魚+由](46066)に作る。

○邦名 ハエ(ハヤ)(集覧「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」)。

○箋注倭名類聚抄訳注より(その1):〔24〕針魚:(24-2)本草和名:古書注参照:【本草和名(寛政刊・古典全集本)】針魚 {口長四寸如針故以名之、出七巻食經。} 和名与呂’都 一名波利乎。……呂’=[口/口]。(2)(3)箴魚:シンギョ。箴(はり)のようにとがった喙を持つ魚。

○箋注倭名類聚抄訳注より(その2):〔24〕針魚:(24-3)山海経:古書注参照:『山海経』「東山經」:【山海経箋疏】(郭璞伝・郝懿行箋疏。還読樓校刊本)(WULDB):山海経第四:東山經:前略……又南三百里、曰[木旬]状之山{懿行案略}、其上多金玉、其下多青碧石。有獸焉、其状如犬、六足、…中略…而北流注于湖水。其中多箴魚、其状如{懿行案、字}、其喙如箴{出東海。今江東水中亦有之。:懿行案、今登萊海中有箴、梁魚碧色而長、其骨亦碧、其喙如箴、以此得名。太平御覧九百三十九巻引南楚記云、箴魚口四寸。}、食之無疫疾。

○参考 [此/魚](5画)。[鮠](6画)

 

 

230  [魚+攸]

0735

――

*2

(46180) イ_ウ・チ_ウ・テ_ウ・セ_ウ。*1(46179)、[魚+條](46432)、[魚+由](46066)に同じ。

○邦名 用例不詳。……*1と同字としてよいであろう。

○参考(1)ハエ・ハヤ系:[鮠](6画):[魚+也](3角)。[魚+囚](5画)。[魚+由](5画)。[攸/魚](7角)。[魚+走](7角)。[魚+若’](9画)。[魚+茲’](10画)。[魚+夏](10画)。[魚+條](11画)。[魚+異](11画)。[魚+輩](15画)。

○参考(2)サヨリ系:針魚(その他10画)。[魚+箴](15画)。

 

231

魚+歩

0736

――

-

(46181) ホ・ブ。 魚の名。 

○邦名

 

232 [魚+里][鯉] JIS第一水準[2481]

0737

――

JIS

(46182) リ。 (1)こひ。〔説文〕鯉、[亶]也。(2)てがみ。たより。(3)或は[魚+裏](46535)に作る。【鯉魚】リギ_ヨ。魚の名。こひ。 

参考用例(1)

【説文】(「説文解字十五巻」TDB)(17-7554)鯉:鱣也。{此見釋魚、毛傳於鱣云鯉、於鯉不云鱣者。鯉者俗通行之語不待注也。舍人云。鯉一名鱣。毛云、鱣鯉也。爾雅古説如此、自陸璣説鱣身形似龍、鋭頭、口在頷下、背腹下皆有甲、縱廣四五尺。今於孟津東石磧上釣取之。大者千餘斤。而郭注乃分鯉鱣爲二、云鱣大魚、似鱏而短鼻、口在頷下、體有邪行甲、無鱗。肉黄。大者長二三丈。此即今江中及關東之黄魚也。如其言、則鱣絶非鯉矣。周頌、有鱣有鮪鰷鱨鰋鯉、鱣鯉竝言似非一物。而箋云鱣大鯉也。然則凡鯉曰鯉、大鯉曰鱣、猶小鮪曰[各]、大鮪曰鮪、謂鱣與鯉[各]與鮪不必同形、而要各爲類也。許意當亦如是。〇按他家説、鱣鮪同類而有短鼻長鼻、肉黄肉白之分。爾雅毛鄭許則短鼻長鼻肉黄肉白者統以鮪[各]包之。而惟三十六鱗之魚謂之鯉、亦謂之鱣。古人多云鱣鮪出鞏穴、渡龍門爲龍、今俗語云鯉魚跳龍門、蓋牽合爲一、非一日矣。}从魚里聲。{良止切。一部}

参考用例(2)

