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漁場・漁村と里海の間にあるもの |
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中島 満 |
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本報告公開サイト:MANAしんぶん:http://www.manabook.jp |
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1949:海なし県浦和生まれ。 |
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1969:横浜私立大学社会学科 |
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1973:卒論「日本漁民論―横浜市根岸湾埋立開発から金沢八景沖埋立計画に伴う漁業補償実態と関係漁民の対応」〔著〕 |
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◎漁民運動・郷土史家渡辺栄一に師事 |
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1973:水産社入社。全国各地の漁業基地・漁村めぐりの取材、沿岸漁業問題記事。エビ・マグロ流通情報記事。水産小六法・水協法の解説他漁業法制度出版担当。 |
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◎水産庁漁業法専門官・浜本幸生に師事。漁業権の実態取材。 |
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1974:「足で書いた記録 闘いの海から」(第3章「接点の海―富津漁民群像」担当)〔共著〕 |
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1988:「早わかりシリーズ漁業法」(漁業権ってなんだろう?/海って誰のものだろう?/いま海の利用を問う)(浜本著)〔企編〕 |
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1995:まな出版企画設立 |
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1996:「海の『守り人』論―徹底検証・漁業権と地先権」(浜本監著)(「補償済み海面の不思議な性格―千葉県富津」、「ハゼつりの漁業権―京都府久美浜湾」)〔企・編・著〕 |
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1996:「若狭の漁師、四季の魚ばなし」(貝井春治郎著)〔聞き書き〕 |
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2000:「公共事業はどこが間違っているのか?―コモンズ行動学入門」(熊本一規著)〔企・編〕 |
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2002:「最新・漁業権読本」(田中著)〔企・編〕 |
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2006:「ローカルルールの研究―ダイビングスポット裁判の検証から」(佐竹・池田他著)(「和歌山県すさみ・徳島県牟岐・東京湾お台場」他の事例紹介)〔企・編・著〕 |
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2006:「[季刊里海]第1号」(「里海の主体者とめぐり≠フ思想」他) 〔企・編・著〕 |
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2008:「「里海」ってなんだろう?―沿海域の利用とローカルルールの活用」 |
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2009:「新しい海の共有―「里海」づくりに向けて」(富士ゼロックス「グラフィケーション」1月号)〔インタビュー〕 |
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近世(江戸時代)の山野海川入会の実態を成文化した「裁判心得」(国会図書館書誌)の文書として知られ、訴訟の実際について条目をあげて記している。活字翻刻資料集として、石井良助編『近世法制史料叢書 第2』(弘文同書房、昭和14年)311pより |
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山野海川入会 |
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…前略… |
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一 魚猟入会場は、国境之無差別、 |
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一 入海は両頬の中央限の魚猟場たる例あり、 |
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一 村並之猟場は、村境を沖え見通、猟場の境たり、 |
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一 磯猟は地附根付次第也、沖ハ入会、 |
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緒言:……水族の饒多なる各国その比を見ず。然れども従来精要なる統計なきを以って水産の収入を測定し、漁民の生計国家経済の関係を観察すべき確実の材料を得ること能はず。是をもって明治二十五年十月後藤農商務大臣は道庁府県に訓令するに水産事項に関する特別の調査を為すべき旨を以ってせられたり。而るにその調査の項目頗る浩瀚なるを以って著手頗る困難なりしと雖も各地方長官よく本省の趣旨を体し、あるいは特に委員を設け、あるいは吏員を派し孜孜(しし)督励(とくれい)その威効を責め。遂に本年一月下旬に至り……を除き悉く完了を告げたり。……百有四項にわたり漁民の戸口……漁場の位置広狭、漁業の季節、漁具漁船の種類等にいたるまで精細漏すなく、実に水産業に関する一般の現象を通観するに足れり。…… |
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(1)海域を持続可能な利用が図られるように適切な状態に保つ。 |
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(2)海域の開発利用の可能性を明らかにする。 |
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(3)輻輳する海域利用において利用秩序を維持する。 |
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(3)=監視指導取締りによる秩序維持をはかり、関係者間の円滑な調整を行う=関係者=沿岸域の漁業利用=管理に当たっては、こうした実態を十分踏まえるとともに、必要に応じ関係者の円滑な調整のための環境整備を行うこと。 |
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◎沿岸域における「実態」とはどのようなものなのだろうか。 |
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みんなで利用するために形成されてきた「地域ルール」のうちの「漁業を安定して営む」ために、法律の権利に書き換えたものが、漁業法の「漁業権」なのです。つまり、海沿いの漁村集落のような「地域」には、法律に規定された漁業権と、地域が自主的に形成してきた「地域ルール」が重なりあうように機能しているのです。 |
