雑魚蔵書録 Zacko-Library 001
写真集 岡山県児島湾の漁具
湯浅照弘 著
原著 昭和44年12月26日 原著は、ガリ版刷り、自家製本。写真(モノクロ)は三角写真止めによって1枚1枚貼りつけ、及び写真の解説は手書きの著者手作りの写真集である。 |
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1-ハゼタテアミ 2-ゲタ漕網 3-ユビサシ又はユビブクロ 4-ママカリタテアミ 5-モガイダマ 6-ナワバチ又はハチ 7-ギィチョウ 8-アホウアミ又はアホウダマ 9-不詳 10-シバ 11-シバ 12-シバ 13-ガニダマ又はガニツリ 14-ハゼツボ 15-ガ=ダマ 16-ガニダマ 17-カケダマ 18-ナワバチ 19-ランプ1(漁撈用) 20-ランプ2(漁撈用) 21-アカトリ 22-ボラカケ 23-ヘリクリダマ 24-カキダマ 25-オイアミ 26-マエカキアミ 27-ママカリタテ網 28-ツボアミ 29-イワ 30-不詳 31-ウナギカキ 32-ボラカキ |
岡山県のハゼ壷漁法の取材に牛窓を取材したおり、たち寄った岡山県立図書館の郷土資料室に設けられてあった湯浅照弘コーナーで、先生の業績の数々をしった。なかでも、タイプと簡易印刷で作られた「岡山県旧児島湾漁人問答集」の内容の面白さにびっくりした。
ハゼ壷漁について教えを請うととともに、失われた漁具漁法を記録した貴重な文献の数々に感銘を受けた旨のファンレターを書いたら、ほどなくして著者からお手紙とともに、手書きの本原著の写真集が送られてきた。湯浅氏の論文集に収められてある写真も数多いと思うのだが、このような形で、自らが調査、収集され、写真に撮られた記録の存在に胸を打たれた思いがした。
このようなものは、1冊ずつ整理し編集の手を加えて印刷刊行することは難しいものだが、インターネットがもっとも得意とするところだ。本著のようなものこそホームページに復元し、公開するのにふさわしい貴重な資料だと思う。著者の事後承諾をもって、ここに載せることにした。湯浅氏の手元にある白黒フィルムとプリントは、40年以上もの前のものであるために、これ以上の放置は劣化するだけであり、手作り写真集の白黒プリントも変色しかけている。
雑魚蔵書録の巻頭を飾るにこんなふさわしいものはないと思い、掲載することにした。このようなコピー(復元)のしかたが、地方図書館や蔵書家、個人研究室に眠っている貴重な写真や図像資料あるいは手書き資料を公開する方法として、インターネットによって可能となった効能の1つであるのかもしれない。 ――MANAの戯言――
本著は、さきに刊行した『写真集―岡山県児島湾の漁具 第1集』に続く第2集である。
自刊の目的は、第1集でものべたとおりである。すなわち児島湾にある特異な漁具だけを収録するのでなくてどこの漁村にもあるであろう漁具を写真にして、その土地で呼称されている名称、所在場所、使用方法など簡単に書きとどめておきたい。標題に『岡山県児島湾の漁具』としているが、ときとして狭く漁具だけに限定せず当地帯の漁民の生活具、被服、漁業記録文献などに及ぶかもしれない。
現在は姿を消したものでも復元を漁民の方でできるものは復元していただいて記録にとどめておきたいと思う。例えば、どこの漁村にでもある漁場割り当てを決めるクジの用具、漁撈用の仕事着、樫木網(かしきあみ)の杭を打ちこむときに目じるしにする竹製のダイオという道具など今日ではもはや容易にわれわれの目に入らぬものを古老の漁民の方々に復元をお願いしたいと思っている。
また、同じような漁具が重複するかもしれないが、児島湾沿岸一帯の各地区のもをなるべく多く収録したいと思っている。漁具によっては樫木網のごとく、少差がみとめられることもある。
本著が、非常に小冊であるということも自刊という制約のもとで写真のベタ貼りということであるので到底30枚以上の頁数は製本上困難を来たすことを感じ、第1集と同じようなスタイルで今後ともこのささやかな写真集を続けたいと思っている。