[虔]:【廣韻】(五巻TDB)下平聲巻第二:二○仙{相然切。十二}…○乾{渠焉切。音千。九}虔{略}…[虔]{魚名}

○邦名 コイ。 (1)コイ(集覧「水産俗字解」)。

○【新撰字鏡(天治本)】巻九魚部第八十七(521-6) 鯉{良士反、上古比}

○【本草和名】鯉魚{揚玄操音里、崔禹音閭持反、為魚之主、}一名[后]{胡闘反、野王云、是鯉魚也、}一名[果]{下允’説文反云鯉}一名[度]一名[度]{音度、大鯉已上三名、出七巻食経}[虔]{渠連反、相似}[薄]{音扶各反似鯉而一目已上二種出崔禹}一名赤驥{赤鯉}一名青馬{青鯉}一名玄駒{黒鯉}一名白驥{白鯉}一名黄雉{黄鯉、已上五名出古今注}一名[赤+頁]尾 一名渕{出兼名苑}一名[亶]{大者出古今注}一名水民{出黒子五行記} 和名古比……(1)「下允’説文反云鯉」は、頭注に「按下允’説文反云据医心食制下瓦反説文云之誤/按博雅大[單]謂之[虔]又史相如伝注[虔]似[單]此恐錯出/按白驥古今注作白騏雉作■騅」と云う。つまり、「一名[果]{下瓦反、説文云鯉}」と読む。(2)古今注:3卷:晉・崔豹撰:卷中に第四(鳥獣)第五(魚虫)。エキ齊「和名抄引書」=崔豹古今注{微風、鴛鴦、蚖虵、胡黎、赤卒、鳳車、蚯蚓、蠅虎、螻蛄}/[隋志]{雑}古今注三巻{崔豹撰}[旧志]古今注五巻{崔豹撰}[新志]崔豹古今注三巻。(3)黒子五行記:墨子「五行記」:亡佚書。エキ齊「和名抄引書」=墨子五行記{雲脂}/[隋志]{医方}、墨子枕内五行記要一巻。

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部 鯉 七巻食経云。鯉魚{上音里。和名古比。}。野王案[后]{胡闘反}。説文云。[果]{胡瓦反。上声之重。}。爾雅云。[度]{音度。}。皆鯉魚也。……「爾雅 」に[度]はなく、「 廣雅」が正しい。エキ齊は、箋注によって、それをただしている。下記参照。野王は「顧野王撰」「玉篇」。

○【箋注倭名類聚抄】巻八龍魚部  鯉魚 七巻食経云、鯉魚、{上音里、古比 、}{○下総本有和名二字、古比依輔仁、景行紀新撰字鏡霊異記同訓、按北戸録引陳思王云、五尺之鯉一寸之鯉、但大小殊而鱗之数等同、酉陽雑俎云、鯉背中鱗一道、毎鱗有小黒点、大小皆三十六鱗、爾雅翼云、是脇正中一道爾、非脊也 。 野王案、[后]、{胡闘反}{○伊勢本下総本案下有曰字、} 説文云、[果]、{胡瓦反、上声之重、}廣雅云、[度]、{音度、}皆鯉魚也、{○醫心方 云、七巻食経云、鯉魚平、補中、又[后]胡闘反、野王云、是鯉魚也、又[果]下瓦反、説文云、鯉也 、[度]音度、廣雅云大鯉也、本草和名引略同、而云已上三名出七巻食経、則知野王説文廣雅皆従食経、引之也、各本廣雅作爾雅、蓋後人伝写之誤、非源君之旧、今従醫心方改、廣雅釋魚云 、[后]、[果]也、大[果]謂之[虔]、曹憲音虔、廣韻ニ仙亦収[虔]、則[度]音度、当作[虔]音虔、然本草和名引亦作[度]、別引崔禹出[度]字、則輔仁所見七巻食経已誤作[度]、源君襲之、故医心方又作[度]、非後来伝写之誤也、又按今本玉篇云、[后]胡闘切、魚也、不訓鯉、説文云、[果]、鱧也、又云、鱧、[]也、又云、[]、魚名、廣韻、[果]、魚似鮎也、爾雅郭注云、[]似鮎而大、白色、即四聲字苑鮠魚、後俗呼回魚者也、果回危皆一聲之転、則知[后]亦鮠魚、廣雅以[果]訓[后]、史記司馬相如伝集解引漢書音義云、 [虔]以[果]而大、與廣雅云大[果]謂之[虔]合、是鮠魚之大者、則[后][果][虔]皆鮠魚之別名、並一聲之転、非鯉魚也、疑古本玉篇[后]字注、拠廣雅云之[果]魚也食経所見玉篇誤作是鯉魚也、故於其鯉魚條引玉篇載[后]字既以[后]為鯉、[后]即[果]、故引説文[果]字為鯉魚、鯉之大者[虔]、故又引廣雅[虔]字為大鯉也、

   本草和名承其誤、源君又襲引之也、又按太平御覧引廣志云、[]魚似鮎大口、周頌絲衣釈文引何承天云、魚之大口者名[口/大]、胡化反、王念孫曰、大口故名[]、[口/大]其字当作[]、音義皆協、承天不達字体、乃臆撰[口/大]字、従口下大、斯為妄矣、」下総本無標目魚字、廣本同、