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沿岸域の利用が、これまで、漁業という産業としての利用(漁業的利用)や、漁業者を中心に海沿いに住む人々の生活に結びついた利用(慣習的利用)に加えて、地域外や漁業者以外の人びとによる利用(市民的利用)とが、漁業制度の枠組みを維持しながらも、「漁業」の定義を一歩踏み越えた解釈をしなければならなくなるような新しい海(漁場)の利用の姿が、各地で起こり始めている。 |
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「漁村は疲弊し、地域は大きく変貌し、黙っていても、海沿いの地域を代表する主体者は漁業者∞漁協≠ナあると、国民だれもが納得できた時代が変わろうとしてい」るのです。つまり、従来の漁業法の歴史を中心とした、地域と地先海面の管理と利用の仕組みの理解や解釈だけでは、各地の地先海面で起きている海の利用実態を説明しずらくなってきた。 |
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【事例1】和歌山県すさみ町「すさみ漁協」:地先権の自主的開放により漁協が取り組んだDS事業 |
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【事例2 】京都府網野町琴引浜太鼓浜の共同漁業権開放:鳴砂の浜から海をひらく£案 |
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【事例3】福井県三国町:「支所」を活かした「漁師と友だち」提案が新しい!」 |
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仕掛け人:網野町漁協組合員・松尾省二氏 |
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プロフィル:地元高校卒業後、大阪にて広告関係の仕事に就き、帰省後家業の小型定置網漁、民宿業に就き現在に至る。環境保護や地域活動に取り組み、ナホトカ号重油回収や海岸コンサートなどのマネージメントをエネルギッシュに続ける。漁業漁村の魅力を伝える漁業メッセンジャー「ザ・漁師’s」4人の1人。日本ナショナルトラスト専門研究員。京都府漁業士会会長。琴引浜の鳴り砂を守る会事務局。京丹後市観光協会理事。網野町漁協代表監事(元)。 |
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京都府丹後半島、網野町の「鳴砂」で知られる琴引浜。この海岸の太鼓浜と呼ばれる岩礁域を「入漁礁」に指定し、夏の一定期間、1人1日2500円の「一日漁師証」を購入した一般市民に、素潜り漁を体験してもらう試みを紹介しましょう。名づけて「あなたも一日限定で漁師になってみませんか!」。 |
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サザエに限定した市民参加型素潜り採捕体験事業は、同県舞鶴市漁協野原支所で行われてきた。ところが、共同漁業権水域内で区域・日時・体長など入漁制限や利用規則を守ることを前提にして、魚貝種指定なしで採捕・持ち帰り自由の「開放」ルールを設けたのは、全国でも、ここが初めてのことではないだろうか |
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共同漁業権を開放するための三段階の合意形成の意味 |
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(1)小組合:掛津地区12名:全員合意を3年間かけて取り付ける。 |
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(2)旧島津漁協の漁業者:30名:全員の合意を半年間かけて取り付ける。地区総会の多数決。 |
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(3)網野町漁協:組合理事会:地区で合意決定した漁業権行使ルールは事後確認により組合決定事案となる。 |
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漁業法の共同漁業権の開放なのか |
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地域実態としてのルールの合意なのか |
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罰則規定:一日漁師証購入者:入域者が漁業者が守っている「漁業権行使規則」および地域ルールを遵守することを確認する。 |
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利用時の身の安全は事故の責任とする。 |
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網野町、地元警察、海上保安部も確認。 |
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漁協・支所・地区の地域社会の役割分担:漁協が合併したり大型化すると地区単位の合意形成によるルール形成は、リーダーや地域の差もあるがむしろ円滑に進むようになる。 |
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地域外の人(ヨソモノ)と地域内の構成員と漁協等既存組織の交流の仲立ち機能:NPOやそれに順ずる団体が、漁協の担いずらい事業にたいして担い方を分散できる:生産活動・比生産活動・環境保全環境教育活動(市民的利用):ボランティア活動 |
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漁業的利用のみが主体となっている地域社会:漁業的利用と市民的利用とが共存する地域社会=この相違に目を向けてみるときに、地域社会の構成者によってのみ管理利用のルール形成およびその変更が可能となる自然領域の所有(漁業権、地先権、入会権)にかかわる対外的には「閉じた:閉鎖的」な慣行(ルール)を、現代社会経済の需要にあわせた可能な範囲での「自主的な開放」ルールをつくり提案することによって、生み出される「価値」を、活かす手法作り。 |
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沿岸域の海と陸の自然資源の利用と管理を考えるとき、ローカルルールの合意形成をはかる上での最小単位の地域実態Aに着目しよう。 |
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地域実態は、その地域の経済・社会・文化の歴史によってそれぞれ異なり(A1、A2……Ax)、それらの一あるいは、いくつかが重なって現在の行政区画の最小地域Bを作っている。 |
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AあるいはBの地先の海(浦浜)の関係が「里海」の実態である。 |
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旧来からの漁村や漁業地区の概念をあらたに見直し、合併の歴史や人口流出や新住民たる市民社会流入の変化要因を考慮しながら、現代その地域が実際に機能しているあらたな地域の概念を再構築する必要があるのではないだろうか。 |
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それらの地域実態が持続可能な経済社会を成り立たせる条件を満たす地域住民の意思(合意・政策への賛否など)に基づいた沿海域の自然資源の利用や管理、地域開発計画であるべきであろう。 |
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つまり、地域実態の数だけ多様な姿の「里海」がある現状を要件に含んだ自然資源利用管理計画が沿岸域政策をすすめる上で大切なポイントとなる。 |
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