本著のような写真集を自刊するに至った動機は、第1集の『はしがき』にもいささか述べたのであるが、文献では見出せる漁具が、漁村には実物として存在してない『幻の漁具』が案外に多いということである。
筆者などは、ささやかな力ではあるが、少しでも瀬戸内海地帯にある漁具の一部分でもよいから記録にとどめておきたいと思っている。それもどこにでもある現存の漁具を中心にしたいと思っている。
その手はじめとして、児島湾の漁村地帯を歩くことから出発した。
筆者は、いささかあきっぽい正確なので、このような仕事がいつまでつづくか筆者自身心もとないし、中絶するやも知れないと思っている。
しかし、漁村を歩いていると気持ちが良い。誰に命令された仕事でもなく、義務付けられたものでない。制約がないということは筆者自身にとってもストレス解消の一方法である。
青い海と青い空、オゾンと潮香の匂う浜辺を歩いていると私は人生の充実感を感づるのである。これは不思議なことである。
昭和44年10月27日
湯 浅 照 弘
写真集 岡山県児島湾の漁具(その2)
1 〔名称〕ハゼタテアミ 〔所在場所〕岡山市郡(こおり) 〔説明〕網の長さ80cm、浮子は桐で1m間隔に取り付けられている。
2-ゲタコギアミ
2 〔名称〕ゲタ漕網(げたこぎあみ) 〔所在場所〕岡山市郡(こおり) 〔説明〕底曳網の一種。ゲタその他雑魚を捕獲する。
3 〔名称〕ユビサシ又はユビブクロ 〔所在場所〕岡山市郡(こおり)西松尾 〔説明〕漁民の右手の指にさされたもの。チンダイガイを手で掘るとき指先をいためぬためのもの。
4 〔名称〕ママカリタテアミ 〔所在場所〕岡山市郡 〔説明〕網の長さ不明。網目は小さい。
5 〔名称〕モガイダマ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕船上よりこの網でモガイをすくいあげる。網は麻でこの網に2間ほどの柄がつく。
6 〔名称〕ナワバチ又はハチ 〔所在場所〕岡山市郡 〔説明〕1ハチ60本の糸がつけられる。タテ38センチ、ヨコ34センチ、下の竹の部分をサナ、鈎を突き刺すところは藺草(いぐさ)でクミという。
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7 〔名称〕ギィチョウ 〔所在場所〕岡山市郡西松尾 〔説明〕漁網、船のの綱などをよる(撚る)のに使用する。高さ77cm、土台の長さ1.1m、幅65cm。松材であるが、綱を撚る金具をさし込んだ部分はカシ材である。
8 〔名称〕アホウアミ又はアホウダマ 〔所在場所〕岡山市海吉(みよし)
〔説明〕児島湾沿岸の川でコイ、フナなど雑魚を捕獲する。
9 〔名称〕不詳 〔所在場所〕岡山市阿津 〔説明〕樫木網のカシ棒を海底に打ちこむときにオモシに使用する。花崗岩で中央に2すじの凹みがあるところに綱でしばる。タテ40p。ヨコ20cm。重さ20貫。
10 〔名称〕シバ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕シバ漬漁法。ツツジに細綱につける一種の寄魚漁法。
11 〔名称〕シバ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕潮がひいた海底に見えるのがシバである。
12 名称〔シバ〕 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕海岸に沿って細竹がたてられ、そこにシバが置いてある。
13 〔名称〕ガニダマ又はガニツリ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕これを使ってカニを捕獲するのをカニツリという。児島湾沿岸にみられる。
写真紛失……探索中