○【醫心方(安政版)】(叢書日本漢方の古典1「醫心方 食養篇」巻末影印)巻30:醫心方巻第卅。五宍部第三。鯉。:鯉魚。本草云。肉、味、甘。主欬逆上気、黄疸、止渇。生煮。主水腫、脚満、下気。胆、味苦、寒、无毒。主目熱、赤痛、清盲、明目。骨、主女子帯下、赤白。歯、主石淋。(陶景)注云。鯉魚最為魚之主、形既可愛、又能神変(アリ)。山上水中有鯉、不可食。又鯉鮓(スシ)、不可合小豆[艸+霍](葉也)食之。其子、合猪肝食之、害人。蘇敬注云。骨灰、主陰飲蝕、哽不出。血、主小児丹腫。皮、主丹隠疹。脳、主諸癇。腸主小児肥瘡。拾遺云。肉、主安胎、(胎)動、懐姙、身腫。煮食之、破、冷気、痃癖、気塊。従従脊当中、数至尾、无大小、皆有三十六鱗。七巻経云。鯉魚、平、補中。又[后]{胡闘反。野王云、是鯉魚也}。又[果]{下瓦反。説文、鯉也}。又[度]{音度、広雅云、大鯉也}。崔禹云。鯉、温、无毒。主脚気、忤疾、益気力。孟詵云。天行病(後)不可食。再發即死。又砂石中(ある)者、毒多(ク)在(リ)。脳髄中、不可食其頭。又毎断去脊上両筋及脊内黒血、此是毒故也。朱思簡曰。白頭者不可食。交蔥桂食之、令人悪病。馬琬云。任身食之、令子多瘡。養性要録云。服天門冬、勿食鯉魚、病不除。{和名、己比。}

○日本古典文学大系「日本霊異記」僧景戒著(校訂:遠藤嘉基・春日和男):日本國現報善惡靈異記下卷(357〜358p):沙彌(さみ)の乞食(こちじき)を撃ちて、現に惡死の報を得る縁:第十五:犬養宿禰眞老(いぬかひのすくねまおゆ)は、諾樂の京の活目(いくめ)の陵(みささぎ)の北の佐岐(さき)の村に居住す。天骨(ひととなり)邪見にして、乞者を厭(いと)ひ惡(にく)む。帝姫阿倍の天皇のみ代に當りて、一(ひとり)の沙彌有(あ)り。眞老が門(かど)に就きて食を乞(こ)ふ。眞老乞ふ物を施(ほどこ)さ不(ず)、返りて袈裟(けさ)を奪ひ〔詰(ナジ)〕リ、見(いちじる)しく逼(せ)め惱まして言はく「汝は曷(ナニ)の僧ぞ」といふ。乞者答へて曰はく「我は是(こ)れ自度(じど)なり」といふ。眞老も亦(また)拍(う)ち逐(お)ひ、沙彌大きに恨みて去る。其(そ)の日の夕に、鯉(コヒ)を煮(に)て寒(こよ)し凝(ここ)らし、明くる日の辰(たつ)の時に起きて、朝床(あさどこ)に居て、彼(そ)のを口に含(ふふ)み、酒を取りて飮ま將(む)とし、口より黒き血を返吐(は)きて、傾(かたぶ)き臥し、幻の如く氣(いき)を絶ち、寐(ぬ)るが如く命終はりぬ。諒(まこと)に知る、邪見は身を切る利劍、瞋(いかり)の心は是(こ)れ禍を招く疾鬼、慳貪(けんどん)は餓鬼を受くる苦因、多欲は慈施(じせ)を障(さ)ふる猛(たけ)き薮(オドロ)なることを。唯(ただ)來り乞ふ者を見ば、憐愍(あはれび)を生じ、顏を和(やはら)げ色を悦ばしめ、法施財施(ほふせざいせ)す可(べ)し。所以(このゆゑ)に丈夫論に云はく「慳心(けんしん)多き者は、是(こ)の泥土と雖も、金玉よりも重みし、悲心多き者は、金玉を施すと雖も、草木よりも輕みす。乞人(こちにん)を見る時に、無しと言ふに忍び不(ず)、悲しび泣きて涙を墮(おと)す云々といへり。

○【東雅】(「語源辞典 東雅」名著普及会版)(鱗介)鯉コヒ 倭名鈔に七巻食経を引て。鯉魚はコヒと注せり。義不詳。/凡魚介の類よびて。ヒといふもの多し。鯉をコヒといひ。鯛をタヒいひ。[魚+覃]魚をエヒといひ。王餘魚をカラエヒとも。カレヒといひ。[魚+夸]をセヒといひ。又鰕をエビといひ。貝蛤并にカヒといひ。甲[ラ]をツビといひ。鮑をあはびといふが如き。かならず其義ありぬべけれど。今に於て不詳。

