味探検78-味食クラブ5(東京新聞1998年7月30日掲載)

料理研究家・村上祥子(むらかみさちこ)さん

夏の健康メニューに

簡単“ぶっかけ菜めん”はいかが

 「ぶっかけうどん」というメニューが、江戸中ごろにあったらしい。料理本の百珍もものに紹介されたり、三田村鳶魚の『江戸の食生活』にも、「ぶっかけ」ということばについて、「明和(1764〜72年)のころから使われてきた」とある。
 蒸篭(せいろ)に盛ったモリに対し、カケは丼鉢(どんぶりばち)に麺を盛り、ツユをかけたただけのメン。簡単、安い、早いの3要素が江戸の昔から現代までメン食好きを支えてきた。夏はこれに冷を加え、メン食に拍車がかかる。
 ところが、こんな夏の食志向に「ちょっとまって」と、料理研究家の村上祥子(むらかみ・さちこ)さんからマッタがかかった。「食欲がなくても、冷たいメンならいくらでも食べられますが、炭水化物のエネルギーをとっているだけ。暑さを乗り切る力をつくり出す栄養素はありません」。夏バテ対策に村上さんが提案するのが、サチコ流「ぶっかけ菜めん」。簡・安・早・冷に「菜」も加えて、夏向きのメニューを考案してくれた。
 「夏トマトとツナマヨのぶっかけ菜めん」と「ひらひらカツのぶっかけ菜めん」。ウドンを使った「ピリピリミンチのぶっかけ菜めん」。「15分で完成よ」と村上さん。あなたも「ぶっかけ菜めん」に挑戦してみたら。 (中島満)

レシピより

 ☆ぴりぴりミンチのぶっかけ菜めん @材料(4人分)=乾うどん300g、かけつゆ (本つゆ1+冷水4カップ)。ピリピリミンチ(豚ひき肉200g)、水煮タケノコ100g(小角みじん切り)、ザーサイ70g (同)、赤唐辛子2本、ニンニク2カケ(みじん切り)。調味料(XO醤大さじ2、塩コショウ少々、酒大さじ1)、サラダ油、かたくり粉、ネギ、香菜。A作り方=ピリピリミンチは、ニンニクと豚肉を強火でいため、タケノコ、ザーサイ、赤唐辛子、調味料を入れ、水ときかたくり粉でとろみつけ。うどんを器にもり、つゆを注ぎ、ビリピリミンチをのせ、ネギ、香菜をのせて完成。
○参考書に最新著「20分でおいしい晩ごはん」(三笠書房文庫)。

取材メモ 「ぶっかけ」について引用した、三田村鳶魚の「江戸の食生活」の原典、該当文章を示しておく。 

 三田村鳶魚全集第10巻「江戸の食生活」中の「蕎麦と鮨」(159頁)―中央公論社、昭和50年刊。

 「与謝野晶子の珍談」 今日でも蕎麦を蒸篭(せいろう)へ入れて持って来る。モリといえば蒸篭へ盛ってあるに決まっている。冷たい蕎麦を蒸篭へ入れて盛って来るのもおかしな話であるが、これは、蒸蕎麦の形が残っているのである。与謝野晶子さんがその昔、国から出たてにそれを知らないから、あの上へ汁をぶっ掛けてしまって困ったという珍談がある。

 一体蕎麦は皿盛りにするのが丁寧なので、丼にするのが略した方だそうだ。皿盛りの風は天保度まで残っていた。それから少し前までは、大平(おおひら)に盛ってきたものである。古いところは蒸蕎麦は蒸篭に盛るし、さもないのは饂飩桶へ入れてくる。それが大平盛りになり、皿盛りになり、丼となって、また蒸さない蕎麦をも見てくれのいいように、蒸篭へ盛るということにもなったものらしい。「ぶっかけ」というのが今日の「かけ」であるが、この「ぶっかけ」という言葉は、明和の頃から使われている。

 「ぶっかけ」考→以下でいささかの考察を加えている。参考にされたい。

○調味料論―ダシとタレとツユの言葉について

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