味探検 江戸前シリーズ 50(東京新聞1998年1月15日首都圏情報版「ゆめぽっけ」掲載) 

谷中・すし乃池(すしのいけ)

とろけるような味、これぞアナゴ寿司

 東京湾でアナゴを専門にとり続ける小杉鶴吉さんという漁師さんを取材したことがある。浜松町駅近くのマンションに住み、金杉橋下にもやいだ船で毎日出漁する。「どう」と呼ばれる直径15センチ、長さ80センチ程度の塩ビ製の筒に、入ったら出られないモドラズ口(ウケという)を取り付けた仕掛けを100本以上も沈めて捕獲する。アナゴにも好きな色があり赤のウケが他色にくらべ群を抜いてよく入るという話が印象的だった。
 午前に仕掛け夕方漁獲したアナゴを午後7時ごろ直接築地市場の水揚げ岸壁に横付けして卸売業者に販売する。生簀に活かしておき翌朝セリにかける。「江戸前アナゴでなけりゃあこの味はでない」と、すし乃池ご主人野池幸三さん。羽田沖でとれたアナゴが中でも一番とのこと。柔らかくしっとりと煮上がるそうだ。ほわっとほのかな暖かさにツメの甘さが合体して、とろけるような味わい。これぞアナゴ寿司である(2500円おみやげも同)。
 昭和40年に出店。「江戸風情を色濃くのこした谷中の街が性分にあっていたんでしょうね。街の人々にも気軽におみやげで持ち帰りのできるもの」と始めたアナゴ寿司はすっかりこの店の看板になってしまった。江戸前でとれて谷中が育てた味なのである。昆布シメ鯖寿司(2000円写真左)がまたうまい。(中島満)

「すし乃池」メモ

 台東区谷中3ノ2ノ3。地下鉄千代田線千駄木駅団子坂出口下車、団子坂下信号渡り三崎坂商店街通り100 左手。(電)03・3821・3922。カウンター8席、テーブル6席。2階座敷30席。営業時間11時30分-後2時、午後4時30分-10時。日曜祭日11時30分-午後8時。定休水曜。

取材メモ  記事内容は取材時のものです。現時点で価格・営業時間・経営内容等変更がある場合があることをご了承下さい。

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