○参考 (1)(コイ系):[鯉](7画):[后](6画)。[果](8画)[魚+度](8画)。[虔](10画)。[魚+裏](13画)。

○参考(2)(ミゴイ・ニゴイ):[蚤](10画)。

○参考:鮠(6画)[呉](6画)。[蒦]=[草(早→隻)](14画) 。

 

233 [魚+毎]

0738

――

-

(46183) (一)ボ_ウ・ム。(二)バイ・マイ  (一)いしもちに似た小魚。或は[魚+母](46078)(二)魚の名。 

○邦名 用例不詳。

 

234 [魚+卯][魚+一/卯]

0739

――

-

(46184) リ_ウ・ル。 魚の名。[魚+卯’/田](12-46374)に同じ。

○邦名 用例不詳。

○参照 題字の解説にある[魚+卯/田]=鰡で記す。

 

235 [餐(食→魚)]

0740

――

-

(46185) サン。 [魚+餐](12-46605)の略字。【*[魚+條]】サンデ_ウ。 魚の名。はや。

○邦名 用例不詳。

 

236 [沙/魚][鯊] JIS第2水準[8234]

0741

――

JIS

(46186) (一)サ・シ_ヤ。(二)サ・シ_ヤ。  (一)(二)(1)すなふき。はぜ。(2)さめ。ふかざめ。[魚+少](45985)に同じ。 

参考用例(1)

【爾雅】(「爾雅注疏十一巻」TDB)巻第十:釈魚第十六:鯊[它]【註】今吹沙小魚體圓而有黒点{○[它]音陁。}【疏】{鯊一名[它].詩小雅云、魚麗于羀[嘗]鯊、陸璣云.魚狭而小常.○張曰、吹沙故郭氏云、今吹沙小魚也。}

【爾雅翼】鯊:鯊魚狹而小、其味甚美、大者不過二斤、然不若小者之佳、毛氏解、魚麗于羀[嘗]鯊之義曰太平然後微物衆多則鯊是物之微者孔氏正義乃曰此寡婦笱而得[嘗]鯊之大魚是衆多也。蓋鯊雖小魚在笱中為大耳、今人呼為重脣厚特甚有若黽、故以為名今江南小谿中、毎春鯊至甚多、土人珍之夏、則隨水下自以後時亦有之、然亦罕矣春來復來、大抵正月輒至魚之最先至者次則鯉至次則[厥]至桃花水至而[厥]肥則三月矣、此魚生流水之中、非畜于人又其至而多以明萬物自然繁育亦其先至故[嘗]鯊魴鱧[匽]鯉或其序爾。

【爾雅義疏】(芸文印書館影印本)下四:釈魚(1183p):鯊[它]{今吹沙小魚體圓而有點文}詩魚麗、傳用爾雅釈文引舎人云、鯊石[它]也、正義引陸璣疏云、魚狭而小常張口吹沙、故曰吹沙。後漢書馬融伝注引廣志曰、吹沙大如指、沙中行。御覧引臨海異物志云、吹沙長三寸背上有刺犯之螫人。爾雅翼云、今人呼為重唇唇厚特甚。按鯊[它]疊韵、鯊亦作[少]。今呼花花公子是也。巨口細鱗黄白雑文亦有黒點、背鬐甚利故呼皮匠刀。

参考用例(2)

【本草綱目】(国会図書館蔵本KTDB)(第24冊)第44巻:鱗之三{魚類三十一種}〔24-44-鱗3-23〕〔24-46/111〕〔22〕鯊魚{綱目}(釈名)[它]魚{爾雅}吹沙{郭璞}沙溝魚{俗名}沙鰛{音間(時珍曰)此非海中沙魚乃南方溪澗中小魚也。居沙溝中吹沙而游[口+匝]沙而食。[它]者肉多、形圓陀陀然也。}/(集解){(時珍曰)鯊魚大者長四五寸、其頭尾一般大頭状似鱒體圓、似鱓厚肉重唇細鱗、黄白色有黒斑點文、背有鬐刺甚硬、其尾不岐小時即有子、味頗美、俗呼為阿浪魚。}

○邦名 ハゼ。(1)ハゼ・サメ(集覧「岩波動物学辞典」)。(2)カワハゼ・スナホリ(同「水産俗字解」)。(3)キス・キスゴ・カマツカ・カワハギ・スナメリ・カワギス・フカノヒレ(同「水産名彙」)。(4)フカ・サメ(図解)。(5)鯊魚=カマツカ(同「日本動物図鑑」)、サメ(同「水産俗字解」)、スナクジ(同「水産名彙」)。(6)鯊[魚+免]=ハゼクチ(同「日本動物図鑑」)。