14 名称〔ハゼツボ〕 〔所在場所〕岡山市宮浦 〔説明〕タテ25p、ヨコ15p、深さ5cm。ハゼその他の雑魚を捕獲す。以前は素焼きの壷を使用した。
15 〔名称〕ガニダマ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕ガニダマとしては改良されたものらしく、新しい型のものである。
16 〔名称〕ガニダマ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕15と同じ。
17 〔名称〕カケダマ 〔所在場所〕岡山市郡 〔説明〕長さ80cm、網口の直径38cm。竹製の輪が上部についている。網底の巾は55cm。捕獲した魚をこれに入れる。
18 〔名称〕ナワバチ 〔所在場所〕岡山市三蟠 〔説明〕6と同じ。
19 〔名称〕ランプ(漁撈用) 〔所在場所〕岡山市郡 〔説明〕左からカクトウ、テイハクランプ、ガス灯である。漁撈用と夜の集魚灯との両方に利用された。
20 〔名称〕ランプ(漁撈用) 〔所在場所〕19と同じ 〔説明〕19と同じ。
21 〔名称〕アカトリ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕漁船の船底のアカを取る道具。
22 〔名称〕ボラカケ 〔所在場所〕岡山市宮浦 〔説明〕このサオでボラを引っ掛ける。この漁法をボラカケという。このT氏は、この漁法の名人。サオの長さは5.3m。
23 〔名称〕ヘリクリダマ 〔所在場所〕岡山市北浦 〔説明〕網の周囲は針金。タテ16cm、ヨコ10p。柄の長さ50cmの杉材である。漁網でとった魚をこの網ですくいあげる。
24 〔名称〕カキダマ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕この網に柄がつく。
25 〔名称〕オイアミ 〔所在場所〕岡山市郡東松尾 〔説明〕白魚、エビなどを捕獲する。網目は小さい。柄の短いのも特色。都窪郡妹尾町でも同種のものがあった。
26 〔名称〕マエカキアミ 〔所在場所〕岡山市郡東松尾 〔説明〕これに竹の柄をつける。舟、陸上より白魚をこの網で捕獲する。
27 〔名称〕ママカリタテアミ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕網目は小さい。網の長さは不詳。
28 〔名称〕ツボアミ 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕ツボアミの長さ100間。第1番の竹輪をモトワ、第2番の竹輪をツギワという。
29 〔名称〕イワ 〔所在場所〕岡山市郡
〔説明〕鉄製である。底曳網にとりつける。
イワをとりつける網の紐をクモという。
[編註:左図も写真に添付した説明用の著者のスケッチ。図注の小字テキストは編者挿入]
30 〔名称〕不詳 〔所在場所〕岡山市小串 〔説明〕
31 〔名称〕ウナギカキ 〔所在場所〕玉野市八浜町 〔説明〕かきの金具の部分は21p、柄が2.7m。かきと柄をとめた金具をヒという。
32 〔名称〕ボラカケ 〔所在場所〕岡山市宮浦 〔説明〕中央の釣り糸がたれさがり、擬餌の下に釣鈎がある。
33 〔名称〕底曳網 〔所在場所〕岡山市郡 〔説明〕網目は小さい。
34 〔名称〕ヘリクリダマ 〔所在場所〕岡山市北浦 〔説明〕捕獲された魚をこの網ですくいあげる。
【著者略歴】1928年山口県下関市に生まれる。1956年岡山大学農学部卒業。現在岡山市立図書館勤務[編者註:発行当時]。
【著書】
@岡山県高梁川の舟運習俗(昭和41年)
A高瀬船船頭生活誌(昭和42年)
B写真集岡山県児島湾の漁具(昭和44年)
【編書】
@高瀬船運搬物資記録資料
A山陽新聞漁業記事索引(1〜3)
B岡山県旧児島湾漁民日誌抄
C岡山県児島湾漁業資料―樫木網資料―
D朝日新聞(岡山版)漁業記事資料索引
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