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味探検 江戸前シリーズ 42(東京新聞1997年11月13日首都圏情報版「ゆめぽっけ」掲載) 

高田馬場(早稲田)・志乃ぶ(しのぶ)

寒くなると思い出す名物おかみとおでん

 旦那の留守にこっそりと味噌田楽を注文した雇い人。直後に旦那が帰ってきてしまう。そこに田楽屋が「辻から焼けてきました」と戸をたたく音。旦那は、すわ火事かと慌てて戸を開ける。「へい田楽」と差し出され「味噌蔵に火がついたか」という小話の一節。このデンガクに女言葉「オ」がついて「おでん」になったというのが通説である。
 文久2年の刷り絵に「いじきたな、立食しよ、夜店は…すし、あんかけ、おでんにかん酒」とあるから、江戸後期すでに豆腐、芋という田楽ネタを醤油で炊く煮込み料理をおでんと称していたらしい。寒くなるとおでんで燗酒を引っかけたくなるのは、いつの世も変わらないケシキである。
 学生言葉でゲルピンとは一文無しを意味した。こんなとき、そこに行けば友人もいて何とか助かるという店があった。そこに、きまって面倒見のいい「おかあさん」がいたものである。
 高島寿江さん。そんな学生街の名物おでん屋のおかあさん。昭和29年開店。学生たちの子、孫が客として通い続ける。「今の学生は金持ちになったねー」とふと漏らす寿江さん。すでに親戚の近田千秋さんにすべて任せているが、高島さん会いたさに通い続ける客とのキップのいい会話は昔のままだ。大根から袋物、タコまですべて1個150円(1人前3個)。あったかくなる店である。(中島満)

 

「志乃ぶ」メモ

新宿区西早稲田1−19−17。地下鉄東西線早稲田駅から早稲田大学正門沿い商店街を抜け、新目白通り手前お蕎麦屋さんの左を入る。電話=03-3203-1648。カウンター12席、テーブル16席。営業時間午後5時〜11時(土曜10時)。定休・日曜祝日。

取材メモ  注:記事内容は取材時のものです。現時点で価格・営業時間・経営内容等変更がある場合があることをご了承下さい。

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