○【詩経】小雅「魚麗」篇魚麗于羀鱨鯊、正義 引陸[王幾]疏云、一名黄頬魚 、→【箋注倭名類聚抄】〔11〕鮪〔60〕[末]→解説は、[嘗](14画)に記す。

○【後漢書】六十上、馬融傳第五十上:(第12冊-41/88)[方][與][覃][扁][匽]鱧[嘗][少]楽我純徳、騰踊相随、雖霊沼之白鳥、孟津之躍魚、方斯蔑矣。{[與]音緒、似魴而弱鱗。[覃]音徐林反、口在頷下、大者長七八尺。[扁]音卑連反、魴之類也。[匽]音匽、今[匽]額白魚也。[嘗]音嘗、詩蟲魚疏曰、今黄頰魚也。[少]音沙、或作鯊。郭義恭廣志曰、吹沙魚大如指沙中行。詩大雅曰、王在靈沼、於魚躍。鄭玄注云、靈沼之水、魚盈満其中也、皆以跳躍。又曰、白鳥翯翯。翯肥澤也。翯音學。言並得其所也。尚書中候曰、武王度孟津、白魚躍入于王舟中也。……字義:於魚躍:[牛+刃]:説文解字:満也。从牛刃聲。詩曰、於牣魚躍。而震切。英語:(fill,stuff;full)。

○【本草綱目啓蒙】(東洋文庫4冊)(3-219)(巻之四十、鱗之三、魚類) 鯊魚  カマツカ{京} カハギス カハキスゴ スナフキ スナホリ{新校正} スナメグリ{南部} カマビシ{仙台} アブラハゼ{津軽} スナコズリ{播州} スナモチ{和州} ドンコ{予州同名アリ} カナキシ{讃州} ヨシ{阿州} ジンゾク{四国} スナハミ{備後} ゴロビシ{若州} カナクジリ スナムグリ{常州} カナビシヤ ホウセンボ{勢州} スモロ{江州} スナクヾリ コトヒキ{大者} ダンギボ{共ニ同上。小者} 〔一名〕小沙魚{正字通} 重脣{典籍便覧} 新婦{事物紺珠} 新婦脣{寧波府志}

  流水中ニ多シ。ツネニ沈テ沙上ニアリ。口ヲ張、沙ヲフク形蝦虎魚(ハゼ)ニ似テ、頭方ニシテ細ク尖リ、身ナガサ六七寸、細鱗浅黄黒色ニシテ、黒斑アリ。通雅ニ、身前半闊而扁、後方而狭トイフ。ニルトキハ骨肉自ラ分レ、細刺ナク、味美ナリ。一種江州ニテ冬春多クトリ食ニ供スルモノヲ、ヒガイト云。形相似テ頭口トモニ小ク色白シ。鯊魚ヲハゼト訓ズルハ非ナリ。ハゼハ西土ニテ、ハゼクリト云。一名ゴズ{雲州}ウミカジカ{仙台}淡鹹ノ交ニ生ズ。故ニ城州、江州ニハナシ。形相似テ微紅ヲオブ。頭扁ク大ニシテ尖ラズ、口闊シ。コレ彙苑詳註ノ蝦虎魚ナリ。一種大ニシテ虎斑アルモノヲ、トラハゼト呼。一種深黒斑アリテ頭尾尤黒キモノヲ、コロモハゼト呼。一種目タカク出、静ナレバ水ヲ出テ木石ニノボリ、人ヲミレバ前鰭ヲ以テ水中ニ跳リイリ、蛙ノ跳ガゴトキモノヲ、トビハゼ{備前}ト云。筑前ニテハ、メクラハゼト云。コレ典籍便覧ノ弾塗魚、福州府志ノ泥猴ナリ。

○参考1(ハゼ系) [魚+小](3画) 。[魚+少](4画)。[魚+尓](5画) 。[魚+今(ラ→小)](5画)。[魚+它](5画) 。[嘗](14画)。

○参考2(イシブシ・カラカコ系)=[魚+罔](8画)、[魚+h+臣](6画)、[魚+庸](11画)。

○参考3(ドンコ・カジカ系)=杜父魚(その他7画)。河鹿(その他8画)。河蝦(その他8画)。鰍(9画)

○参考 4(サメ・フカ系)=[魚+少](4画)。鮫(6画)鱶(15画)

○【箋注記載項】〔60〕[末]

 

 

237 [魚+沙]

0742

――

-

(46187) サ。 鯊(46186)に同じ。

○邦名 フカ(集覧「水産俗字解」)。

 

238

魚+狂

0743

――

-

(46188) キ_ヤ_ウ・グ_ワ_ウ。 大きい魚。

○邦名 用例不詳。

 

