味探検食単随筆 氷食論もしくは氷室論03


氷と人間のふれあいの歴史

雑誌『自遊人』2003年9月号氷特集

「氷のごちそう」


も く じ

01 まえおき  6月1日はなんの日? 氷の文化史ライブラリー

02 桑野貢三さんとの出会い

03 雑誌『自遊人』2003年9月号氷特集

「氷のごちそう」

04雑誌『自遊人』03年9月号氷特集「夏の風物詩、氷旗に見る天然氷の歴史」

氷の文化史ライブラリー

 

 夏が近づく季節になると、氷の歴史について知りたい、という雑誌や新聞社からの連絡が必ず数件ある。ぼくは、自分の手元にある「氷の文化史」制作で使用した資料や、そのご桑野貢三さんや、川村和正さんらとの氷業史や氷室に関する情報の交換によってたまっていく資料を、そのような方々にお見せしたり、取材者の意向に沿うように、話したりして対応してきた。

 2003年の場合も、6月頃だったか、隔月刊雑誌『自遊人』(カラット発行)のKさんという方が事務所にこられて、企画の趣旨を聞いてみたら、このKさん、これまでに氷のことについて取材に来られたかたとはちょっとレベルがちがっていて、全国の氷室の歴史や所在をよく勉強をされていたばかりでなく、「現在冬氷をつくり切り出して氷室に保蔵し、夏使用する氷室は5ヶ所です」と、ぼくがこれまで確認したいとおもっていたことを、調べ、すべて現地にいかれ取材済みとのことであった。ぼくも、天然氷の氷室を営業しているのは秩父に1ヶ所、栃木県に数ヶ所、長野県軽井沢に1ヶ所確かあるはず?ということを、5ヵ所と特定されたことにびっくりしてしまった。

 こんなに取材をきちんとされて、ぼくのところにくる人は、ほんとうに始めてであった。ある意味で言えば、氷業史の勉強仲間にぜひとも加わってほしいとさえ思ったわけであり、いいきかいだから、いくつか整理をしておきたいことを文章にまとめておきたいと、企画に最大限の協力を約束するとともに、ぼくからもお願いして、原稿を書かせてもらうことになった。

 原稿のテーマは、「氷旗の起源」についてであって、中川嘉兵衛の天然氷製造販売事業から火がついた、明治時代の天然氷、かき氷ブームについて、店の前にひらめく「氷旗」の由来からまとめてみることだった。

 これには、気になっていた、皆川重男さんが平成9年に亡くなられたあと、皆川さんの氷業史コレクションは、どうなっているのかを確認しに、南千住を再訪してみようという懸案を実現してみたいということもあった。

 皆川重男さんの息子さんからいただいていた、皆川さんが亡くなられたという報の葉書きをたよりに、南千住を訪ねてみた。

 息子さんが経営されている、南千住駅ちかくの「満寿家(ますや)」というお寿司屋さんに伺うと、息子さんが実にていねいに対応していただき、この奥に資料を移して保管しています、といううれしい一言に、正直、ああ「よかった」とおもった。また、たぶん四散してしまったのでは、と心配をしていた失礼を、息子さんや娘さんらに申し訳なくおもい、わびた。

 皆川氷業資料コレクションの10数年振りの再会であり、このさいに、1点づつ別々にポリシートに入れ、樟脳の袋をいれて、1日かけて整理することにした。ぼくにとっては、幕末から明治、大正期の氷業記事がのった新聞はとても貴重なものであり、これらの現物をもとに、皆川さんの「日本氷業史文献目録」に記された事項を1項もくごと、いずれ、テキスト化したきちんとした電子ライブラリーにしなければいけないなあと、思ってしまった。

 

 この、皆川コレクションのなかで、現物を見たかったと前々からおもっていたのが、皆川さんがコレクションをするにあたって、同好の士、あるいは専門の研究者らと交わした書簡だった。今回の整理をしてみて、おどろいたのが、この氷業史コレクションを集めるに当たって実にいろいろな人ととの情報交換が行われていることであり、書簡の発信者の名前には、宮武外骨、池田文痴菴などもみえ、亘理信一から数多くのコピーや未刊草稿なども寄せられていた。

 こうした、皆川コレクションの所在と、コレクションのなかから一部を紹介しながら、中川嘉兵衛の名前で始る幕末から明治維新の氷の歴史を「氷旗」の由来記としてまとめたのが、「夏の風物詩、氷旗に見る天然氷の歴史」だった。

 この記事も、しばらくしてから雑誌社の了解をもらい、本ページに載せようと思う。

 

●『自遊人』2003年9月号、特集「氷のごちそう」掲載内容一覧は以下の通り。

 

〔同誌もくじより〕

 紫式部、前田利家、福沢諭吉、そしてジヨン・レノン……いつの時代も、夏の氷は最高の贅沢でした。

(電力不足でも涼しくなれる!?)氷のごちそう

○たかが“氷”を求めて鎌倉へ。これ、最高の贅沢だと思いませんか?  津川雅彦(俳優)
○江ノ電途中下車。水のごちそうマップ
○夏の風物詩、水旗に見る天然氷の歴史  中島満(氷業史研究者)

【平安時代――貴族たちが楽しんだ氷の宴】
○千年の都に“水の口福”を求めて  佐藤隆介(作家)

◇かさぎ屋(京都・二寧坂)/◇京料理 菊乃井(京都・真葛ケ原)


【安土桃山〜江戸時代――殿様への献上氷】
○創業251年の老舗料亭で、利家も楽しんだ氷に想いを馳せる

◇つば甚(石川・金沢)


【江戸時代――“お氷さま”のお通りだいっ!】
○将軍家に献上氷が運ばれる時代に、氷室をもった料理茶屋があった!

◇割烹家 八百善(東京・新宿)


【明治時代――文明開化で花開いた製氷業】
○こんな豪勢な氷料理を見たら、福沢諭吉もビックリ!?

◇筑紫亭(大分・中津)

○貴族のご馳走から、時を経て庶民の贅沢へ 平野雅章(食物史研究家)
○日本中でたった5軒!現在、天然氷を作る氷屋さんは全国でも5軒しか残っていません。この夏、天然氷を食べに行く。……渡辺商会・ちもと総本店(長野・軽井沢)/松月氷室(栃木・今市)/阿左美冷蔵(埼玉・長瀞)
○さすがに、味噌かき氷はないけれど……イカスミ?プリン?名古屋は日本一のかき氷パラダイス!!
○こだわりの酒屋が推薦……氷で楽しむ夏の酒

◇六条名酒館タキモト推薦 純米吟醸生凍結酒『白山氷室』
◇升新商店推薦 純米大吟醸『李白』◇長野屋推薦本格焼酎『兼重(麦)』
◇いずみや推薦 火いら寿純米大吟醸生/東洋美人吟醸/大英勇米吟醸生/明鏡止水吟醸おりがらみ「吟織」/太平海特別純米火入/七田純米吟醸無濾過生2003/佐久乃花山由綿純米生/やまかわ古酒1992/高嶺/純芋/佐久乃花そば焼酎/青酎/What(宝都)/黒甕

○鹿児島で“白熊”といったらかき氷!……白熊、黒熊、そして茶熊……。さてどの“熊”がお好みですか?

 

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