239

0744

――

-

(46189) キ_ヤ_ウ。[魚+狂](46188)に同じ。

○邦名 用例不詳。

 

240

   山魚 /   及

0745

――

-

(46190) ギ_フ・ゴ_フ。 魚がおほい。

○邦名 用例不詳。

 

241 [魚+尨’]

0746

――

*1

(46191) ハ_ウ。【*魚】ハ_ウギ_ヨ。魚の名。すみ焼鯛。黒鯛。ちぬ鯛。

○邦名 (1)マス(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。(2)アカウオ・アカメ(同「水産名彙」)。

(0746-2)*2(JIS第二水準文字に含む)。

○尨:音はボウ・モウ。意は、毛のふさふさとしたムクイヌ。あるいは大きいこと。尨は、JIS第二水準文字に含まれるので、魚偏の付かない「その他」7画に「尨 尨魚=クロダイ」として項目を立てる。

○『新撰字鏡(天治本)』*1 万須。〔マス〕

○【類聚名義抄】(観智院本)尨魚 クロタヒ。 

 

242 [利/魚]

0747

――

-

(46192) リ。

○邦名 ヒラ(集覧「水産名彙」)。

○参考(コノシロ):

 

243 [魚+孛]

魚+孛

0748

――

-

(46193) ホツ・ボチ。魚の名。

○邦名 用例不詳。

 

244 [魚+告]

0748

――

-

(46194) カ_ウ・コ_ウ。 魚の名。

魚+旁→ 同字……口+牛。もともとは、いけにえの牛をささげて神や神霊につげるの意味を表す(【漢語林】)。常用漢字では牛の部分を変形させた「告」とした。

○邦名 (1)魚=メバル(集覧「水産宝典大日本水産会編」)、メジカ・メジカマグロ(同「水産名彙」)。

○参考:[魚+朱](6画)

 

245 [梔(木→魚)]

0749

――

-

(46195) ダ・ナ。魚の名。

○邦名 用例不詳。

 

246 [魚+呑]

魚+呑

0750

――

-

(46196) トン。 魚の名。

○邦名 フナ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)。

 

247

0751

――

-

(46197) ボ_ウ。@(46094)〔6画参考〕の譌字。

○邦名 用例不詳。

 

248 [魚+〈亡’/川’〉]

0752

――

-

(46198) ボ_ウ。[魚+〈亡’/川’〉](46094)〔6画参考〕の譌字。

○邦名 用例不詳。

 

249

0753

――

-

(46199) ガク。 鰐(46337)譌字。

○邦名 用例不詳。

 

250 [魚+成]

0754

――

-

(46200) 国字 うぐひ。

○邦名 ウグイ(集覧「分類水産動物図説」「岩波動物学辞典」「水産俗字解」「水産名彙」)。

○【節用集(易林本)】 ウグイ

○参考:[魚+咸](9画)、[魚+歳](14画)、[經(糸→魚)](7画)。

 

 

251 [魚+利][鯏]  JIS-code 8237-7245

0755

――

JIS

(46201) 国字 (1)あさり。蜊。(2)うぐひ。 

○邦名 アサリ。ウグイ。……用例要検討。

○【漢語林】鯏 アサリ。蜊の別体。

 

252 [魚+走]

魚+走

0756

――

-

(46202) 国字 すばしり。ぼらの初生から二三寸許に至るまでの称。

○邦名 (1)スバシリ(集覧「日本動物図鑑」「水産名彙」)。(2)スバスリ(同「水産俗字解」)。(3)ツシラ(同「水産俗字解」「水産名彙」)。

○参考(1)ボラ・イナダ系:

○参考(2)ハエ・ハヤ系:[鮠](6画):[魚+也](3角)。[魚+囚](5画)。[魚+由](5画)。[攸/魚](7角)。[魚+走](7角)。[魚+若’](9画)。[魚+茲’](10画)。[魚+夏](10画)。[魚+條](11画)。[魚+異](11画)。[魚+輩](15画)。

 

253 [魚+希][鯑]  JIS-code 8238-7246

0757

――

JIS

(46203) 国字 かずのこ。 

○邦名 ウルカ(集覧「水産名彙」)。

 

254 [鯒]  JIS第2水準漢字 code 8239-7247

0758

――

JIS

(46204) 国字 こち。海魚の一。

○邦名 コチ(集覧「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」「水産名彙」)。

【節用集(易林本)】上から*1、1字おいて*2 【同文通考】(宝暦10年刊本) *3 参考:【同文通考】(覆刻活字本) *4

○【節用集(易林本)】(気形155-2) [魚+伏]王コチ*2

○【下学集(元和3年板)】[魚+伏]コチ

○【大和本草(宝永6年版・中村学園蔵書本)】 コチ 国俗[魚+及]ノ字ヲ用。性不好、人ニ益無シ。本草之ヲ載セズ。其性未詳、漢名を未ダ知ラズ。或ノ曰ク、蟾化シテコチトナル者稀ニ有之。本草ニ[椶(木→魚)]アリ近之。

○【同文通考】(『異体字研究資料集成』第1巻所収。宝暦10年刊本) *3コチ{魚名} *1マテ{同上。一コチ。}

○【同文通考】(覆刻活字本。『語源辞典 東雅』所収) *4コチ{魚名}/*1コチ〔右ルビ〕/マテ〔左ルビ〕{同上}。

○参考:[魚+及](4画)。[魚+伏](6画)。

○参考:鵤(イカルガ)=JIS第2水準文字code8303-7323

 

254-01 [比/土][比/工]

0759

――

 記載なし。

○邦名 (1)カツオ(集覧「日本動物図鑑」「実験活用水産宝典」「水産俗字解」「水産名彙」)。

○[比/工]『新撰字鏡(天治本)』小学篇。 加豆乎

○[比/土]『新撰字鏡(群書類従偏)』。 加豆乎。

鰹(11画)参照

 

254-02 [水/大]

0760

――

記載なし。

○邦名 (1)[魚+乙]魚=ムナギ(集覧「水産俗字解」「水産名彙」)、ウナギ(集覧「水産名彙」)

○ツクリが[水/大]の字は、上記『日本魚名集覧』の「漢字魚名表」の17画(魚11画+ツクリ6画)に載るが、[水/大]は、誰が見ても合計7画であり、18角に分類されるべきなのだが、たぶん[小/大]を書き誤って記載したものと見られる。理由等は、[魚+〔小/大〕](6画)[魚+〔乱−舌〕](0201)及び[魚+央](46041-0510)参照のこと。

 

254-03  [魚+即]

0761

――

諸橋大漢和に記載なし。

○邦名 (1)フナ。(2)海=チヌ(下記【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部) (3)タイ

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部  海 弁色立成云、海魚{知沼見下文}

○【倭名類聚鈔】巻第十九 鱗介部  鮒 本草云。魚{上音即}。一名鮒魚。{上音附、和名布奈}。四聲字苑云。[脊]、、[責]{音積。今案三字通用也}鮒也。

○参照(1)タイ系:[鯛](8画)に用例を整理して示した。:[魚+即](0761)=[魚+〔皀+卩〕](0916)=[魚+〔喞−口〕](0916-2)

○参照(2)フナ系:[鮒](5画)に用例を示した。  [魚+脊](46398)(1040)

○参照(3)イカ系:烏賊(その他10画)。

 

254-04  [魚+〔ヌ/一/友〕]

0762

――

記載なし。 ○参考:[椶(木→魚)](0915)

○邦名 イシモチ。ニベ。

下学集(元和3年板)巻上。気形門(29オ)

○【下学集(元和3年板)】  イシモチ。……右に原本より図像化して示した。

○題字のように字体を判断して良いかは不明。他の用例を見る必要あり。この字にこだわるのは、腹赤(ハラカ)の奏とハラカ=ニベ=イシモチ=マスの考証のためだが、イシモチという魚名の由来となった頭に石をもつ魚の文字の字体のバリエーションのおもしろさにもよる。この下学集に載るイシモチとルビをふった“楷書”の書体は、その通りに画像化すれば0762の字体でよさそうだが、ツクリの頭の字形と一番下の友の字形と真ん中の横棒(一)の構成を眺めていて、ちょっとひらめいた。イシモチと訓むこの漢字は、石首魚、石持、に魚偏9画の[椶(木→魚)](0915)のくずし字の字形ではないだろうか。0915のソウという字のツクリの頭の部分は凶であり、これを参考にMANAが愛用している『くずし字解読辞典増補版』(児玉幸多編)の「又」、あるいは「ヌ」に相当する字形を調べると、右下の凶の字を見つけた。下の友は、スイニョウとみれば、題字のような字形になりそうだ。ほんの、しろうとの思い付きにしか過ぎないが、中国で生まれた漢字を毛筆により書写していけば、なんらかの省略やクズシになっていくわけであり、文字の整理の課程で、崩し字を、本字を想定せずに楷書で書けば、まったく異なった字形として、生まれ変わることもありそうな話である。このような字形の探索をするときの、実験の一例として、このメモを記してみた。

○上記推測があながち無謀な素人の推論ではないことが、最近古本屋で見つけた岩波文庫版『元和本 下学集』(龜井孝・校)の翻刻本には、「[椶(木→魚)]イシモチ」と正字に直して載せていることでわかった。つまり、原文のの文字を書写の際の崩し字と校訂者が判断したものとみられる。これが、当然ながら、妥当な読み方といえよう。……ただし、参考:[魚+尓](5角)「いさゞ」を訓みとする字体とのかかわりを考えた時、この“妥当”にも、いろいろなケースがありうる、ということがわかってきた。(参考:[魚+尓]5角

○『類聚名義抄』に、正字[椶(木→魚)](0915)と題字(0762)の中間形の文字があるので参考に0915の項に示しておいた(画像*4)。

○さらに、『国字の字典』146ページ下段の5行に示された魚ヘンの[又/友](いしもち)とあり、「和字正俗通・和制」(MANA未読)から引いている文字は、原本を見ていないのでいうのもおかしいが、おそらく、さらに省略して作られた字形であろう。

○また、こうして書写された漢字が、元の漢字の意味と同一、あるいは変質しながら、新しい別の字形の漢字として一人歩きをすることになるのだから不思議なものである。『異体字研究資料集成』(杉本つとむ編)は、やがてチェックしてみるつもりだが、いまだそこまでは専門的な資料読解の域に達していない。原点をチェックもせずに、生意気なことはいえないのだが、ぼくの感じでいえば、題字のイシモチという意味の文字を、[椶(木→魚)]の異体字としてとらえるのか、歴史資料読解のために逆引きしていくために必要になる「クズシ字」の一つとしてみるのかは、大きな違いがある。クズシ字も異体字の一つに含めて定義されているのであれば、わからないでもないが、『和字正俗通・和制』に、題字の真ん中の横棒が一本減った[又/友]をツクリとする字体として載っているといって、『国字の字典』(菅原義三編)に、国字の一つとして載っているのをみて、わが目を疑った。現代、コミュニケーションの手段として筆による文書を使わなくなったのだが、記号としての漢字を、さらに進化させてパソコンを手段としてインターネットの世界で利用できる時代になっているのである。印刷活字万能の時代に制定された常用漢字やJIS文字の情報処理文字の体系にしても、ほとんど[椶(木→魚)]という字の毛筆による崩し字であるはずの[魚+又/一/友]を、元もとの字体である[椶(木→魚)]の文字を正字として、ネット上で誰でもが認識可能な文字として利用できるような情報処理体系に、もっと整備していってもいいのではないだろうか。一昔前であれば、画数が多かったり、癖のある字形の文字は、筆記に手間取ったり、読解に個人差が出るなど、国語教育の方向は、基本的には文字の簡略化や、省略化、情報処理に必要な漢字数の制限に向かってきたのであるが、昔であれば、「憂鬱」や「顰蹙」などを字書なしで書けることを自慢にできたのだが、いまや、パソコンに向かって、キーボードをたたけば、訓みの意味さえ知っていれば誰でも、文書に記入することが可能になったのである。単純に記号として漢字をとらえて、簡略化しようが意味が伝わればそれでよいという時代は、そろそろ手仕舞いにして、むしろ、漢字文化の特徴である、表意文字としての多様な性格に着目して、漢字本来がもつ表情豊かな顔を復活させるべきではないのだろうかというようなことを、最近考えるようになっている。制度としては今のままでもよいから、できうるなら、旧字体や動植物の多様な漢字をもっともっと自由に使えるネットの世界であってほしいと思うのは、果たしてボクだけなのだろうか。

○参考:[椶(木→魚)](0915)

 

254-05 [徹(育→魚)]

0763

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大辞典記載なし。

○邦名 サバ……音はキ。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一二 *{サハ} [魚+徽]{正徽。音徽。魚絶有力。}

○参考:[黴(黒→魚)](1108)[魚+黴(黒→糸)](1701)に字体変化、用例等を記した。

○参考:[魚+也](0303)鯖(0806)[魚+昔](0815)[魚+番](1229)[魚+惠(恵)](1246)

 

254-06  [魚+頤−頁]

0634

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大辞典では6画に掲載。click here

 

254-07  [魚+豕]

0764

――

大辞典に記載なし。

○参考 邦名 イルカ……『国字の字典』に『大字典』を引き、イルカとする。未確認のため、参照とする。要検討。

○参考:[睦(目→魚)](8画)。

 

254-07  [魚+赤]

0765

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大辞典に記載なし。

○邦名 (1)カサゴ(集覧「日本動物図鑑」「岩波動物学辞典」「水産名彙」)。(2)モウオ(同「水産名彙」)。(3)*魚=モウオ(同「水産名彙」)。(4)[魚+宗]魚=ハナオレダイ(同「水産名彙」)。

○【類聚名義抄(観智院本)】僧下一五 {タヒ}。

 

 

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